ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

パチャママの贈りもの

2009-11-29 13:07:51 | は行
ドキュメンタリーかと思うほど
雄大で自然な作品でした。


「パチャママの贈り物」71点★★☆


南米ボリビアにある塩の湖で
塩を切り取って生活する一家を描いた物語。


彼らはインカ帝国の末裔だそうで
切った塩をリャマ(アルパカみたいな動物)に積んで村へ売りに行き
物々交換で農作物をもらって暮らしている。


映画は現地の人々を使って
6年もかけて撮影されたそうで
本当にドキュメンタリーかと思うほど自然。

でも主人公の少年を中心に人の出会いや別れなど起伏を盛り込んで
なかなかうまく出来ています。


なによりも冒頭、真っ白な塩の平原で
黙々と作業をする彼らの姿からかなり引き込まれました。

広い地球には、こんな暮らしがあるのか!という驚き。


監督はニューヨーク在住の日本人・松下俊文。
9.11を目の当たりにして、自分を見失い
広大なこの土地に辿りついたんだそう。


すごくわかる気がします。


美しくも厳しい自然のなかでの
シンプルで力強い彼らの暮らしは
真に「人間らしく」みえるから。

彼らの過分な荷物はもたない謙虚さや
「お互いさま」と無償で助け合う精神の崇高さをみると
「こんなふうに生きたい」と強く感じます。


時代は確実に原点回帰の方向にあるし、
彼らにはどうぞこのまま
変わらずにこの生活を続けてもらいたいと
願ってしまいます。


実は一番心に響いたのは
一家のおばあちゃんが亡くなるシーン。

チューブにつながれることもなく
おじいちゃんに優しく“なでなで”してもらいながら
静かに死んでいく様子が
心底うらやましく「こうありたい!」と思いました。

★12/19からユーロスペースで公開。

「パチャママの贈り物」公式サイト

コメント (4)
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