金魚cafe

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その妹

2013-12-07 23:49:25 | 芝居
WOWOWの無料放送の日に放送されていたのを観ました。

猿之助さんがまだ亀治郎のときに出演なさった舞台。

観に行けませんでしたので観れて嬉しかったです。

武者小路実篤の戯曲で画家をめざしていた青年広次が戦争で目を負傷し介添えがないと暮らせなくなってしまいます。

両親はすでになく、妹静子と叔父夫婦の家のお世話になります。

画家がダメなら小説家になろうとするのですがなかなかうまくいかず嘆く広次、そんな彼を明るく懸命に支える妹。

日露戦争の後、上流階級の人たちが没落し、戦争で資産を増やした成金たちという差が出てきます。

叔父夫婦もいつまでも面倒はみてくれません、自分たちの上司の成金の息子と静子を結婚させようとします。

叔父たちの世話にはならぬと家を出て2人で暮らし始めます。

小説家としては芽が出ぬ広次を援助するのが友人の西島。

最初は友情からだと思っていたのですが、彼の家に広次が描いた静子の肖像画を飾ってる舞台のセットを観て、妻がありながら西島は静子に思いを寄せてるのではと思って観ていました。

猿之助さんの目が見えない役を演じるとき視線を動かさずに手を使って自分の居場所や物を確認しようとするところ、静子に小説の口述をさせているときにだんだんと感極まってくると部屋中を歩き回るのですが、その足取りがえ~~っ大丈夫?危ない!!とハラハラさせられるほど広次になりきっておられました。

天才肌で才能はあると思われるのだけれど評価されない無念さを妹につい当たってしまうそしてまた悪かったと妹に優しくするという面倒な性格なのですが、何とかしてあげたくなるという気持ちにさせられる人物でした。

そして広次の着物の着こなし、最初はきちんと着つけているのだけれど生活が苦しくなってくるとだんだんとよれよれになってしまう、でも品の良さはそこなわれず明治の上流階級の青年というのを自然に演じられていて、演出家の河原雅彦さんも(当時)亀治郎さんでないと広次はできなかったとおっしゃっていました。

そして広次の支えとなっている静子役の蒼井優さんが二百三高地髷がよく似合っていて最後まで明るくけなげに演じていました。

静子が明るくふるまうほど広次と西島は自分たちの無力さを嘆いてしまいます。

自分のメンツを大事にして一歩が踏み出せない男性たちよりどんなことをしても生きていこうとする静子さんの強さに明治の時代からいざという時は女性の方が思い切りがいいのだと感じました。