何も変わっていなかった。
5年ぶりに「納沙布岬」を訪れたが、5年前と何一つ変わっていないように見えた。
北方四島の返還を願って作られたというモニュメント「四島のかけ橋」にある灯火台の火は、四島の返還が実現されるまで燃え続けるのだと聞いた。
日本で最も東の地である。
日本で一番早く昇る朝日を拝める。
岬の先端に建つ納沙布岬灯台は、道内で初めて設置された洋式灯台といわれる。
歴史を感じさせる灯台の先にはオホーツク海の海が広がっている。
その向こうに、四島の一部を望むことができる距離である。
北方館や北方領土資料館などを見学したり、お土産物屋さんをひやかしたりして過ごす。
その後、オホーツク海沿いに根室市街の方に少し戻り、今回の旅の目的である「オンネモトチャシ跡」を見学する。
「チャシ」とは、アイヌ語で「柵囲い」という意味で、砦の跡とされている。
根室半島には多くのチャシ跡があり、国指定史跡となっている。
「日本百名城」にも登録されていて、最近、見学者も増えているようである。
案内板がなければ単なる草原にしか見えないところである。
きれいに草が刈られた散策路を進む。
正面の平らな台地状の部分がチャシ跡である。
登ってみると円形に土や石が盛られ、てっぺんが平たんになっている。
全体が海に突き出したようにほぼ三方が海に囲まれていて、一段下がったところも平らに整地されている。
そこも何かの用途があったような形に見える。
「オンネモトチャシ」と書かれた標柱が一本立っているだけである。
それ以外は、人工物は何も残っていない。
地上にいるとなかなか全体をつかみにくいが、上空からだとはっきりとその形が判るようである。
海に面した崖の上に築かれたチャシは、海からの攻撃に対し守りを固めていたのであろうと想像する。
戦国時代や江戸時代の、本州各地のお城とは形も規模も全く違うものである。
このチャシが作られたとされる16~18世紀ごろの、この地で起こった当時の戦いの様子を、なんとなく想像している。