ほおっておくとやはり水は濁ってしまうので、少しでも手入れしなくて
済むようにしたくて作りました。
タタラを石膏型で成型して酒器を作る技法を紹介します。
下の写真がその完成品です。
先ず、酒器の原型を作ります。私の場合、インダストリアルクレイで作ります。インダストリアルクレイ(以下クレイと略す)は、陶芸の世界ではあまり、と言うかほとんど使われていない材料ですが大変に便利なものです。これは自動車や家電のデザインモデルを作るのに使用される合成粘土で、油土とか油粘土と呼ばれるものとは異なり、非常に細かな細工ができて、常温では硬いのが特長です。そのメリット、デメリットを以下に挙げます。
メリット:
・常温では硬く、金属の道具などで削ることが出来、ディテールの細工ができる。
・形状を修正する時に足して盛ることが容易。
・異物さえ混入しなければ何度でも繰り返し使えるので材料としての無駄がない。
・油を含んでいるので石膏での型取りがしやすく離型剤が要らない。
デメリット:
・使う前に暖めるという準備とそのための器具が必要。
・道具や机などにクレイが付着し易いので使用後に溶剤などで手入れが必要。
・指先に付いたクレイは指紋の中まで入り込むので手袋が必要。
・暖めたクレイを手袋無しで指先で強く擦り続けると火傷することもある。
メーカーは手袋を使うように勧めているが仕事はやり難くくなる。
クレイは専用のクレイオーブンもしくはクレイシェーパーと呼ばれる土練機で60度に暖めて柔らかくして使います。しかし、どちらも高価なので僕は炊飯器の保温モードで暖めています。但し、保温モードで放って置くと60度を超えてしまうので、15分ピッチの24時間タイマーに接続し、適温になったところで15分冷やす、30分暖めるのを繰り返して使っています。60度を大きく超えると粘土は溶けて液状になりガスが出て成分も変化してしまいます。インダストリアルクレイの価格は620gで約1500円と石膏に比べると5倍くらいしますが、何度も繰り返し使えることを考えるとむしろ経済的です。
原型作りの概要は以下の通りです。
使用するクレイの量を必要最小限にするため、木材や発泡材などでコア(芯)を作ります。コアは実際の形状よりおよそ10~20mmくらいひかえた形状にします。
次にその周囲に、暖めて柔らかくなったクレイを空気が入らないように注意してこすり付けます。実際の形状より大きめにしてから色々な道具でクレイを削って成形します。クレイの足りない部分にクレイを盛るには、予め下地のクレイをドライヤーで暖めておいてからその上に柔らかいクレイを盛り足します。
普通、陶磁器用の型の原型は石膏で作りますが、インダストリアルクレイが何故使われないのかはよく分かりません。磁器鋳込みの方とお話したことがありますがその方もインダストリアルクレイをご存知で無かったので理由は分からずじまいでした。陶磁器産業と一般の工業の間には行き来が少ないからかもしれません。