しかし、
その頃から始まった日本の高度成長期が、
道路建設や団地造成や工業地帯建設の為に、
日本国土の津々浦々を掘り返し、
期せずして、初めて明らかになったことは、
一万五千年前から二千三百年前までの
一万二千七百年間に及ぶ縄文時代(石器時代)に、
我が日本列島に世界人類史に類例のない、
自然と共存共栄した定住社会が存在したということだ。
この一万数千年の定住社会である縄文時代が
日本の源流(ルーツ)である。
ここから、
神話が生まれ天皇が生まれ日本が生まれた。
この時、
欧州を代表とするユーラシアの人々は、
移動採集の生活をしていた。
そして、後に、
農耕を行うようになって定住するようになると、
自然を征服して農地を拡大していた。
これに対して縄文時代の人々は、
豊かな森の続く里山と川と海の豊かな風土がもたらす
生物多様性の恩恵を受け、
狩猟、漁労、採集によって定住を果たし、
里山の自然を温存し手入れして豊かさを維持し、
しかも、
この生活を一万年以上続けていたのだ。
そして、
この縄文の人々は、
現在の我々の血の中にいる。
私は、昨年十二月、
世界遺産となった青森の山内丸山縄文遺跡の中に佇み、
森先生が言われた、
民族生命の原始無限流動の原点にいるのを感じた。
(以上は、森信三先生ゆかりの、堺市内で行われている
若竹読書会会報に投稿した原稿に加筆したもの)