ちょっと前の話ですが、宮部みゆきさんの著書「さよならの儀式」を読みました。
SF短編集です。
8編の短編が書かれています。
SFというより、ファンタジーといった方が良いかもしれません。
読んだ感想ですが、やはり宮部さん。
読み手を選ぶ感じ。
お話としては難しいわけではありません。
ただ、色々な要素を含んだ「ふわっ」とした終わり方をします。
同宮部さんの作品の、杉村三郎シリーズも感じましたが、すっきりとは終わりません。
「正義」「悪」「完全ハッピーエンド」がもてはやされる昨今。
これ自体昭和的幼さを感じるのですが、宮部さんの作品は、キャラクターの心情の裏腹を含んだ終わり方をする感じがします。
悪の裏には正しさがあり、正しさの裏には毒々しい情念がある。
これを読み取れないと、面白さが読み取れない。
そんなお話。
これには、読み手の人生経験というか、大局を読み取る考え方を持っていないと、なかなか難しい。。。ちょっと大人な読み物なんだと思っています。
誰が正しくて、間違っている。そんな読み方をしている人には難しい話なのでしょうか。
それほど、ふわっとした終わり方なので、そのあとの出来事を想像すると・・・涙腺にぐっと来てしまう。
じわっと心が揺り動かされる。
そんな読み物なのだなと実感したところです。
特に「さよならの儀式」「保安官の明日」は顕著で、読み終わったところでは「終わっちゃったな」と思うのですが・・・
キャラクターの色々な心情を踏まえて、そのあとのストーリーを想像すると
「あっ」
と思わされ、そのまま涙腺に来てしまう。
そんな感じがしました。
短編集らしい読み物です。
ある全体の流れから一片を切り取り、その前後のお話を想像させる。
その中には、右を想像する人もあれば、左を想像する人もいる。
ただし、そのヒントは十二分にストーリーの中に、それも密かにちりばめられている。
完全なオチは必要ない。
オチは、ちりばめられたヒントの中から、読み手が感じること。
そんな、学術的な、高難易度な、そして短編集らしい短編集だったと思います。
簡単に言えば・・・短歌のような「短いふわっとした世界の中からの強い思い」そんな感じがしました。
言いすぎかな(笑
それゆえに、読み手の人生経験に左右されると思いました。
このお話は、簡単じゃない。