代理権
代理権とは、ある人が、本人のためであることを示して、第三者と法律行為をなす事柄について能力を行使する社会的・道徳的正当性に裏づけを以って法律によって一定の主体、特に人に賦与される資格のことを言う。 法律効果は直接に本人と第三者との間に生ずる。
法定代理権の発生原因
本人の意思には関係無く法律によって当然に賦与される代理権を言う。次のような者がある。①一定の身分関係に基づいて発生する。未成年者の親権(民法第818条各項参照)。②裁判所の選任によって発生する。不在者の財産管理人の選任(民法第25条各項、26条参照)、未成年者後見人の選任(民法第840条参照)。③遺言によって指定する未成年者後見人(民法第839条各項参照)。)。④本人以外の一定の者の協議によって代理権が発生するもの。離婚の際に協議によって親権者を決める(民法第819条各項参照)。
任意代理権の発生原因
任意代理権は、本人の代理権授与行為(授権行為)によって発生する。①委任と代理の関係を説明すると、任意代理人は、依頼を受けて代理人となるが、その依頼の形式は、委任契約によって代理権が授与されることが多い。しかし、委任契約において常に代理権が伴うとは限らない。代理権を授与されない場合があるので委任と代理は、別の存在として区別し理解する必要がある。②代理権授与行為(授権行為)説によると、代理権は、契約とは別に独立の代理権授与行為によって発生するとする。この代理権授与行為の性質は、本人と代理人との特殊な契約と解される。法解釈は、本人が代理人の承諾を得て代理権を発生させるとするのが素直だからとしている。いずれにしても、民法に任意代理権の授権がいかにしてなされるかと言う規定が無いので、此命題に対する答えは学説も紛糾するところであるのだ。
法定代理権の範囲
これは法律で決められている。例えば、親権者の場合は、民法第824条以下に規定されています。
任意代理権の範囲
任意代理の範囲は基本的には本人と代理人との取り決めの内容によって決まることは言うまでもありません。問題は、特定の不動産を売るということだけの取り決めで代理人が受権した場合などにあります。実際取り決めの無い部分の範囲は社会通念や慣行などを考慮して判断するしかありません。判例では売買に関する代理権を受けた者は、その売買契約の合意解除権までは許されない(大判大正14年10月5日民集4巻489頁)。売買に関する代理権を受けた者は、登記をする権利は与えられている(大判大正14年10月29日民集4巻第522頁)。売買不成立の場合には手付金の返還を受ける権利を与えられている(大判昭和16年3月15日民集20巻第522頁)。しかし、例えば差配や執事等と言われる者の権限の範囲は包括的であり、定かでは無いのです。こんな場合を想定して民法は第103条を置いています。
(権限の定めのない代理人の権限)
第103条 権限の定めのない代理人は、次に掲げる行為のみをする権限を有する。
1 保存行為
2 代理の目的である物又は権利の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為
これによると、保存行為として、家の修繕や、消滅時効の中断などは行えます。利用行為として金銭を銀行に預金して利息を生み出したり、家屋を賃貸して(短期のものに限る。長期のものは一種処分行為となる)収益を図ることはできます。改良行為(=財産の経済的価値を増す行為)としては家屋に都市ガスの設備を施すとか、無利子の貸し金を利子つきに改めるなどがあります。以上のものは、現状を維持していくことを中心とする財産の管理行為という範疇に属する行為と言えます。逆に言えば、処分行為は行えないのです。利息を受け取るという行為は処分行為に当たり差配や執事はやってはいけません。
共同代理
数人の代理人が共同して代理行為をすることが出来るものである。一つの代理権が数人に帰属せしめられている。一人の代理人だけで為した代理行為は、無効となります。所謂、無権代理となるのです。例として、父母共同親権がある。
これとは別に、同一の事項について、数人に代理権が与えられている場合には、各代理人は単独で完全に独立して代理権を有効に行うことが出来る。一般には数人の代理人がいる場合はこちらの代理権が推定されます。従って、共同代理の場合は、相手方に共同であると明示しなければ、共同代理権を主張できなくなります。
自己契約と双方代理の禁止(民法第108条)
まず、自己契約ですが、これは飽く迄形式的な自己契約でも禁止されると言うことが注目点となります。兎に角、実質的に本人に損を齎さなくとも駄目なのです。これに対して親権者の子に対する自己契約は子に損を齎さなければ許されるのです(民法第826条)。
双方契約の方では、実質的な損を本人に齎さない以上、許されます。例えば、売買の当事者となる本人や相手がたの登記をしてやるような行為は許されるのです。実質的な権利関係は完了した上での行為となるからです。消費貸借の場合は如何であろうか?消費貸借は物の引渡しが成立要件になります。詰まり、合意だけでは成立ちません(民法第587条)。消費貸借の対象物の授受によって消費貸借の成立の範囲が決まるので、本人と相手方は此行為(相手と本人の双方代理人が消費貸借物を授けて受け取るという行為)は相手方と本人にとって利害が対立する行為となり、許されざるべき行為となる(大判大正11年6月6日民集1巻第295頁)。
自己契約や双方代理は一般的には、無効となるので、無権代理である。
代理権の消滅
(代理権の消滅事由)
民法第111条 代理権は、次に掲げる事由によって消滅する。
1 本人の死亡
2 代理人の死亡又は代理人が破産手続開始の決定若しくは後見開始の審判を受けたこと。
2 委任による代理権は、前項各号に掲げる事由のほか、委任の終了によって消滅する。
その他の任意代理権の消滅原因は、委任契約、雇用契約、組合契約などの任意代理権の根拠となる契約関係の消滅により、原則として消滅する。
復代理人の代理権の消滅原因
代理人・復代理任間の授権行為、その基礎となった対内関係の消滅。本人の死亡、後見開始、破産など。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます