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伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

売られている正月飾りから 後編

2019-01-02 23:24:49 | 民俗学

売られている正月飾りから 中編より

 大型のホームセンターで売られているものは、それほど違いはないが、それでもチェーン店だからすべて同じというわけでもない。同じカインズホームでも、下伊那と上伊那では作られているところが違うものもある。駒ヶ根市にあるカインズホームで売られる注連縄には、「上伊那産」という表示もされている。どこまで信用してよいものかわからないが、チェーン店であっても、地域性を重視していることがわかる。

 

松川町みなみ信州農協

 税込1100円の表示があった「しめ縄」は、「三ツ綯い左ねじり」と表示されていて、長さは2.4メートルだという。いわゆる玄関飾り用のしめ縄なのだろうが、多様なニーズに応えている様子がうかがえる。こうした品物は農協などで売られているもので、地域性がある店ほど、地元のニーズに応えているということになるのだろう。

 

飯田市鼎およりてファーム

 松の枝を販売しているのは、やはり農協、あるいは道の駅といった地場産物を扱っている店で、ホームセンターには見られない。枝レベルであって門松にするほど大きな枝は販売されていない。あるいは既に売り切れているのかもしれない。今回訪れなかったが、三段松のような立派な松を欲しければ、地元産物を扱っている直売施設が良いだろう。

 

飯田市松尾ケーヨーD2

 「おやすと同じように飾ります」と添え書きのあるのは「輪じめ」である。ホームセンターでは、各所でこの「輪じめ」を見ることができるが、このあたりでオヤスとともに飾られている輪じめと少し形が異なる。荒縄をしゃもじ形にまるくして端を根元で藁で縛っているものが売られており、カインズでは「輪〆しゃもじ」と表示しているものもあった。数本の藁を綯って輪を作り、端を輪から飛び出させてオヤスに添えているのが、上伊那南部から下伊那北部にかけての輪じめである。

 

駒ヶ根市ケーヨーD2

 既製の飾りの中にはリース風のものも見られる。ホームセンター系の店に見られるもので、とりわけ現代風のものが多種売られ、他では玄関飾りと銘打っているものもあえて「リース」と表示して売っていたのは、駒ヶ根市にあるケーヨーD2であった。もちろんまさに「リース」というものもあって、こうしたリース形式のものを購入した人が、どのように飾りつけているか見てみたいものである。

 

飯島町七久保上伊那農協

 さて、ホームセンターにも置かれているが、「福縄」と称しているものも見られる。中編でも飯田市上郷黒田のキラヤで販売しているさまざまなしめ縄の写真をとりあげだが、その写真の上段左側にも「福縄」が置かれていた。明らかに地元で作られた物のようだったが、カインズあたりでは、福縄の上に扇や恵比寿大黒の飾りを取り付けてそのまま恵比寿棚に飾られるような形式のものも売っている。「福縄」と称しているが、これもこのあたりでは「鯛」と言われているもの。飯島町七久保の農協では、「鯛」と称して売られており、これらは、正月明け宵恵比寿の2日、あるいは恵比寿様を祝う3日の日に作られることが多い。この日は「金を使わない」と言われていて、商人は商いを休んだもの。写真の「鯛」は、扇を付けられて売られているが、地元の店では鯛と扇子、水引を別個に売っているところもある。

終わり


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