経営法務研究室2023

 情報の選別・整理のためのブログ。
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労働契約の基本 その4 公正採用選考について

2017-11-19 | その他


採用面接で、「家族構成」や「出身地」について聞いたり、エントリーシートに記載することを求めることもありえます。

このような個人の適性・能力と関係ないことについて、採用基準とできるかどうかは、いろいろ問題が生じることがあります。


職業安定法では、労働者の募集等に関して、労働者の個人情報を収集するには、労働者の募集等に必要な範囲内で行わなければならないと規定されています。


厚生労働省・ハローワークでは、公正な採用選考を行うために、事業主に対して職務遂行上必要な適性や能力だけを採用基準とするよう啓発・指導をしています。

適性・能力と関係のない事項や方法等について、注意が必要である旨明示されていますので、ご注意を。

http://www2.mhlw.go.jp/topics/topics/saiyo/saiyo1.htm


● 本人に責任のない事項
○本籍・出生地
○家族(職業・続柄・健康・地位・学歴・収入・資産など)
○住宅状況(間取り・部屋数・持ち家か借家かなど)
○生活環境・家庭環境


● 本来自由であるべき事項(思想・信条・宗教に関わること)
○宗教
○支持政党
○人生観・生活信条
○尊敬する人物
○思想
○労働組合に関する情報(加入状況や活動歴など)
○学生運動などの社会運動
○購読新聞・雑誌・愛読書

● 採用選考の方法
○身元調査など
○合理的・客観的に必要性が認められない採用選考時の健康診断の実施(健康診断書の提出含む)



労働契約の基本 その3 各種保険

2017-11-19 | その他
求人情報を出すときには、よく「各種保険完備」と書かれている会社があります。

通常、「各種保険完備」とは、雇用保険、労災保険、健康保険、厚生年金保険に加入していることを意味します。

その会社で働く従業員には、これらの制度が適用されることを意味します。

働こうとする人は、その会社で、

病気や怪我をしたとき、
出産をしたとき、
失業したとき、
高齢になっ
たときなど、

働けなくなってしまうような様々な場面で必要な給付を受けられるかどうか気になるところです。

会社としては、きちんと加入しておく必要があります。



●雇用保険

雇用保険は、労働者が失業した場合などに、生活の安定と就職の促進のための失業等給付を行う保険制度です。
勤め先の事業所規模にかかわらず、

①1週間の所定労働時間が20時間以上で
②31日以上の雇用見込がある人(派遣社員、契約社員、パートタイム労働者、アルバイトも含む。)


雇用保険制度への加入は会社の義務となっています。


保険料は労働者と会社の双方が負担します。


失業した労働者に基本手当の支給がなされます。失業が会社都合か自己都合かで内容が変わります。
(額は、在職時の給与などによって決定されます)。


雇用保険に関する各種受付はハローワークで行っているので、手続等に不明な点があれば、問い合わせましょう。



●労災保険

労災保険は、労働者の業務が原因の怪我、病気、死亡(業務災害)、また通勤の途中の事故などの場合(通勤災害)に、国が会社に代わって給付を行う公的な制度です。
労働基準法では、労働者が仕事で病気やけがをしたときには、会社が療養費を負担し、その病気やけがのため労働者が働けないときは、休業補償を支払うことを義務づけ
ています(労働基準法75、76条)。

もっとも、会社に余裕がなかったりすると、十分な補償ができないかもしれません。
そこで、労働災害が起きたときに労働者が確実な補償を得られるように労災保険制度が設けられています。


基本的に労働者を一人でも雇用する会社は労災保険制度に加入する義務があります。


保険料は全額会社が負担します。

労働災害に対する給付は、パートタイム労働者やアルバイトも含むすべての労働者が対象です。
性質上、仮に会社が加入手続きをしていない場合でも、給付を受けられます。

各種受付は労働基準監督署で行っているので、手続等不明な点があれば問い合わせましょう。




●健康保険

健康保険は労働者やその家族が、病気や怪我をしたときや出産をしたとき、亡くなったときなどに、必要な医療給付や手当金の支給をすることで生活を安定させることを目的と
した社会保険制度です。

病院で使う保険証は、健康保険に加入することでもらえます。病院の窓口での負担が、原則治療費の3割負担になります。

健康保険は
①国、地方公共団体又は法人の事業所あるいは
②一定の業種(※)であり、常時5人以上を雇用する個人事業所  
 ※製造業、土木建築業、鉱業、電気ガス事業、運送業、清掃業、物品販売業、金融保険業などなど、

では強制適用され、加入の義務があります。

派遣社員、契約社員、パートタイム労働者、アルバイトでも、1週間の所定労働時間及び1か月の所定労働日数が、通常の労働者の4分の3以上あれば加入させる必要があります。
また、4分の3未満であっても、
①週の所定労働時間が 20 時間以上であること、
②月額賃金が 8.8 万円以上であること、
③勤務期間が1年以上見込まれること、
④学生ではないこと、
⑤従業員数 501 人以上の規模である企業に使用されていること
(500 人以下の企業でも労使合意があれば適用対象となります)

