金魚cafe

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ばんば憑き

2013-04-11 23:38:08 | 読んだ本
今日は冬に戻ったような寒い日でした。

おまけに急に雨まで降ってまた寒くなってホントに春が来たのかなと首をひねりたくなるような一日でした。

このまえばんば憑きについて書かせて頂きましたが、「お文の影」、「野槌の墓」だけしか感想を書いていなかったので。

これは短編6作からなっておりまして、あと「坊主の壺」、「博打眼」、「討債鬼」、「ばんば憑き」とあります。

朗読劇に選ばれなかったのですが、他に好きだなと思ったのは「博打眼」、「討債鬼」です。

「博打眼」はお江戸の醤油問屋の一家に降ってくる災いというかやってくるあやしを追い払うというちょっとほのぼのしたところもあるお話です。

優しい店の主に働き者の奉公人たち、しっかりもののおかみさんと元気な子供たちと絵にかいたような一家に突然暗い影がやってきます。

お店が繁盛して幸せにくらしていけるのもそのあやしのおかげだったということもあるのですが、その幸せを守るためには犠牲を払わなくてはいけないのです。

真っ当に真面目に働いていても人間弱い部分があるものです。

そこに付けこんでくるのがあやしたち。

なにかを得るためにはなにかを手放す、なにもかも手に入れることはできないんですね。

そのあやしたちから一家を守るために戦うのが。

本の中で一番ほのぼのしていました。

「討債鬼」は寺子屋の先生が自分の教え子に「討債鬼」というあやしが取りついているので退治してくれと頼まれなんとか教え子を守るために奔走するというものです。

教え子を救うために同じ寺子屋に通うわんぱくな男の子たちが友達のために大活躍してこれも楽しいお話です。

「ばんば憑き」はある夫婦が旅にでて相部屋になった老婆から自分の働いていた庄屋さんの家に起こった悲しい話を語りだします。

これがいちばん重く暗い話でこれを題名にしたのはなるほどと思いました。

どの作品もみな善良な人ばかりそれでもどこかに影のようなものがあるのです。

そこに付けこむあやし、そんなあやしと戦えるのはいろんな苦労や悲しみを乗り越えてきて相手の気持ちのわかる人。

そして無垢な子供たち。

宮部みゆきさんのお江戸の世界は、キモチが優しくなれる本です。