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伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

慌てて、松をおろす

2020-01-10 23:26:18 | 民俗学

 8日の未明、妻が「松をまだ下ろしてないよね」と言って、夜中に玄関先の松飾りを外しに行った。8日朝、誰かに見られたら「恥ずかしい」という思いもあったのだろう。

 正月飾りを下ろすことを「松おろし」とか「松納め」などというが、普通は正月7日に下ろすことが多い。『長野県史民俗編』には、松下ろしに関する項目はなく、県内の全容を把握することはできないが、例えばどんど焼きに関する質問の中に、「一月七日に不動様の松をおろし、十七日に神棚、仏様、外の松をおろす」(長野市桜枝町/第4巻(二)454頁)、あるいは「一月三日に外した松飾りを子供たちち厄年の人たちが集め、わらなどと一緒に二つの山にして燃やす(木祖村田ノ上/第3巻(二)500頁)、「一月四日の朝、御飯を供えてから正月の松を下ろす(松川村板取/第3巻(二)503頁)といった具合に松下ろしの日の記述が散見される。またその日が必ずしも7日でない様子もうかがうことができる。実際正月も9日が過ぎたが、いまもって玄関先に正月飾りをつけたままにしている家を見ることもある。「〇日に子どもたちが集めにうかがいます」という、いわゆる火祭りの日程に合わせて松を下ろす人も、もしかしたらいるのかもしれないし、そもそも昔はすべての飾りを一斉に下ろすことはなく、小正月までそのままにしておく飾りもあった。もちろん、その意図が既に廃れてしまっていることもあるが。

 松飾りを外す日に対するネット上の質問は少なくない。

松飾りを外す日は地方によって微妙に違います。
鏡開き(1月11日)から小正月(1月15日)の間に外すのが多いようです。
松の内を7日までか15日までかとする風習の違いのようです。
関西や近畿地方では、現在でも1月15日の小正月までを松の内としているようです。
東京は1月8日に外すところが多いようです。

といった返答や、

今朝(一月八日)外の掃き掃除をしていて気づいたことです。
 『うち以外の松飾りが全部消えている!』
どうやら最近は七日に外してしまうものらしいですね。

といった返答があり、関西と関東の違いというものもあるようだが、後者のように、一般的な7日という情報が、こんな意識をもたらしてもいるようだ。

 ウェブ上では小学館ダイム公式サイト「@DIMEアットダイム」に「しめ縄はいつからいつまで飾るのが正解?」という情報が掲載されている。地域別には次のように記されている。

北海道の場合

北海道の松の内は1月1日から1月7日までとされます。したがって、1月7日の夕方、日没後までしめ縄を飾るのが一般的な風習です。

一方、鏡餅は1月11日の鏡開きまで飾る風習があるため、しめ縄と鏡餅は飾る期間が異なります。

なお、札幌では1月8日頃から、しめ縄などを持参して神社に参拝するのが一般的ならわしです。1月15日前後に焼納祭が開催され、どんど焼きでしめ縄を燃やします。

関東の場合

関東地方の松の内は1月1日から1月6日の夜または1月7日までです。門松やしめ縄は1月7日の朝まで飾り、外した後に七草がゆを食べるのがならわしとなっています。

東京をはじめとした関東地方では、徳川三代将軍家光の命日が慶安4年4月20日だったことから、月命日が20日となりました。そのため、月の20日は祝い事などを避ける配慮がされ、松の内が1月7日までになったとされています。

また、正月は元々1月15日までを小正月としていましたが、関東では1月7日に松の内を切り上げるという決まりが江戸時代になされたため、1月7日に片付けることが習慣化されたともいわれています。

なお、玉飾りはしめ縄と異なり、関東地方では1月15日まで飾るのが一般的です。鏡開きは1月11日で、江戸幕府の蔵開きが1月11日であったことに由来しています。

関西の場合

関西地方での一般的な松の内は、小正月である1月15日までです。門松やしめ縄は、1月14日の夜か15日まで飾ります。四国地方も関西と同様です。

関西地方では、1月1日から1月7日までを『男正月』、1月8日から1月15日までを『女正月』と呼びます。

男正月の期間、女性はお正月の準備や接客の対応などで忙しいものです。男正月が終わった後にゆっくりとお正月気分を楽しんでほしいという願いから、女正月が生まれたともいわれています。

関西の鏡開きは1月15日です。全国的に、松の内が1月7日までの地方は鏡開きを11日に、松の内を15日までとする地方では鏡開きも15日に行います。

例外として、京都の鏡開きは1月4日に行われます。しめ縄を外す前に鏡開きをするのは、全国でも珍しい風習です。

名古屋の場合

日本には、東日本と西日本を分ける明確な境界線が存在しているわけではありません。したがって、ちょうど中間に位置する名古屋が関東か関西かという議論は、しばしば行われています。

名古屋では、門松やしめ縄に関しては関東方面に合わせて、松の内を1月7日までとしている地域が多いようです。この場合、鏡開きは1月11日に行います。

しかし、関西地区と同様に、小正月の1月15日までを松の内としている地域もあります。この場合は、鏡開きを1月15日または20日に行っているようです。

九州の場合

九州地方の松の内は、1月7日・8日・10日・15日までと、地域によって異なります。江戸や関西から距離があるため、それぞれの文化を踏襲しつつ、独自の文化が発達したとされています。

福岡では、毎年1月7日に、久留米市の大善寺玉垂宮で『鬼夜(おによ)』と呼ばれる火祭りが行われています。鬼夜とは、大みそかから1月7日までの鬼会(おにえ)と呼ばれる期間の最終日に行われる行事のことです。

これに合わせて、九州では松の内を1月7日までとする地域が多いともいわれています。

また沖縄の松の内は、1月7日までと15日までの地域に大きく分かれているようです。独自の文化が発達していた沖縄では、旧暦でさまざまな行事や神事が行われていました。したがって、現在でも正月の風習にさまざまな文化が残っています。


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