ひねって・焼いて・陶

陶芸の様々な技法、釉薬、お会いした陶芸家の方々の話等々、私が陶芸で学んだこと、発見したことなどを綴ります。

Mazdaのデザイン

2019年01月26日 | 陶芸/クラフト/デザインを考える

 最近のマツダは目に見えてブランドイメージが高くなったと感じる。

この本を読んで共感したことの一つは、著者前田氏はマツダのブランド作りをするにあたってマーケッティングの視点からではなく物作りの視点から取組んだこと。日本はかつて1980年ごろまではひたすら一人前の良い製品を作ることを目標にして、それが結果として実力の向上に繫がって行ったのだが、一旦一人前になると、より激しい競争の中で他社に勝つための物作りが目標となり、効率よく車を開発し、効率よく売って会社の業績を上げることが経営者の大きな関心事となった。その中で、近頃業績を上げるために仕事の手抜や偽装が始まっているのはとても悲しい。製造業は物作りの心が大事であり、氏はそこに重点を置いている。アップルやダイソンが高いブランドを築けたのも経営者の物作りに対する強くてしっかりした姿勢があるからだと思う。

もう一つ共感したのは、氏が工芸に着目している点だ。工芸は物作りの原点であり、工芸家には純粋な物作りの姿勢を持っている人が多い。自分がデザインの現場にいた時は新しいものや海外のものに目が行って、工芸にはそれほど関心が無かったのだが、いま工芸の世界に入ってみると優れた工芸作家の造形力や物作りへの意識の高さを多々感じるようになった。その一方で、最近の新型車の造形にガッカリし、作り手の考えに疑問を感じることがある。日本は世界屈指の工芸大国であり、そこから得られるものは色々ある。デザインというのは自由であり、個人の好みも多種多様で良いのだが、その中でも高みを目指すなら製造業の作り手が工芸を良く見るのは良いことだと思う。

企業の中でブランドを作る難しさは並大抵ではない。自分自身がそうした場で非力だっただけにつくづくそれを感じる。それゆえ、これからのMazdaのデザインに期待が膨らむ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


「ひねって・焼いて・陶 展」を終えて

2019年01月14日 | お知らせ

昨年末に開催した2人展を無事終えることができました。年末の忙しくて寒い時期にお越し頂いた方々にお礼申し上げます。会期中、知人、友人を含めて多くの方々とお会いし楽しく話をすることが出来て、展示会を開催するまでの様々な苦労が報われました。

ノリタケでの展示会は3回目。以前よりはスムーズに準備が出来るかと思っていたのですが、制作中にトラブルが次々と起こり最後の1週間は夜なべの連続でした。ちっとも進歩していないなあと感じる反面、陶芸は失敗して学習するの繰り返しであり、何かしらは身に付いたのだろうと思います。今は、展示会を終えて数週間、工房の片付けなどで何も作らずにリラックスした時間を過ごしていますが、頭の中では次の計画が色々と浮かんできています。

うちの窯に入るギリギリの高さ(約50cm)の花器。いきなりこのサイズのタタラは成形出来ないので2枚を繋いで作った。スラブローラーがあれば簡単に出来るのだけど置く場所もないし、もったいないし・・・。口縁部分が特徴的なのだが花を活けてみるとそこはみごとに隠れてしまい残念。

 

 新しい透かし彫りパターンの陶ランプ。今までのデザインの中で一番良い感じの影が出た。

 

デザインをまとめるのに何個試作を作ったことか。釉薬の調整にもずいぶん手間取り、ようやく出来上がったので達成感はひとしお。

 

 この釉薬は流し掛けによる色合いの変化が特徴。土から溶けて噴き出した長石粒がキラキラしているところも気に入っているのだが、そこは出来上がってから気が付いた。思わぬ収穫。

 

時計のデザインをあれこれ考えているうちに、何年も前にチャレンジしたワイヤーによる透かし彫りを応用することを思いついた。

 

ここからは、かみさんの作品。「クリスマスフレンズ」。手が込んでいて作るのは大変だったが、とても人気があった。

 

猿から始まった干支シリーズ。この黄瀬戸と土(並信楽)の組み合わせがドンピシャで良い風合い。

 

 単純な形の上に流し掛けで付けた釉の変化が評判だった。


マット釉のトラブル

2019年01月08日 | 釉薬

このところ自作の釉薬がよく剥がれる。どれもマット釉でカオリンが40%以上の釉薬。画像左の白い釉は釉を厚掛けしている。薄く掛ければ縮れないのだが厚い方が表面が美しくなるので無理をしている。

右のブルーグレーの釉の基礎釉は今まで全く問題無かったが、今回激しく縮んだ上に飛び散って棚や隣の作品にまで掛かってしまった。こんな事は初めてでびっくり。初めて使った着色剤のグレー顔料が原因なのかもしれない。この後、CMCを加えたところ、剥がれは無くなったものの、同じ時間だけ釉を掛けてもごく薄くしか付かず、掛けにくくなってしまった。

行き詰ったので、多治見の釉薬屋さんカネアツのホームページからメールしたところ、オヤジさんらしき人が電話をくれた。状況を詳しく話すと焼成初期段階の換気が不十分な為、水蒸気が釉薬を浮かしている可能性が高いと指摘された。そこでアドバイスに従い、今までは電気窯の上面にある直径約5cmの換気口だけ開けていたのに加えて、前面の扉も3cmほど開ける事にした。ところが、250度でコンピューターがエラー表示となり焼成が止まってしまった。これは扉を閉めて焼成を再開して事無きを得たのだが、窯の仕様や性能によって対応を工夫する必要があるようだ。

その次からは、扉を開ける代わりに色見の穴2ケ所を開け換気を促すことにした。さらに、400度になった時点で換気穴にガラス板をかざして水蒸気の有無を確かめ、まだ水蒸気があるようだったら換気の時間を延長することにした。これは日頃色々相談にってのって頂いている栄木さんから教わったやり方。

同時に釉薬の改良も行った。画像右の釉薬は棚上げにして左の釉薬に取組んだ。今まではカオリンを生が2/3、焼カオリンが1/3だったのを、焼カオリンの比率を増やして半々にし、カオリンの縮みを抑制した。結局のところ換気と釉薬の改良でトラブルは解決した。ただ、どちらの対処法がどの程度功を奏したのかは定かではない。ただ何となく、どちらも有効だと感じている。カオリンの多い釉薬は、透明釉ベースの釉薬と比べて微妙な調整が必要なのだと思う。