の5つの条件を満たす場合にも、社会保険に加入させなければなりません。



各種受付は健康保険組合又は全国健康保険協会 各都道府県支部で行っているので、手続等不明な点があれば問い合わせましょう。





●厚生年金保険

厚生年金保険は、労働者が高齢となったり、何らかの病気や怪我によって身体に障害が残ってしまったり、大黒柱を亡くしてその遺族が困窮してしまう
といった事態に際し、保険給付を行い、労働者とその遺族の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的とした制度です。

労働者は、老齢年金、障害年金、遺族年金等を受け取ることができます。

厚生年金保険適用事業所は、


①国、地方公共団体又は法人の事業所
あるいは
②一定の業種(※)であり、常時5人以上を雇用する個人事業所
 ※製造業、土木建築業、鉱業、電気ガス事業、運送業、清掃業、物品販売業、金融保険業などなど、
では強制適用となっています。

適用事業所には、加入の義務があります。


派遣社員、契約社員、パートタイム労働者、アルバイトでも、1週間の所定労働時間及び1か月の所定労働日数が、通常の労働者の4分の3以上あれば加入させる必要があります。
4分の3未満であっても、
①週の所定労働時間が 20 時間以上であること、
②月額賃金が 8.8 万円以上であること、
③勤務期間が1年以上見込まれること、
④学生ではないこと、
⑤従業員数 501 人以上の規模である企業に使用されていること(500 人以下の企業でも労使合意があれば適用対象となります)

の5つの条件を満たす場合にも、社会保険に加入させなければなりません。


保険料は、会社と労働者が半々で負担します。


各種受付は年金事務所で行っているので、手続等不明な点があればお近くの年金事務所に問い合わせましょう。

労働契約の基本 その2 就業規則

2017-11-19 | その他

就業規則は、職場内の規律などについて定めたルールブックのようなものです。

職場のみんなが安心して働き、無用なトラブルを防ぐことが目的で、就業規則の役割は重要です。

そのため、就業規則は、掲示したり配布したりして、労働者がいつでも内容がわかるようにしておかなければならないことになっています(労働基準法106条)。

なお、法律上の定め・要求は、以下のようになっています。


●常時10人以上の労働者を雇用している会社は必ず就業規則を作成し、労働基準監督署長に届け出なければいけません(労働基準法89条)

●就業規則には、必ず下記事項を記載しなければいけません(労働基準法89条)


1 始業および終業の時刻、休憩時間、休日、休暇、交替制に関する事項

2 賃金に関する事項

3 退職に関する事項

4 労働者の負担に関する事項がある場合、その事項

5 安全及び衛生に関する事項がある場合、その事項

6 職業訓練に関する事項がある場合、その事項

7 災害補償及び業務外疾病扶助に関する事項がある場合、その事項

8 表彰及び制裁に関する事項がある場合、その事項
 
9 そのほか、労働者のすべてに適用される事項がある場合、その事項




●就業規則の作成・変更をする際には必ず労働者側の意見を聴かなければいけません(労働基準法90条)

●就業規則の内容は法令や労働協約に反してはなりません(労働基準法92条、労働契約法13条)

労働契約の基本 その1 労働基準法15条

2017-11-19 | (法律)

 経営者の方にとって、雇用は重要であり、そこでトラブルになると仕事自体が回らなくなりますし、場合によっては他の職員の士気にも関わります。

 最低限の法律ルールを把握しておき、適切な対応をする必要があります。



労働法で、労働契約のトラブルを防止するため、労働契約を結ぶときには、労働者に労働条件をきちんと、明示することを義務として定めています。


特に重要な下記の事項については、口約束ではなく、きちんと書面を交付しなければいけません(労働基準法15条、労働基準法施行規則5条)。


1 労働契約期間 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・契約はいつまでか(労働契約の期間に関すること)

2 更新の有無手続等・・・・・・・・・・・・・・・・・期間の定めがある契約の更新についてのきまり(更新があるかどうか、更新する場合の判断のしかたなど)

3 就業場所、業務内容・・・・・・・・・・・・・・・・どこでどんな仕事をするのか(仕事をする場所、仕事の内容)

4 始業就業時刻、残業、休憩時間、休日等・・・・・・・仕事の時間や休みはどうなっているのか(仕事の始めと終わりの時刻、残業の有無、休憩時間、休日・休暇、就業時転換(交替制)勤務のローテーションなど)

5 賃金、計算方法等・・・・・・・・・・・・・・・・・賃金はどのように支払われるのか(賃金の決定、計算と支払いの方法、締切りと支払いの時期)

6 退職に関する事項、解雇事由等・・・・・・・・・・・辞めるときのきまり(退職に関すること(解雇の事由を含む))

7 退職手当、賞与等・・・・・・・・・・・・・・・・・退職手当のきまり(範囲、計算、支払時期等)、賞与等のきまり(範囲、計算、支払時期等)


これら以外の労働契約の内容についても、労働者と会社はできる限り書面で確認する必要があると定められています(労働契約法4条2項)。