My ordinary days

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ふと思い立ち第2のキャリアを始めてしまった、流されがちなひとの日々を綴るブログです

佐藤賢一「王妃の離婚」

2010-08-13 12:53:58 | 読書
中世フランスを舞台にした離婚裁判劇・・・法廷サスペンス・・・舞台は教会というか大聖堂ですが。

主人公の弁護士フランソワはかつてパリ大学法学部で伝説の男と呼ばれた優秀な修道士でしたがある事件がもとで大学を中退、失意のまま故郷ナントに戻り司教座法廷常設弁護士の職につきました。20年あまり後、出張からの帰途傍聴した国王と王妃の離婚裁判で、ある事情から王妃側の弁護を引き受けることになったのですが、離婚以外にも領土問題、教皇庁との問題、そして世継ぎの問題…様々な難問がついて回る裁判で、彼はいったいどのような闘いを見せるのか。
不当につきつけられた離婚を回避できるのか、そして彼は失われた愛そして誇りを取り戻せるのか・・・。

どう見ても不利な案件を次々にひっくり返していく様は痛快です。民衆を味方につけ相手の裏をかき追い詰めていくフランシス。

法廷でのキレのいい戦いぶりも*

***この時代、教会が家庭裁判所の役目も負っていたそうで・・・結婚するのも教会(婚姻届)、生まれた子どもに洗礼を授けるのも(出生届)葬式をだす(死亡届)のも教会。国家はまだ国民の細かな生活まで統治する密な機関をそろえておらず、しかし霊的裁判権と呼ばれる機能はローマ教皇を頂点に国家の枠を超えて教会に整備されていました。教会裁判所は法学を修めた聖職者にとっての人気の高い就職先になっていた、というわけです***

*おもしろいのですが、フランソワの過去にどんな痛ましい出来事があり、それが二十年後の今どのようにしてカタルシスを迎えるのか そこが読みどころの一つでしょう。



愛するが故にフランソワとの結婚を拒んだかつての恋人、そして愛故なのか?王との離婚を拒む王妃。
二人の女性の心の動きもフクザツで興味深い。

すらりと読めます。