法事があって、終わった後に食事会があった。
一般的には「お斎(おとき)」というが、関西では「仕上げ」という。
少し酒が入ったので、帰りは知人(年下)に車で送ってもらった。
家の前で車を降りる時、一瞬、迷った。
お礼の言葉を何て言おうか?
100%の人間関係ある友人や年下の親戚なら「ありがとう」で済む。
50%ほどの人間関係で、年下の知人には何て言おうか?
「ありがとうございます」は丁寧すぎる。
「ありがとう」では失礼になる。
一瞬迷って出た言葉が、
「おおきに」
「おおきに」は、関西弁で〈ありがとう〉の意味になる。
古語の「おおきなり」の連用形で、〈大いに・たいへん〉の意味。
だから、関西弁の「おおきに」の正式な言い方は、「大きに、ありがとうございます」になる。
つまり、肝心な「ありがとう(タメ)」「ありがとうございます(敬語)」を省略しているのだ。
英語の「Thank You very much」の「very much」だけを言っているだけで、肝心な「Thank You 」が抜けているのだ。
だからこそ、相手との人間関係が関係なしに、タメも敬語も関係なしに遣える言葉なのだ。
なんとも大胆な省略だこと。
我々は、日々、相手との人間関係を考慮して会話している。
言葉が丁寧過ぎると、相手と距離をとることになる。
だが、短かく省略すると、距離が近づくことになる。
つまり、言葉の長短で敬意の度合いや親密度が変わるのだ。
関西商人は、それをよく知っていて、言葉を短くして客との距離を縮め、商売をうまく成立させていたのだ。
関西弁の「おおきに」は、関西商人(あきんど)」の知恵が詰まった言葉なのだ。
まあ、なんとも大胆な省略だこと。
昭和の昔、八百屋でキュウリを1本買うと、「毎度! おおきに」と返ってきた。
「毎度、お越し下さいまして、大いに、ありがとうございます」
まことに、なんとも大胆な省略だことよ!