ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

塀の中のジュリアス・シーザー

2013-01-25 23:28:11 | は行

だまされているのか、
そうじゃないのか――

はい、ワシはだまされました(笑)


「塀の中のジュリアス・シーザー」65点★★★

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ある舞台で俳優たちがシェイクスピアの
「ジュリアス・シーザー」を熱演している。

終了後、喝采のなか、舞台に立っていた彼らは
それぞれ房へと帰っていく。

そう、ここはイタリアにある刑務所で
演じていたのは服役中の囚人たち。

彼らは刑務所の演技実習として
シェイクスピア劇を演じているのだ。

映画は囚人たちのオーディションから
刑務所内での練習風景を映していく――。

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これはですね~
予備知識を半分くらいにして見ておくと
より楽しめる作品かもしれません。


刑務所で囚人たちが芝居をする話――だとは知っていたので
ドキュメンタリーだと思ってたんですが、

観ると
ライティングも演出もかなり計算されている。

すると
「え?ホントに囚人なの?これ俳優じゃないの?」
まず疑いが生じる。

だって
囚人たちのオーディションもすごい迫力だし

刑務所内での練習風景にも
「普通こんなアングルで撮れないよね?!」と疑いがまた生じる。


すると、どんどん
虚実ごちゃ混ぜになっていき、混乱させられるんです。

見終わってから
資料に載ってる俳優たちのプロフィルに「囚人」と書いてあるのでさえ
「まあ手が込んでること」とか疑っちゃった(笑)

まあ実際に彼らは本物の囚人たちで
刑務所も設定もすべてホンモノ。

それを“ドキュメンタリー”としては撮らずに
凝った作りにしてあるわけで

すべてはタヴィアーニ兄弟監督の
綿密な仕掛けによるものなんですね。

モノクロを多様した画面も美しく
76分という尺にも拍手を送りたい。

なんですが、
ワシにはちょっと高尚すぎるというか
眠くてまいったのは事実です。


でも知るといろいろおもしろい話があって

まず舞台となったこの刑務所は
「ゴモラ」に描かれたマフィア“カモッラ”の犯罪者などが
多くいるところなんだそう。
なので、囚人たちにも日常的に芝居に親しんだりしていた
インテリがけっこういるのかもしれない。

彼らの演劇が評判になっているのも本当で
人々が観劇のために、刑務所内にある舞台までやってくるらしい。

そして
ブルータス役の彼は
服役後、俳優になり「ゴモラ」にも出てるらしい――。

これぞ
映画とリアルが混じるおもしろさですね。

★1/26(土)から銀座テアトルシネマほかで公開。

「塀の中のジュリアス・シーザー」公式サイト
コメント (2)
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