決勝の日、私はテーブルの上にビールとポテトチップを並べて、いよいよ始まるキックオフをじっと待っていた。ここ一ヶ月、眠い目をこすりながら待ち望んだ決勝の舞台が、とうとう幕を開け、国歌斉唱が鳴り響く。徐ろにビールをグラスに注いでグビッと飲み、ポテチをかじりまたグビッと飲む興奮の2時間半が始まったのだ。・・・という具合に、私のWカップ視聴の長い長い日々は、アルゼンチンの優勝と共に華々しく終わった。それ以来、何事にも興味が湧かなくて「気が抜けた放心状態の日々」が続いている。これも4年に一度の「熱狂の季節」の後遺症なのか。
まあ、そんなこんなで SmartNews などのサッカー関連ニュースをチラチラ見て、何とか普段の生活のリズムを取り戻しつつある現状である。で、そろそろ気持ちも落ち着いて来たので、私なりのWカップとサッカー全般の「総括」を考えてみる気になった。アルゼンチンの優勝は、果たして順当勝ちなのかどうか?、である。
アルゼンチンの前評判は、フランスやブラジルと共にベスト4以上は行くだろう、という高いものだった。しかしグループリーグを順当に勝ち上がったフランスやブラジルに比べて、初戦のサウジアラビアに「まさかの敗戦」を喫して崖っぷちに立たされたアルゼンチンは、一気に敗退の危機に陥った。そこで、どん底の状態から不屈の闘志を燃やして何とか予選を突破。チームは見違えるような勝負強さを発揮して、決勝ラウンドではオーストラリアを格の違いで撃破して見せた。アルゼンチン、奇跡の復活である。次のオランダ戦は相手の挑発に乗ってしまい、イエローカードが飛び交う荒れた試合展開で苦戦したが、優勝を義務付けられた「最高のチーム」との自負と信念が自らを奮い立たせて、ついにPKでオランダを破る。まるでチーム全員の「こんなところ」で負けるわけには行かない!、という思いが通じたかのような「PK勝利」であった。
そして準決勝は、優勝候補のブラジルを破った試合巧者のクロアチアだ。ところがオランダ戦の辛勝から一転して本来のアルゼンチンの戦い方を取り戻したチームは、力の差を見せつけて3−0でクロアチアを撃破。この瞬間、アルゼンチン「強いな」という確信を私は得たのである。
アルゼンチンの強みは、パス回しの時の、送り手と受け手の「ポジショニング」と、それを実現するためのハードワークを厭わない「とことん走り切る責任感」が、チーム全体で共有できている事である。南米のサッカーは、技術は凄いがその代わり「諦め」が早いという「欠点」があると言われて来た。だが今回のアルゼンチンは最後まで諦めずに、守備でも攻撃でも、「行かなきゃいけないところへは絶対行く」という、ハードワークを身上とする「組織のサッカー」に変貌していた。これが今年のアルゼンチンの特徴である。
勿論、「ボール扱い」のテクニックの素晴らしさは南米チームの特徴で、さすがサッカーが国民全体に根付いているなと思わせるほどに「技術が自然に身に付いて」いる。これはもはや、日常生活がサッカーと共にあるアルゼンチンの「文化」と言えるだろうと私は考えた。
一方でフランスは、その圧倒的な攻撃力を売りにトーナメントを勝ち上がり、イングランドとモロッコを破って、言わば当然の如く危なげなく決勝進出してきたチームである。傍目には何の問題もないように見えた。だが、後から色々とニュースなどを読んでみると、意外とチーム内は「まとまって無かった」みたいである。勿論、結果的に負けたことで、それまで表に出なかった不平不満が一気に噴出した、というのもあるだろう。
しかし、デンベレやジルー、それにグリーズマンまでも交代させるというのは、やはりアルゼンチンの徹底した守備と、それに支えられた攻撃陣の活躍がフランスを圧倒していたからである。後半の30分までは、アルゼンチンの「一方的な試合」と言っても良いくらい両チームの出来は差があった。
そこを新たに加わったフランスの交代選手が「身体能力」でアルゼンチンの守備陣を突破し、一瞬の「守備の乱れ」をフランスが突いて同点弾を叩き込む。試合が延長にもつれ込んだ時は、ルゼンチン推しの私としては思ってもみない「ハラハラ・ドキドキの展開」に、夜中の放送にも関わらず「祈るような気持ち」でテレビを見ていたのである。
多分、アルゼンチンの監督はフランスの「出方を見てから」自分のチームの交代選手を決めようとしたのではないか?。そのために、疲れが見えている選手に代えてフレッシュな選手を入れるタイミングが遅れてしまい、あれよあれよという間に2点取られてしまった。この判断の遅れは今後「検証の必要」があるだろう。
フランスは決勝で負けた後、チーム内で団結力が薄かったと囁かれている。ベンゼマはフランス代表に興味ないか如き態度を示していたし、デンベレもだいぶ評価を下げてしまった。ジルーも年齢的にそろそろ代表を引退する頃だし、その他多くの問題点を抱えていたのは事実だったようだ。
やはりサッカーはチームスポーツである。アルゼンチンがメッシを中心にして全員が「一致団結」して優勝を勝ち取ったのに対して、フランスやブラジルやスペイン(そして日本も)は選手起用や戦術的に、選手同士や監督との間で「意思疎通」が充分に出来て無かったように思う。結局この組織内の団結力が、Wカップという大舞台での勝敗を分けたポイントであろう。選手はチームの戦略を信じて、全力でそれを実行することが求められる。日本は確かに実行した。だが、チームの戦略が「ベスト8を目指すチーム」として相応しいものだったかどうか?と言う点では、私しは疑問が残ったのである。それは「点を取りに行く」というサッカーに一番重要なテーマが「戦術として出来てなかった」ことに尽きる。そういう意味では、森安監督は「実力不足」だったと思う(勿論、じゃあ他に誰が良かったのか?という質問には、私には答えるほどの知識は持ち合わせてはいないが)。
最後はアルゼンチンの優勝で「万々歳のWカップ」だったことは喜ばしいことである。この後はクリスマスを挟んで、選手それぞれのリーグに戻って通常シーズンを戦うことになる。我がレアル・マドリーもベンゼマの復帰とCL連覇に向けて、もう1段ギアを上げていかなくてはならないだろう。
そこで気になるのは、冬の移籍情報だ。何かニュースによると、ブラジルから「凄いアタッカー」を取ろうとしているらしい。パルセロナと取り合いになってるようだから、ここは何としてもバルサに勝って「ビニシウス・ロドリゴ」ともう一枚新加入のFWを入れて、ベンゼマ・フェデバルベルデと組んだ「世界一強力な攻撃陣」を演出して、我々を極上のサッカーで楽しませて欲しいものである。
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