河内国喜志村覚え書き帖

大坂の東南、南河内は富田林市喜志村の歴史と文化の紹介です。
加えて、日々の思いをブログに移入しています。

茶話158 / 明日こそは

2024年12月11日 | よもやま話

二十代の半ば頃だったろうか。
祖母が、「そろそろ結婚したら」というので、ある日の夕方、遠い親戚の女性を家に連れて来た。
非のうち所の無い、実に整った顔立ちの、まことに綺麗な女性だった。
「これからよろしくお願いします」
か細い声だが、はっきりとした口調で女性が言った。
しかし、当の私はまったく結婚なんぞする気がない。
「結婚はまだ早いので」と、女性との話もそこそこに自分の部屋に閉じこもった。

8時頃に、風呂に入ろうと風呂場に行った。
裸になって、ドアを開ける。
すると、あの女性が湯船につかっていた。
「アッ!」という微かな声が漏れた。
私は慌ててバスタオルを腰に巻いた。
そして、声も出ずに、ドアも閉めずに、一目散に自分の部屋へ逃げ戻った。
   
二、三分もしないうちに、ドタドタと足音がした。
バァーンと私の部屋のドアが開いた。
あの女性が立っていた。
それも、胸にバスタオルを巻いただけの姿だ。
こんな時、男の視線は顔よりも脚に向く。
『プレーボーイ』や『週間平凡』のグラビアでも見たことのない綺麗な脚だ。
その女の脚が静かに私の方へ向かって来る。
そして、二人の足の指が触れるような距離で止まる。
女の手が私の肩にからまってくる。
長いまつ毛の女の瞳の中に、男の顔が映っている
風呂上がりの薄紅の唇から切ない声が漏れる。
「私のすべてを見たでしょ。結婚してください」
 
そこで、目が覚めた。
ああ、夢だったのか。
トイレに行って、再びベッドに入る。
あの夢の続きを何とかして視たいものだ。
必死に眠ろうとする。
しかし、眠れない。
結局、朝までうとうとのままで……終わった。
次の日の夜、昨日の夢の続きを絶対に視るぞとベッドに入った。
だが、寝不足のせいで朝まで熟睡した。
明日こそは……!
なんともわくわくする夢の話である。

コメント
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