ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

戦場でワルツを

2009-11-07 18:00:27 | さ行
公開がだいぶ延びてましたが
ようやく11/28に決まったので

「戦場でワルツを」84点★★★


今年のアカデミー賞外国語映画賞にノミネートされ
「おくりびと」よりも有力視されていた
イスラエルの異色アニメーション。

番長は断然、こちらのほうが
作品レベルは上だと思います。
まあもろもろ事情があったのでしょう。


主人公は監督自身でもあるイスラエル人のアリ。
彼は19歳だった1982年、
イスラエル軍によるレバノン侵攻時に従軍していたはずなのだけど
そのときの記憶がまったくない。

そこで彼はその記憶を探るべく
かつての戦友たちを訪ねる…というお話。


まずアニメーションの作風が独特で
すごく頭に残ります。

動きのリズムが普通と違うし
夢のような、でも現実に違いない、という
不思議な浮遊感がある。

夢のなかで歩いているような感覚?
うーん言葉で表現しにくいなあ。←ライター失格


これが戦争という現実と
そのなかで体験することの非現実さを見事に表しています。

実写だと直視しにくいものを
アニメという伝達手段を使ったのも賢いし、
説教くさくなく、
アート作品としてもクオリティが高い。


イスラエルとパレスチナの歴史は
番長の手に負えないほど深いですが

ここに描かれているのは
若者がよくわからないままに戦争にかり出され、
そこで加害者になっていく現実。

それはどんな戦争にも当てはまること。

「無知よりも、知ろうとしないことが罪」と
強く感じました。


で、番長では手に負えない部分を
成蹊大の下河辺美知子教授にインタビューをして
わかったことがたくさんありました。


いままで被害者として発言してきたイスラエルが
初めて加害者としての視点で描いた
画期的映画だということ。

本作を「イスラエルの自己弁護」と非難する人もいる、という話

なぜ主人公に戦争の記憶がないのか…などなど。


詳しくは12/1発売のおなじみ「週刊朝日」
「ツウの一見」欄で掲載されます。
映画と併せて読んでみてくらさい。

★11/28からシネスイッチ銀座ほか全国で順次公開
コメント (2)
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