よみがえるケインズ

ケインズの一般理論を基に日本の現代資本主義を読み解いています。
カテゴリーが多岐に渡りすぎて整理を検討中。

政府の財政を考える 結論 国債の真の役割とは

2024年01月29日 | 先進国の経済学
 家計簿を付けたら毎月赤字だ。足りないところは借金せざるを得ない。それでなくとも赤字のところへ借金の返済が重なったら、いずれ返せなくなる。家計の破綻は必至である。ここは「入を図って出を制す」月々をなんとか黒字に持って行って借金を減らしていくしかない。家計の「ムダ」を徹底的に洗い出そう云々。

 家計についてはその通りかもしれない。多くの国民はそうしている。住宅ローンも長期にわたる返済の可能性を検討してから借りるはずだ。

 しかし、この常識を国の財政に適用しようとする人は、政府の財政が果たすべき大きな役割、特に先進国にとっては大きな役割を忘れる。それは余剰資金の吸収である。

失業の苦しみは、いつ行使するとも知れぬ享楽への請求権を個人に蓄積させること、それこそが彼を「富ませる」最上の途だという格率を国家の行動に準用しようとするなら、不可避に生じる結果だと考えなければならない。
一般理論 第二章 古典派経済学の公準

 先進国を対象に経済を考える場合、最も重要なことは「豊かになるほど余剰資金が発生する」ということである。

 本ブログで何度も主張してきたように「余剰資金」を吸収して「何」に使うかが問われているのだ。しかるに・・・

逆の手ばかり打ってきた政府

 バブル崩壊後経済の再生を目指すとしてありとあらゆる「逆の手」が打たれてきた。投資不足という見立てはそれ自体間違っていなかったが、その対処法を間違えていた。投資不足の裏には需要不足があることが見えていなかった。そこには「供給したものは必ず売れるというセイの法則」が隠れていたのである。

第3章 有効需要の原理 (豊かさの中の貧困というパラドクス)

曰く
  • 投資の原資を作るために企業減税を
  • 魅力ある投資先を作るために企業減税と規制緩和を
  • 社会保障は経済成長の重荷。財政再建と社会保障を守るために消費増税を

 問題は需要であり有効需要の不足である。その理由は原理的には以下に触れた通りだ。

一般理論 第三章 有効需要の原理 の前提 豊かになるほどそれに比例しては、消費は増えない

 これに加えて日本固有の事情としては、消費性向の上方硬直性と賃金の下方硬直性の不在である。これについては別稿で論じる(*)。この固有の事情は、景気の自律的回復の大きな妨げとなっている。

*少しだけ書いておくと、消費は下位互換の商品の豊富さによって減りやすく、勤倹貯蓄の精神から増えづらい。賃金は年功的賃金の「おかげ」で定昇相当分を小さくすることで容易に下げられる。「上がってはいるが水準が下がる」ということだ。

 1997年から2017年の二十年間で政府・家計・企業の三部門の所得マイナス支出=純貯蓄は以下のように変化した。

 

 余剰資金は企業に集中し、家計は貧しくなり政府の借金は拡大している。このような事態が金融財政政策の結果としたら、その政策を真剣に再検討する必要があるのではないか。そして政策の背景にある政策思想をも再検討しなければならない。

政策思想と言えば、これは良書だ。筆者特有のクセが強いが・・・
ちょっと気になる政策思想 第2版: 社会保障と関わる経済学の系譜  権丈 善一 



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