これは、昨年の3月のことです。
知人の紹介で「皇典研究会」の勤労奉仕団に仲間入りをさせて頂きました。
皇居勤労奉仕は、私たちにとって初めての経験です。
奉仕団は4日間毎朝7時半過ぎに皇居に集合、皇居内の除草、枯れ枝の撤去や落ち葉掃きなどの役割を担いました。
二重橋の上の清掃担当に夫婦揃って指名され、ピンセットで小さな雑草取りをしたことが印象的な出来事です。
東北の青年団が鍋釜作業道具を持参して、始めた皇居勤労奉仕の事を知りました。
今から70年前の事です。私は古希を迎えての勤労奉仕です。その歴史の片隅に加えて頂いたような気がします。
毎日3時間程度の軽作業ですが、その合間に皇居のかなり内部まで、宮内庁職員のユーモア溢れる説明を聞きながら、
見学させて頂きました。
小鳥のさえずる深山幽谷の趣は郷里の山河と重なり、東京の都心であることを完全に忘れてしまいます。
江戸城築城の面影を今に残す道潅堀、吹上御苑の周辺への散策、生物学研究所や天皇陛下のお田植えとお稲刈りをなさる
田圃、皇后陛下の御養蚕の桑畑、国賓をお迎えする時に飾られる樹齢350~600年という盆栽を見学しました。
勤労奉仕でないと行くことの出来ない皇居の奥深い場所です。
自然豊かに皇居内の樹木が保護されているのには、只々驚くばかりです。
端正な宮殿の長和殿、正殿と中庭、豊明殿のたたずまいを目のあたりにすると共に、
賢所、皇霊殿、神殿の「宮中三殿」を見学しました。
「宮中三殿」では天皇皇后陛下が宮中の祭祀を大切に受け継がれ、常に国の平安と国民の幸せを祈っておられます。
国中の神々が祭られている「神殿」には、郷里の守護神「山の神」も連なっていることでしょう。
緊張しながら、郷里を代表した気持ちで三殿正面前に整列、天照大御神様に合唱礼拝をしました。
赤坂御苑では天皇陛下が主催する園遊会の庭園で記念写真の撮影をしました。
これも私たちにとって貴重な思い出の証になる事でしょう。
赤坂御苑で作業奉仕中、子狸の歓迎を受けました。
自然界の偶然が作り出した子狸との対面は、私たちに自然保護の大切さを再認識する機会となりました。
そして4日間の皇居勤労奉仕で最も感動したことは、皇居内での天皇陛下、皇后陛下並びに
東宮御所での皇太子殿下のお会釈を賜ったことです。
蓮池参集所にて天皇皇后両陛下のお会釈を賜るときが訪れた、その時の事です。
「皇典研究会」の参加者が多く、宮内庁の指導のもと新たに「皇統研修団」が誕生しました。
団長が群馬県の方です。私達は、白地に「皇」の団旗の下に参集しました。
「群馬県 皇統研修団」。群馬県以外の参加者が殆どです。
皇統研修団?
天皇陛下の御下問にどのように説明をすべきか、我々の団長がお会釈寸前まで悩んでおられる様子です。
天皇皇后両陛下の各奉仕団とのお会釈が始まりました。
団長から『群馬県から、皇統研修団36名で参りました。』と天皇陛下にご報告申し上げます。
天皇陛下から御下問があります。
『どのようなことを、おやりになっておられるのですか。』
団長は緊張のあまり、ご返事の言葉が途絶えております。団員の誰もが皇統研修団の活動内容の説明と思ってます。
団長が天皇陛下のお傍に寄り添っている皇后陛下のお姿を拝見して、
急遽思い付いたのが、地元の伝統野菜と皇后陛下のエピソードに関連した話題でした。ご下問にお答えします。
『今、群馬県下の農家では不凍野菜の「かき菜」の収穫の最盛期を迎えております。』
『不凍野菜ですか?』天皇陛下からのご質問です。
『はい、冬の寒い季節凍らない野菜で、美味しく大変栄養価の高い食材です。
皇后陛下が学童疎開された折、地元料理の味を覚えていて、自分のお子さんのための料理作りで、
この野菜を地元から取り寄せたというお話は、今も地元に伝わっております。』
皇后陛下が気品溢れる笑顔になられました。
天皇陛下が振り向いて皇后陛下に
『その様なことが、おありになったのですね。』
皇后陛下が天皇陛下に微笑みながら頷かれました。
この瞬間、緊張に包まれたお会釈会場の多くの参列者に笑顔が漂いました。
私達の直ぐ身の前で繰り広げられる人間味あふれる両陛下のご様子は、まるで夢のような一時です。
初めての体験で、感無量でした。
話題の「かき菜」は万葉集に「佐野の茎立(くくたち)」として登場するアブラナ科の植物です。
その花芽は古くから春先にしか出回らない野菜です。主に館林市や佐野市などの両毛地域で栽培されている伝統野菜です。
ビタミンやミネラルの栄養価が高く、お浸しなど茹でて供されます。我が家の榛名山の麓の遠隔地農場でも栽培してます。
とても親しみの沸く団長の話題に、この団旗の下に参集した喜びをかみしめました。
お会釈の終わりは、「皇典研究会」の川久保団長の力強い発声で万歳三唱です。
「天皇陛下、皇后陛下万歳、万歳、万歳」 私もあらん限りの大声で三唱しました。
この時、感極まって目頭に熱き想いを感じました。
勤労奉仕最終日、偶然にも皇居外苑の沿道で、東日本大震災地域の慰問先から戻られる天皇皇后両陛下を
お迎えする機会に遭遇しました。
車でお通りの際、天皇皇后両陛下は車の窓を開けて手を振って頂きました。
勤労奉仕の4日間。日々感動の連続でした。
慰労懇親会では初参加者同士が奉仕活動に参加できた喜びと感動を披露し合い、親しく交流をしました。
大東京神宮にて「皇統研修団」の団長の祝詞奏上で、勤労奉仕の無事終了を報告しました。
来年の皇居勤労奉仕団での再会を約束して、すっかり仲良くなった仲間達とお別れしました。
私達が勤労奉仕で体験したこの感動を多くの方に語り伝え、その普及に努めたいと思います。
最後に、勤労奉仕参加のご紹介を頂きました崩田様ご夫妻、いろいろとお世話を賜りました
「皇典研究会」団長の川久保様と「皇統研修団」団長の橋本様に心からお礼申し上げます。
そして親しく交流させて頂きました奉仕団の皆様に感謝も仕上げます。
ありがとうございました。
…今年の3月28.29.30.31日の2回目の皇居勤労奉仕に参加します。
皇居の桜、満開の頃です。その日のために、健やかな日々を送ってます。
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