精神疾患 に関する紛争は近年増加傾向にあり,休職,解雇 ,労災,民事損害賠償請求等に関する紛争が数多く起こっています。精神疾患を発症した社員はデリケートな対応が必要であり,マニュアル的なやり方では十分な対応ができません。
弁護士法人四谷麹町法律事務所(東京) は,精神疾患を発症した社員の休職,解雇,労災,民事損害賠償請求等に関する紛争を数多く取り扱ってきました。会社経営者を悩ます精神疾患を発症した社員の休職,解雇,労災,民事損害賠償請求の対応は,弁護士法人四谷麹町法律事務所(東京)にご相談下さい。
管理職にも残業代(時間外・休日割増賃金)支払う場合の賃金原資は,どこから調達すればよろしいでしょうか。
管理職 にも残業代 (時間外・休日割増賃金)支払う場合の賃金原資は,基本給や諸手当,場合によっては賞与を抑制することによって調達することができます。
適正な対価が残業代込みで月額35万円の管理職については,基本給25万円,管理職手当10万円を支給して管理監督者として扱うのではなく,例えば,月額5万円程度の残業代(時間外・休日割増賃金)の発生が見込まれる場合には,基本給25万円,管理職手当5万円とした上で,時間外・休日労働時間数に応じて残業代(時間外・休日割増賃金)を支給するといった賃金制度を構築・運用すべきことになります。
管理職からの残業代(時間外・休日割増賃金)請求を予防する方法を教えて下さい。
管理職 からの残業代 (時間外・休日割増賃金)請求を予防する方法としては,
① 管理監督者とする管理職の範囲を狭く捉えて上級管理職に限定し
② 大部分の管理職は最初から管理監督者としては取り扱わずに残業代(時間外・休日割増賃金)を満額支給する
ことをお勧めします。
就業規則において管理職は管理監督者として扱い残業代(割増賃金)を支給しない旨規定し周知させた場合であっても,管理職に残業代(割増賃金)を支払う必要がありますか。
就業規則が労基法に反する場合には,当該反する部分については,労働条件になりませんので(労契法13条),就業規則において管理職 は管理監督者として扱い残業代(割増賃金)を支給しない旨規定し周知させた場合であっても,管理監督者に当たらない場合は,管理職に対し,労基法37条1項に基づき残業代 (時間外・休日割増賃金)を支払う必要があります。
深夜(22時~5時)に労働させた場合には,管理監督者であるかどうかにかかわらず,労基法37条4項に基づき深夜割増賃金を支払う必要があります。
個別労働契約において管理職は管理監督者として扱い残業代(割増賃金)を支給しない旨規定し労働者に署名押印させるなどしてその同意を得ていた場合であっても,管理職に残業代(割増賃金)を支払う必要がありますか。
労基法で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は無効となり,無効となった部分については労基法で定める基準が適用されますので(労基法13条),個別労働契約において管理職 は管理監督者として扱い残業代 (割増賃金)を支給しない旨規定し労働者に署名押印させるなどしてその同意を得ていた場合であっても,管理監督者に当たらない場合は,管理職に対し,労基法37条1項に基づき残業代(時間外・休日割増賃金)を支払う必要があります。
深夜(22時~5時)に労働させた場合には,管理監督者であるかどうかにかかわらず,労基法37条4項に基づき深夜割増賃金を支払う必要があります。
従来の一般的な判断基準とは異なる判断基準を用いて管理監督者該当性を判断する見解にはどのようなものがありますか。
『労働法 第十版』(菅野和夫著)340頁は,「近年の裁判例をみると,管理監督者の定義に関する上記の行政解釈のうち,『経営者と一体の立場にある者』,『事業主の経営に関する決定に参画し』については,これを企業全体の運営への関与を要すると誤解しているきらいがあった。企業の経営者は管理職 者に企業組織の部分ごとの管理を分担させつつ,それらを連携統合しているのであって,担当する組織部分について経営者の分身として経営者に代わって管理を行う立場にあることが『経営者と一体の立場』であると考えるべきである。そして,当該組織部分が企業にとって重要な組織単位であれば,その管理を通して経営に参画することが『経営に関する決定に参画し』にあたるとみるべきである。最近の裁判例では,このような見地から判断基準をより明確化する試みも行われている。」としています。
また,ゲートウェイ21事件東京地裁平成20年9月30日判決,プレゼンス事件東京地裁平成21年2月9日判決,東和システム事件東京地裁平成21年3月9日判決は,結論としてはいずれも管理監督者該当性を否定していますが「管理監督者とは,労働条件の決定その他労務管理につき,経営者と一体的な立場にあるものをいい,名称にとらわれず,実態に即して判断すべきであると解される(昭和22年9月13日発基第17号等)。」とした上で,具体的には,以下の①②③④の要件を満たすことが必要であるとしています。
① 職務内容が,少なくともある部門全体の統括的な立場にあること
② 部下に対する労務管理上の決定権等につき,一定の裁量権を有しており,部下に対する人事考課,機密事項に接していること
③ 管理職手当等の特別手当が支給され,待遇において,時間外手当が支給されないことを十分に補っていること
④ 自己の出退勤について,自ら決定し得る権限があること
訴訟における管理監督者に該当するかどうかの一般的な判断基準はどのようなものですか。
管理監督者は,一般に,「労働条件の決定その他労務管理について,経営者と一体的な立場にある者」をいうとされ,管理監督者であるかどうかは,
① 職務の内容,権限及び責任の程度
② 実際の勤務態様における労働時間の裁量の有無,労働時間管理の程度
③ 待遇の内容,程度
などの要素を総合的に考慮して判断されます。ただし,①②の要素を充足しない場合には,③待遇が相当高かったとしても,管理監督者性が否定される傾向にありますので,まずは①②が管理監督者に相応しいものであることが必要となるものと考えられます。
①職務の内容,権限及び責任の程度を検討するにあたっては,労務管理を含む事業経営上重要な事項にかかわっているか,事業経営に関する決定過程にどの程度関与しているか,現場業務(管理監督以外の仕事)にどの程度従事していたか,他の従業員の職務遂行・労務管理に対する関与の程度,管理監督者として扱われている社員の割合等が考慮されます。
②実際の勤務態様における労働時間の裁量の有無,労働時間管理の程度を検討するにあたっては,タイムカード等による始業終業時刻管理の有無,欠勤控除の有無等が考慮されます。
③待遇の内容,程度を検討するにあたっては,役職手当や賃金の額が役職に見合っているか,社内における賃金額の順位,管理職になった後の賃金総額と管理職 になる前の賃金総額との比較等が考慮されます。
平成20年9月9日基発第0909001号『多店舗展開する小売業,飲食業等の店舗における管理監督者の範囲の適正化について』を参考にする際の留意点を教えて下さい。
平成20年9月9日基発第0909001号『多店舗展開する小売業,飲食業等の店舗における管理監督者の範囲の適正化について』は,店舗の店長等の管理監督者性を否定する要素について整理しているものに過ぎず,同通達の否定要素がなければ店舗の店長等の管理監督者性が肯定されるというわけではないことに留意する必要があります。