My ordinary days

ようこそいらっしゃいました!
ふと思い立ち第2のキャリアを始めてしまった、流されがちなひとの日々を綴るブログです

天童荒太「永遠の仔」

2011-06-12 05:02:28 | 読書
もう10年以上前のベストセラー、「このミス」一位の本ですが、初読です。


とある牧師様から おもしろい本ですから今日の帰りにでも買ってってください(笑 と薦められたので素直に読んでみたワタクシ。

・・・・重い話とは聞いていましたが~重かったね~~。傷ついた子どもの話、というところが親の立場からするとなんともいえない・・・
児童虐待のサバイバーのお話です。サバイバー・・・生き残った者。とりあえず命はあるけれど、生きていることと自分の命があるということとがうまくかみ合わないままに大人になってしまった子どもたち。心の傷はそう簡単には消えないから。
中心となるのは3人の男女です。四国の病院で療養生活をしていた二人の少年と一人の少女3人が退院後17年の時を経て再会し、その再会を機に殺人事件が起こります。機に・・・というよりは、いつかはこうして出会わなければいけなかった3人ですから、事件も起こるべくして起こったものといえるかもしれません。無いもののようにしては生きていけないほどの深い傷を負っている3人だから。
3人の運命が重なる大きな事件が起こったのは17年前のこと。少女の父親が霧のかかった山で亡くなります。事故死として処理されますが実際には・・・さあどうでしょう~
17年前の事件の真相と現在起こったいる殺人事件と、どんな関わりがあるのか?
・・・ミステリー、ですが犯人探しははっきりいってどうでもいいような?最初の事件に関しては最後の最後でどんでん返しがありますが、現在の事件は・・・どっちかな?というのがわかるし。それよりも虐待について、不幸が不幸を呼ぶような連鎖はどうやって終わりにできるのか?こちらがこの小説の要であります。

子どもの頃に保護者たるべき親に負わされた傷が深いことは想像できますが、しょせん想像。でも読み進めていくうちに主人公3人の絶望的な気持ち、自分を許せず親を許せず、愛する親を許せない自分が許せず・・・堂々巡りを繰り返すだけで、自らの力で立ち上がることは容易ではないことがわかります。親からの愛情が子どもにどれだけ必要なのか生きていく上で大切なものなのか、小説中で声高に語られてこそいませんが・・・ではその親から受けた傷は永遠に治らないのか?

そのまま傷を抱えて生きている人たちはたくさんいるでしょう、でも人によって傷ついた者は人との関わりからでしか救われない。逆にいえば救われること・傷を癒していくことは不可能ではない、ということです。簡単にはいかないようですが、それでも。立ち直れるという希望は捨てなくてもいい。


この三人ともによい出会いはあり、救われるための希望の灯りをひそやかに受けとりますが

看護師の優希は同じように性的虐待を受けてきた女性患者の告白から
弁護士のモウルは老人介護施設の施設長の言葉から
そして刑事のジラフは数年ぶりに会う養父母との会話から

お話の最後で3人はそれぞれ違う道へと再び別れていきます。けしてハッピーエンドではありませんが
心に負ったものを浄化させていく第一歩を踏み出せていくのではないでしょうか。




おもしろかった。一気読みでした。

眠いです^^