初めて粕汁を作ってみました。
酒粕を使った汁物で、具は大根、人参、里芋、ささがきごぼう、きざみ生姜、油揚げ。
そして、シャケ。
レシピに、味付けはお塩とお醤油と書いてありましたが、塩麹と醤油麹を使いました。
本当は、甘酒のような乳白色に仕上がる筈だったのですが
醤油麹を多く入れ過ぎてしまったので、粕汁というよりお味噌汁のような色になってしまいました。
そして、レシピには書いていませんでしたが、シャケは焼いてから投入。
こんがり焼けた皮の香ばしさが加わって、とても美味しかったです。
その、美味しい粕汁を父のところへ差し入れに行ったのですが
久し振りに、お昼はお蕎麦でも食べに行こうかという話になり
車で10分ほどのお蕎麦屋さんへ行ってきました。
父は、「梅おろし蕎麦」で、私はちょっと珍しい「かきたま蕎麦」をオーダー。
温かいかきたま汁のつけ蕎麦です。
かきたま汁にお蕎麦をからめてたべるのですが
これが、思っていたよりずっと美味しい「当たり」でした。
父が、急に
「梅おろしも美味しいよ、食べてみるかい?」
と、言ったので、うんと答えると
父は、梅おろしの入ったつけ汁に、自分のせいろからお蕎麦をとってつけ
なんと、私の方へお蕎麦を差し出しました。
こっ、これは。
もしかして、あーん?
お蕎麦屋さんの対面テーブルのあちらからこちらへ、あーん?
一秒にも満たない、ほんの一瞬の躊躇。
しかし、躊躇している場合ではない。
この状況は、誰が見ても分かる、確実なあーんであり
やたら目立つあーんでもある。
そして、長引かせれば長引かせるほど人の目を引いてしまうあーんでもある。
私は、テーブル越しに中腰姿勢になり、更に首を伸ばして
父の箸にからめ取ったお蕎麦を、一気に啜りました。
大根おろしは辛くなく、梅肉も塩気も酸味も浅く。
「そんなに酸っぱくなくて食べやすいね」
腰を下ろしてから、感想を伝えると、父はにっこりしながら言いました。
「お母さんとも何回か来たお店だよ」
ほんの少し、胸がきゅんとなってしまいました。
いま、父は母の思い出と食事をしているのかと思って
その場面が頭に浮かんでしまって。
「お母さんは、何を食べていたの?」
「天ざるとか、だったかな」
父と私が会うとき、いつもそこには母がいる。
私は、敢えて母のことを聞く。
若い時のこと、年を取ってからのこと。
父の記憶が色褪せない様に。
でも、あーんは。
流石に照れますよ、お父さん。