VOICE of TSUCKY

ラブラドールのいる風景
出演者紹介:カテゴリー”VoT紳士録” 
用語辞典:カテゴリー”つきペディア”

静かな寝顔のごとく

2012-08-07 | 百日草(別れた友への思い)
早朝のワン友メールに胸がざわついたのは、
”犬毛海岸公園”で、このところ散歩時間がズレていたワン友と会っていなかったからだ。
そしてそれは不安が現実のものとなったことを知るメールだった。

ママの愛情を一身に受け、これ以上ないくらいの看護を受けていたもみじ。
この夏を乗り切ってほしいというみんなの願いは聞き届けられなかった。
夏の盛りに、ギラギラする太陽に挑むように天に昇るなんて、
やっぱり男の中の男もみじ、だよね。
あと半月で満16歳だったのに。
ママにお祝いしてもらうのが照れ臭かったのか?
日本男子たるもの、そんなチャラいことはできないって?

いつもみんなのボディガードを務めてくれたもみじ。
知らないワンコが近寄ろうものなら一撃!
・・・とはいかなかったけど、
必ず群れの盾となって、最前線警備を常としていた。
頼もしい小さな体の男の子。シーズーのもみじ。

眼が利かなくなって、耳が遠くなって、足が利かなくなって、
少しずつ、少しずつ、世界が狭くなっていっても、
ママは毎日欠かさずもみじを広い世界へ連れ出すことで元気を注入していた。
それに応えて小さな体で精一杯の生を全うしたもみじ。

公園で車いすのもみじは颯爽と歩いていた。
風を受け、土の匂いを嗅ぎ、仲良しのワンコたちと触れ合い、
最後まで充実した時間を生きたと信じられるのは、
後悔のない看取りを心に誓っていたママの信念がもみじに伝わっていたはずだから。
先輩として、もみじママは犬の介護のひとつのあり方を示してくれたようでもあった。

それでも、やっぱり、どんなに尽くしても、
愛情を注ぎ続けた相手を失うことは想像できないほどの悲しみであるに違いない。

安らかに旅立ったと聞いた。
ママの悲しみを思いやるもみじの、最後の男の意地だったのかもしれない。
男の中の男だったものね、もみじは。

”犬毛海岸公園”の主、小さなもみじは大きな存在だった。
公園最多散歩回数を誇るくらいのもみじ。
もう、もみじが来ない公園には、もみじの匂いがたくさん残っている。
どうして会えないの? みんな、思うはず。
だから、みんなを安心させるために、
そっと公園に舞い降りてきて、みんなの中に紛れ込んでね。

明日、魂だけの姿になってしまうもみじにお別れをしに行ってきた。
「いつもこうして寝ていたのよ。」
というもみじママ。
大きな画面のテレビの前で、たくさんの花々に囲まれて、
本当に穏やかな寝顔といった顔をしている。

寝顔のままのもみじは、みんなを「寝ているだけだよ。」と慰めているようだった。

コメント (6)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

つっきーの木