猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

アクト・オブ・キリング

2014-04-21 02:55:08 | 日記
デンマーク・ノルウェー・イギリス合作映画「アクト・オブ・キリング」を観にいった。
インドネシアを舞台にしたドキュメンタリー映画である。
『1965年のインドネシア。スカルノ大統領(当時)親衛隊の一部がクーデター未遂事件を
起こす。クーデターの収拾にあたった軍部のスハルト少将(後にインドネシア第2代の
大統領になる)らは、事件の背後にいたのは共産党だとし、西側諸国の支援も得て65~
66年にインドネシア各地で、100万とも200万とも言われる人々を”共産党関係者”だと
して虐殺。以来彼らは、権力の座に就いている。映画作家ジョシュア・オッペンハイマー
は、北スマトラ州の州部である大都市・メダンで虐殺に加担した実行者たちを取材し、
彼らが過去の殺人を誇らしげに語る理由を知るために、殺人を好きな形で再現し映画に
することを提案した。この映画はその過程の記録である』

私はこのドキュメンタリーの背景を全く知らないので、パンフレットの文章をそのまま
書かせてもらった。幻想的なシーンで始まり、幻想的なシーンで終わるこの映画。昔
インドネシアでこんな事件が起きていたなんて、私は知らなかった。西側諸国の支援が
あったというのもショックな話である。共産主義者というのは本当に苦難の歴史を辿っ
ているのだなあ、と考えさせられた。
映画の中心になるのは、アンワル・コンゴという老人である。彼は虐殺を実行した殺人
部隊のリーダーだった。おしゃれで陽気な老人である。
この国では殺人者たちが処罰されていないということに驚いた。ナチス・ドイツだって、
カンボジアのポル・ポト派だって、戦争が終わった後では処罰の対象になっているのに。
アンワルとその当時の仲間たちに、罪悪感はまるでない。「カメラの前で殺人を再現して」
という監督の要求に、映画スター気取りで応じる。そこには誇りさえ感じる。
「こういうふうに拷問をして、こういうふうに殺した」と平然と話しているアンワルと
仲間たちに、胸が悪くなる。何故人はこうも残酷になれるのか。そのアンワルは今では
2人の孫やアヒルをかわいがる老人であり、当時とのギャップに戸惑わずにいられない。
しかし、撮影を続けるうちに、彼らにある変化が訪れる。それは、この「残虐なシーンの
ない残虐な映画」の唯一の救いかもしれない。
「なぜ彼の目を閉じてこなかったか、そればかり考えた。閉じてこなかった目に、いつも
見つめられている」というアルマンの言葉が心に残った。




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