ひねって・焼いて・陶

陶芸の様々な技法、釉薬、お会いした陶芸家の方々の話等々、私が陶芸で学んだこと、発見したことなどを綴ります。

BRAUN のディーター・ラムス

2018年09月11日 | 陶芸/クラフト/デザインを考える

先日、クラフトの仲間との旅行で山梨のSNORKというお店へ行き、そこでブラウンのラジオ・レコードプレーヤーに出会った。とてもクリーンで美しいデザイン。店のご主人に話を聞くとデザイナーのディーター・ラムスの名前が出てきて、ああこれは昔学生の頃に聞いた事のある名前だと思った。家に帰ってからネットで調べると、ブラウンのデザインで活躍した人で今のアップルのデザインに影響を与えたとある。このデザインテイストはアップルに限らずソニーや最近評判のバルミューダにも感じられる。また、このラジオ・レコードプレーヤーは彼の代表作で、なんと「白雪姫の柩」と呼ばれたという。約60年前に発表されたこのデザインを揶揄した表現らしいけど、当時はそれだけ時代の先端を行ってたということだろう。その彼にはグッドデザインの10ヶ条という言葉がある。

1. 革新的 inovative
2. 実用的 useful
3. 美しい aesthetic
4. わかりやすい understandable 
5. 主張しない unobstrusive
6. 誠実である honest
7. 長持ちする long-lasting
8. 細部まで完璧 down to the last detail
9. 環境にやさしい environmentally friendly
10. 最小限である as little design as possible 

デザインの教科書的な言葉だけれど、デザインのあるべき姿を言っている。革新的と実用的を両立させるという考えが良い。主張しない、誠実である、長持ちするの3つには、物作りでの志の大切さを言っている。デザインというものは、ものを使う人や社会のための仕事なのに、激しい競争の中で相手に勝つためという歪んだ目標に陥って良くないデザインが生まれ勝ちなものだ。ところで、この10ヶ条には足りないものがある。独自性 originality だ。デザイナーが常日頃苦労するのはそこじゃないか、と言いたい。ラムスさん、何でこれを入れなかったんだろうか?

僕は20年ほど前にドイツに住んでいて、ブラウンの本社は家から車でほんの10分ほどの所にあり、その前を何度も通り過ぎていた。タウナス山麓の緩やかな南向き斜面の広々とした場所に本社はあった。そしてその当時、まだラムスさんはそこに在籍していたのだ。今にしてみれば、あの頃せっかく近所に居たのだからもう少しブラウンデザインに関心を持っていれば良かったと思う。

話は山梨のお店SNORKにもどるが、ここはフィンランドのアアルトを初めとするデザイナーのビンテージ家具などのお店で、直ぐそばがオートキャンプ場という山里にある。こんな所でグッドデザインの品々を取り揃えているのがとても珍しい。身延山の方面へ行く方にお勧めしたい。