おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

幸せのちから

2022-08-13 08:41:56 | 映画
「幸せのちから」 2006年 アメリカ


監督 ガブリエレ・ムッチーノ
出演 ウィル・スミス
   ジェイデン・クリストファー・サイア・スミス
   タンディ・ニュートン
   ブライアン・ホウ
   カート・フラー
   ダン・カステラネタ

ストーリー
五歳の息子・クリストファーと妻・リンダとともにサンフランシスコで生活するクリス。
生活は困窮していたが、クリスは医療機器のセールスに励み、生活を立て直そうと必死で働いた。
しかし家賃の支払いすらままならず、一日16時間のパート労働を続けていたリンダも限界に達してしまう。
息子を連れて出て行ってしまうリンダ。
28歳になるまで実の父と会った事すらなかったクリスは、息子に自分と同じ思いをさせまいと心に誓い、彼を自分のもとに引き取る。
しかし生活は悪化の一途を辿り、父子は医療機器の在庫を抱えてモーテル暮らしを強いられる。
ある日、クリスは街中で真っ赤なフェラーリを颯爽と乗り付けた高級スーツの男を見かけ、声をかけた。
「どうすればあなたみたいに成れるんだい?」。
男は株の仲介人だった。
聞けば学歴がなくとも証券会社の養成コースを受講すれば正社員採用の道が開けるというのだ。
クリスは受講者募集の口を見つけ、猛烈アピールを開始して養成コースの受講に成功する。
厳しい道ではあったが、今の生活から愛息子とともに抜け出す為にはこれしか無いと決め、クリスは勉強と顧客開拓に励んだ。
一方生活は益々困窮し、二人は、ついにホームレスにまで身を落とす。
手元に残っている金目の物は、壊れてしまった一台の医療機器だけだった。
駅のトイレや教会の宿泊斡旋所などを渡り歩き、疲弊しつつもユーモアを絶やさない二人。
そしてクリスは六ヶ月の研修期間を乗り切り、20分の1の採用者の資格をも見事に勝ち得た。
未来が開けた喜びを噛み締めながら、クリスは息子をむかえに託児所へと急ぐのだった。


寸評
日本語タイトルが「幸せのちから」となっているが、原題は「The Pursuit of Happyness」でアメリカ独立宣言の「The pursuit of happiness(幸福の追求)」に由来している。
HappinessのスペルがHappynessと、i が y になっているのは映画を見るとその理由が分かる。
息子を引き取りながらホームレスにまで落ちてしまったクリスが逆境にめげず証券会社の正社員に採用され成功する話なのだが、中ほどにこの映画を象徴するシーンが用意されている。
それは、クリスは何をやっても上手くいかず家賃も払えず落ち込んでいる時に、ビルの屋上で息子とバスケットボールに興じるシーンである。
息子が「バスケットボールの選手になりたい」と言うと、父親のクリスは「パパもバスケはうまくなかったから、あまり夢中になるな」と返す。
それを聞いた息子はガッカリしてボールを袋にしまう。
その姿を見たクリスは息子に、「お前にはできないなんて絶対、誰にも言わせるな!」、「俺にさえだ!」と言う。
そして、「夢があるなら、それを守りぬかなきゃいけない。人は自分が何かをできないと、他人にもお前にはそれはできないと言いたがる。何かが欲しければ、それをつかみ取れ」と告げる。
それはあたかも自分自身に投げかけているようでもあり、この映画のテーマそのものである。

何をやっても上手くいかず悪循環に陥ることってあるもので、クリスは正にそのパターンに落ち込んでいる。
クリスは有り金をはたいて、自分の住む地域での骨密度測定器の独占販売の権利を取得する。
しかし在庫を抱えて一向に売れず生活費にも困窮するようになり、妻は耐えきれず出て行ってしまう。
息子を強引に引き取ったものの生活はその日暮らしである。
頼みの医療機器を盗まれたりして散々である。
やっと証券会社の養成コースを受講出来るようになり、講師には便利使いされながらクリスは愚痴を言わずに命じられたことをこなす。
なんとか人事担当者が乗るタクシーに同乗する事に成功するが、タクシー代がなくタダ乗りするハメになる。
会社の社長には5ドルを借して欲しいと言われ、なけなしの金から5ドルを渡す。
クリスはその日の生活にも苦労しているのだが、人から頼まれれば断ることができない性格なのだ。
家賃が払えずモーテル暮しとなり、そこも金が払えず駅のトイレで夜を過ごすことにもなる。
教会が提供する無料宿泊施設になんとか潜り込まねばならないまでになっていく。
クリスは惨めさの為に涙を流す場面はあるものの総じて明るさを失わない。
駅のトイレを寝ぐらにするシーンや、試験時の答案提出シーンなどユーモアを感じさせる場面がクリスの明るさを後押ししている。

僕の会社勤めの晩年は勤める会社が倒産の危機にあえいでいた。
あの時M&Aが成功せず倒産していたら、僕はクリスのように頑張ることが出来ただろうか。
年齢も手伝って気力をなくし自暴自棄になっていたような気がする。
誰でもが頑張れば救われるし成功するわけではないが、クリスの頑張りには拍手を送りたくなるし、自分も頑張ろうという気にさせてくれる作品である事は間違いない。