金魚cafe

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切れない糸

2013-04-07 23:50:31 | 読んだ本
坂木司著 東京創元社。

「青空の卵」、「子羊の巣」、「動物園の鳥」の3部作が素晴らしかった坂木司さんの作品です。

今回も殺人事件じゃなく日常の謎を解き明かすというスタイルで舞台は東京の下町の商店街のクリーニング店。

家業が下町のクリーニング店で大学卒業間近になっても就職が決まらない主人公和也。

父親の急死で継ぐつもりがなかった家業を継ぐことになってしまいます。

最初は慣れないのでお客さんからのクレームにちょっと腹を立てたり、就職決まった同級生をうらやんだりで前途多難です。

それに輪をかけて彼にちょっとした謎を解決してくれと頼みに来るのです。

仕事に慣れるだけでも必死な彼にヒントをくれるのは彼と大学の同級生で商店街の喫茶店でバイトしている澤田君とクリーニング店でずっと働いてくれている従業員のシゲさん。

そして町のちょっとおせっかいなおじさん、おばさんたちに助けてもらいながらだんだんと自分の仕事に誇りを持つようになっていきます。

クリーニング店というのはお客さまからの預かった洗濯物でいろんなことがわかってしまうという結構デリケートな職業なのです。

たとえば急に洗濯物が増えると家族になにかあったのかとか、衣類の種類で何の職業についているとかわかってしまうのですね。

これがいま流行りの大手チェーンで取次だけならそんなに接することはないのでそこまではわからないのです。

昔ながらのお宅を一軒一軒回り洗濯物を預かり、自前でクりーニングするお店だからこそ分かることなのですね。

私の地元の狭い距離でお店が並んでいましたが、大きなSCができると後継者のいないところはお店を閉めてしまってなんだかさびしくなりました。

この本に出てくるような商店街があるっていうのはすごくいいなと思います。

毎日買いに来るお客さんの好みとか心得てくれていて、今日いいのが入ったよ~なんてやり取りがあるのですから。

主人公の和也はそれが当たり前になってて、それが窮屈になってきているのですが、よそから来た人にはそれがとてもうらやましいものなのだと働いて初めて気が付きます。

これを読むとなんでもそろっている大型SCは安くて便利かもしれません。

地元のお客さんの好みを心得てくれてる商店街もいいものだと思います。