水の中の顔

成人式

学生の頃は故郷を離れて生活していたけど、成人式だけは帰ってきた。
TVで見かけるようなのより全然ふつうで、おとなしい成人式だった。
私は中学校から私立の学校に行ったから、小学校の卒業式以来、はじめて会う子もいた。
ヤンキーみたいになっている子、もう社会人になって働いている子、親になって赤ちゃんをつれてきている子もいた。
でも何となく昔の面影があって、懐かしかった。

懐かしかったと言えば、君に会えたこともそう。
君とは高校２年の冬にちょっとしたことでケンカして、私の方から避けるようになって、それ以来何となく疎遠のまま卒業してしまった。
昔は私は消極的な性格で(今や肉食系といったら驚くだろうか？)自分から仲直りしようとか言えなかったんだ。

だから、小学校のころの友達としゃべってるときに君の顔を見つけて、何となく懐かしさで舞い上がったテンションで意外と自然に会話ができて、嬉しかった。
思い残し、というか高校時代の後悔していることのひとつだったから、君と仲直りできなかったことが。
君は少しも変わっていなかった。
なんだかスーツ着てるのがおかしくて、思わず笑ったら君は照れて笑いながらプーッて頬をふくらませたね。

そんな君が今では外国で働いているんだね。
帰ってくるときまた連絡してよ。
一緒にごはん食べようよ。
君の話す声が聞きたい。
そしたら、今の自分のいる場所がちょっと鮮明になると思う。
見つめ直したいの。
少しずつ遠くなっていくあの日々と、二十歳の私たちの夢の続きを。

八木沢ダム 氷紋

とくダネ！

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