「シェナンドー河」1965年 アメリカ
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監督 アンドリュー・V・マクラグレン
出演 ジェームズ・スチュワート
ダグ・マクルーア
ローズマリー・フォーサイス
キャサリン・ロス
フィリップ・アルフォード
パトリック・ウェイン
ストーリー
1863年南北戦争のまっ最中、バージニア州シェナンドー河の流域で広大な農場を経営しているチャーリーは、戦争にまきこまれず厳然たる中立を守っていた。
彼は妻なきあと7人の子供たちを、厳しい躾けと限りない愛情で育てあげ、奴隷制度も否定していた。
ある日彼の家に南軍の将校が来て、息子たちの参戦を申しいれたが、彼はきっぱりと断った。
息子ジェームズの妻アンに娘マーサが生まれ、1人娘ジェニーは南軍の将校サムと結婚したが、彼はその直後に戦場にかり出されてしまった。
その頃一家に思いもよらぬ不幸がまい込んだ。
「ボーイ」と呼ばれている末っ子が、偶然拾った南軍の帽子をかぶっていたばっかりに北軍の捕虜になってしまい行方不明になった。
一家はいやおうなく戦争にまき込まれてしまい、彼らはジェームズ一家を残して捕虜収容所をたずねた。
しかし「ボーイ」は仲間と一緒に脱走した後だった。
情報をたよりにチャーリーたちは、北部に向かう南軍捕虜列車を襲撃し、護衛の北軍小部隊を撃破した。
そして列車の中から出てきたのは、ジェニーの夫サムだった。
チャーリーたちは「坊や」捜しをあきらめ農場に帰ったが、そこに待っていたのは南軍の歩哨の相手かまわずの発砲だった。
長男ジェイコブが倒れた。
そのうえ農場は掠奪者に襲われ、ジェームズ夫妻が殺害されていた。
悲しみのチャーリーは、昔、妻や子供たちとよく行った教会に残された家族と共に出かけた。
礼拝の最中、物音にふり返ると、そこには松葉杖をついた「ボーイ」が立っていた。
来会者たちの賛美歌がいつまでも続いた。
寸評
南北戦争に巻き込まれるような形でアンダーソン一家に起きた悲劇を描いているが、悲劇性を感じるよりも一家の結束力を感じる内容だ。
一家を父親のチャーリーが束ねていて、農場経営に専念している彼は南北戦争へのかかわりを拒絶している。
母親は末っ子のボーイを産んだ時に死亡しているようである。
チャーリーにはジェームズ、ジェイコブ、ネイサン、ジョン、ヘンリー、ボーイという息子とジェニーという娘の7人の子供がおり、ジェームズにはアンという妻がいる。
アンダーソン一家は南軍から人員を求められるのだが徴兵を拒否している。
優勢な北軍が軍馬の買い上げを要求してくるがそれも拒否している。
アンダーソン一家の立場を前面に押し出して戦争反対を訴えているようにも見えるのだが、その主張は明確ではなく、あくまでも自分たちの土地を守ることに専念しているように見える。
チャーリーが亡き妻に、「マーサ、この戦争について私はよく知らない。どんな戦争だって勝つのは葬儀社だけだ」と語り掛けたりする場面はあるのだが、僕は反戦をテーマにした映画とは感じなかった。
ところが子供たちを初めとする家族愛は傑出していて、妻の遺言によって遅れながらも渋々教会に行っているように、チャーリーは今でも亡き妻を愛している。
アンダーソン一家が絶対父権ながら仲良く暮らす平和な生活が前半で描かれ、後半の物語の大きな伏線的役割となっている。
中盤で末っ子のボーイが拾った南軍兵士の帽子をかぶっていたため北軍に捕らえられてしまうあたりから空気が一変し、ジェームズ夫婦を残して残りの者たちがボーイの救出に向かい、そこで起きる出来事が描かれていく。
ジェームズの妻のアンに扮したのはこれがデビュー作となったキャサリン・ロスで、2年後の「卒業」と「明日に向かって撃て!」(1969年)でニューシネマのヒロインとなっていく。
前半ものんびりした描き方だったが、後半も南軍と北軍の銃撃戦などがあるものの、ゆったりとした描き方だ。
一家だけで捕虜輸送列車を襲っていとも簡単に北軍兵士を追っ払い、救われたのがジェニーの婚約者のサムだったり、ジェイコブを撃った16歳の南軍の歩哨少年を赦したり、ボーイを救ったのは黒人の少年ガブリエルだったという何ともご都合主義的な描き方がそう感じさせたのかもしれない。
ジェイコブが死亡し、留守中に略奪者に農場が荒らされてジェームズ夫妻が命を奪われるなど一家を襲う悲劇を描いて戦争の空しさを訴えているのだが、ジェームズを襲うのが単なる悪党にしか見えないので戦争による犠牲という風には思えなかった。
アンが死亡する状況が描かれていないこともその一因のように思う。
家族で一番射撃が上手いと豪語するジェニーが旅の途中のピンチ場面でその腕前を披露する場面が用意されていてもよかった。
ひどい目にあった一家だと同情してしまうが、救いは赤ん坊が生きていたことで、分かっているとは言え、ボーイが生還してきた場面はジーンと来るものがある。
19世紀初頭の民謡がもととなったテーマソングが流れ、ありきたりと言えばそれまでだが、新しい時代の幕開けを感じさせるエピローグとなっている。