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「しかしこの10年で日本の財政状況は厳しさを増し、財政規律が緩んだという声もあがっています。」NHK
国債がこれ以上増えると国家が破綻する。財政規律が緩んでいる。等々政治的立場によらず、ほとんどの人がそう思っているようだ。これは「木を見て森を見ない」という立場である。
日本銀行の資金循環統計(2022年第3四半期)を見てみよう。
左は一国の4部門(家計・企業・一般政府・海外)を統合したもの。金融資産だけで880兆円の余剰資金がある。企業会計でいう内部留保に近いが、企業会計では固定資産も含むのに対してこの余剰資金は金融資産-負債だけである。
余剰資金というのは「借り手のないカネ」のことだ。財政再建論者は灰色の部分、一般政府の部分だけ見て議論をする。これこそ木を見て森を見ない態度である。ここで一般政府が債務の圧縮をはじめたらどうなるか?余剰資金が膨らむだけだろう。
この880兆円はどこに行ったのか?銀行の金庫に眠っている。それも年々増え続けている。その結果、日本の金融機関は青息吐息だ。金融機関にとって預金は負債である。誰かが借りてくれてこそ預金は資産となり利ザヤを稼げる。それを借りてくれない。今は政府に貸して(国債を購入して)糊口をしのいでいる。それも日銀に半分取り上げられて金融機関では689兆円の債務超過だ。その分NISAやIDECOを売って手数料を稼いでいるわけだが、これも考えてみれば免税措置の分だけ金融機関への補助金になっている。国からの補助金がないと金融機関がやっていけないというのが日本の現状である。
2年前、大きな政府こそ成長の原動力 というシリーズを出している。結論は「財政規律こそ諸悪の根源」であった。借り手のないカネは政府が借りるしかない。大きな政府のみが成長の原動力なのである。また、そのとき分かったことは財務省が「財政規律:公的需要はGDPの25%」という決まりを墨守している事であった。優秀なのか〇〇なのか分からない。
資金循環統計をガン見して、そろそろ目を覚まして欲しい。
おまけ
5-06:一般政府:日独比較分析―”大きな政府”こそ成長の原動力だった
5-07:G7諸国の一般政府 新自由主義とは何か?
5-08:G7諸国のプライマリーバランス 今回は・・・短い!
5-09:”財政規律”こそ諸悪の根源 公的需要はGDPの25%を超えてはならぬ