ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

エリックを探して

2010-12-23 22:32:10 | あ行
ケン・ローチ監督って
こんなハッピーな映画も撮るんだなあ。

「エリックを探して」84点★★★★


マンチェスターの郵便配達
エリック(スティーヴ・エヴィッツ)の人生は
どうにもうまくいっていない。


車で事故るわ
妻には出て行かれるわ
あげく妻の連れ子だった息子たちは
反抗期で言うことを聞きやしない。


仕事仲間たちはエリックを気づかうが
本人はもう神経衰弱ギリギリ。


そんな彼の前に突然
神と崇めるサッカー選手
エリック・カントナ(本人!)が現れる!


だがその姿は
エリックだけにしか見えないようで……?!


ケン・ローチ監督といえば

アイルランド独立戦争を描いた
「麦の穂をゆらす風」(06年)の深刻さも

不法移民労働を扱った
「この自由な世界で」(07年)のシビアさも
最高だったけど

この映画も最高でした。



ファンタジーが混じるような展開になっても
人物造形や背景に
しっかりリアリティがあるので
ラクにのっかれるし


それになんたって
主人公を助ける仲間たちが最高なんです。


労働を共にし
サッカーという趣味を共有する彼らは
とことん暗~く深刻なエリックを
なにかと気にかけてくれる。

仕事仲間というよりも
やっぱ人生の仲間、という感じで

その結託具合やずっこけ加減が
なんとなく
「フル・モンティ」とか
「ブラス!」とかを思い出させるんですねえ。


冒頭はかなり深刻そうなんだけど
愉快な仲間たちの笑いが盛り上げ
しかしまた深刻になり……という

アップダウンのテクにのって
笑いながら、めいっぱい楽しめました。


サッカーに無知でも
全然問題ありません、ハイ。

ちなみにエリック・カントナという人は
本当にサッカーのネ申、な人らしい。


現在は監督業のかたわら
俳優としても活躍し
「エリザベス」(98年)や「クリクリのいた夏」(99年)
最近では「マルセイユの決着」(07年)なんて
作品にも出てるそうです。


★12/25からBunkamuraル・シネマほか全国で公開。

「エリックを探して」公式サイト
コメント (2)
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