”三浦しをん”さんの「エレジーは流れない」(双葉社)を読了しました。三浦さんの小説を読むのは、本屋大賞を受賞して映画にもなった「舟を編む」以来です。1か月ほど前に新聞に文庫本化された広告が出ていたのを見て、「面白そうだなぁ…」と思って図書館に予約を入れたら、意外に早く番が回ってきました。
「”三浦しをん”による王道ではない青春小説」というキャッチコピーの下、この本のウェブサイトには、こんな紹介が掲載されていました。
海と山に囲まれた餅湯温泉。団体旅行客で賑わっていたかつての面影はとうにない。のどかでさびれた温泉街に暮らす高校生の怜は、複雑な家庭の事情や、進路の選択、自由奔放な仲間たちに振り回されながら、悩み多き日々を送っていた。今日も学校の屋上で同級生4人と仲良く弁当を食べていたら、地元の「餅湯博物館」から縄文式土器が盗まれたとのニュースが入り…
この小説は、温泉街で暮らす高校生たちの話です。ぬるま湯に浸かっているみたいに、特に大きな事件もなく、将来への明確な夢もなく、かれらの日常はのんびりと過ぎていきます。私自身、高校生のころなどに「いまが一番いい時期よ」と大人からしばしば言われましたが、まったくピンと来なかったし、いま思い返しても「若い=夢や希望にあふれている=いい時期」だったとはちっとも思えません。ただ退屈で、さきが見えなくてちょっと不安で、でも友だちとおしゃべりしているのが楽しかったという感じです。事件や夢がなくても日常は営まれるよな、という思いをこめて書きました。そんな日常をおバカなノリで、けれど一生懸命に生きる登場人物たちを、応援していただければうれしいです。(三浦氏自身の紹介文)
ハラハラ・ドキドキするスリリングな場面はほとんどなく、青春時代の甘酸っぱい恋のかけひきもない。田舎の温泉街で繰り広げられる平凡な高校生たちの物語は、なんか自分自身の青春時代を思い出すような懐かしさを感じる(ボクの故郷は温泉街ではないけどね)ストーリーでした。お母さんが2人いて、2人とも伶くんのことを大切にしてくれているし、地域の人も友達もみんなが親身になってくれている。ほんわかした作品でした。
ところで表題の「エレジー」ですが、直訳すると「哀歌」ですよね。古賀政男の名曲「湯の町エレジー」が思い出されます。ですが、この小説の舞台「餅湯温泉」に、「エレジーは流れない」のです。エレジーではなく、「もっち もっち もっちゆ〜」の明るいテーマソングをボクも口ずさみながら(メロディーは適当)、この小説を読了しました。