金魚cafe

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八朔の雪

2013-12-12 22:32:00 | 読んだ本
高田郁著 ハルキ文庫

職場の方からこれいいよと勧められて読んでみました。

上方生まれの少女澪、洪水で両親を失い孤児になったところを大きな料亭天満一兆庵のご寮さん芳に助けられ、その店で働くようになり、主人嘉兵衛に厳しくも愛情をこめて料理を教えられた澪、けれど火事で店は焼けてしまい、妻芳と澪三人で江戸の息子の店を頼りますがすで店はなく、息子佐兵衛の消息も知れずになっていました。

その心労から嘉兵衛は亡くなり、妻芳は寝込んでしまいそんな生活をささえている澪、ある日荒れた近所のお稲荷さんで蕎麦屋を営んでいる種市と出会いそこで自分が上方で覚えた料理を江戸にお客さんに出すのですが、これが上手くいきません。

決して不味いわけではないのです。

当時江戸と上方では料理の出汁も醤油も味噌もそして魚の好みもちがっていたのですから、今と違って情報のない時代で急には受け入れてもらえなかったのです。

肉体労働者が多い江戸の人はどうしても味の濃いものを求めるのも彼女が苦労したことの一つです。

いろいろ試行錯誤をくりかえし、やっと自分の味というものを持てた澪、お客さんもお店に戻ってきて店は賑わうのですが、出る杭は打たれるというのか人の成功をねたむ者もでたりで妨害されたりします。

やっと上手くいきそうになるとなぜか幸せがするりと彼女の手からするりと抜けおちてしまう。

それは彼女が幼い時幼馴染の野江と水原東西という占い師に人相と手相を観てもらった時に野江は「旭日昇天」という天下を取れる相だという卦がでました。

対して澪は「頭上に雲が垂れ込めて真っ暗にみえる、それを抜けたところに青空が見える、この後の人生苦労が絶えないことが続くそれを耐えて精進を重ねれば他の誰にも拝めないような澄んだ青空が見える」と言われます。

この時代で女が板場に立つ、江戸で上方の味の店を出すと苦労するのは目に見えていますが、この先には青空が待っている、それを支えに何度でも立ち上がる澪。

ひたむきに料理と向かい合う彼女にはだんだんと理解者が増えて行き光明も差してきたような感じです。

登場する料理は普段たべている献立で簡単なようですが、丁寧に下ごしらえをされていて美味しく食べようと思えば手間がかかるものばかりです。

そのなかで私の好きな茶碗蒸し、粕汁についての話がありまして、当時お江戸では粕汁、茶わん蒸しはなかったのかと意外でした。

カツオ出汁文化圏の江戸では茶碗蒸しは思いつかなかったのかとそれはなんとなくわかりました。

現在9巻まで出ているこのシリーズ。

彼女の頑張りと美味しい料理を楽しみに読み進めていきたいと思っています。