Counting Blessings

シンガーソングライター Yumiko Beckの
活動やあれこれ。

優雅なハリネズミ

2010年07月04日 | 
普段は小説って、全くと言ってよいほど読まないのですが、
友人が勧めてくれたので、試しにと思って図書館で予約しました。

人気の本で、私の番が回って来るまでに
ずいぶんと時間がかかりましたが、
待ったかいがありました。

美しい話でした。

胸の奥の方から、じんわり暖かさがにじみ出てくるように、
人生には生きる価値があるんだよ、と
語りかけてくれます。

実用本やハウツー本も勉強になりますが、
こんな風に、ブレている軸を正してくれるものが
生きて行くにはとても必要です。

語り手は二人いて、
非常に知的なのにわざと凡庸を装った高級アパルトマンの管理人と、
そこの住人で頭が良すぎる故に大人の世界のからくりがすべて見えてしまい
未来に希望を見出せない少女。

この設定にまず惹かれます。

階級意識のはっきりしているヨーロッパだからこそ。
生まれや育ち、教育の有無などによって、
こうまでレールがはっきり分かれているとは。
人と人、として出会うより先に「所属」が来てしまうとは。
同じ場所で生息していても、そこには目に見えないバリアがあって、
決して交わる事はないのです。

日本はやはり一億総中流と言われるだけあるなぁ、と思いました。
日本で生まれ育った私たちは、みんな横並び、と言う意識が
非常に強いのではないでしょうか。

けれども、日本にも格差の波がやって来ています。
もしかしたら、人が人として出会う前に、まずは出自という時代が
またやって来るのかもしれません。

それでも、心を揺さぶられる人生を生きたいなら、
やはり、人は人として出会わなければいけません。