ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

命をつなぐバイオリン

2013-02-07 22:57:50 | あ行

びっくりなのは主人公が
ホンモノの天才バイオリン少年だってこと。

非凡な説得力は
そこからきていたのか――。

「命をつなぐバイオリン」70点★★★★


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1940年。

ソ連の支配下にあったウクライナに住む
裕福なドイツ人少女ハンナ(マティルダ・アダミック)は

神童として演奏会をし、活躍する
バイオリニストの少年アブラーシャ(エリン・コレフ)と
ピアニストの少女ラリッサ(イーモゲン・ブレル)に出会う。

最初、ユダヤ人であるアブラーシャたちは
ハンナを警戒するが
やがて三人は音楽を通じ、堅い友情で結ばれる。

しかし、戦争が平和な日々に影を落とし――。

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1940年代を舞台に
ユダヤ人の神童コンビとドイツ人少女の
出会いと、その悲しい運命を描いた作品です。

時代背景からして内容は想像できるものだったんだけど
それ以上に、映像が力を持ってました。

最初は
ドイツ軍がソ連に戦争をしかけたことで
ハンナたちドイツ人が危険にさらされ
ユダヤ人のアブラーシャ少年らにかくまわれる。

しかしその後、
ドイツ軍がウクライナに侵攻すると
今度は一転して「ユダヤ人狩り」が始まり、
立場がまったく逆になってしまう。

そんな恐ろしい状況のなかで
子どもたちの絆と音楽が、
大人たちを助け合わせていく――というストーリー。


運命の皮肉やハラハラ加減もうまく、

全編静かなトーンで、忍び寄る戦争の影と悲劇を
押しつけがましくなく描いていて、いい感じです。


なんたって
神童少年を演じるコリン・コレスが
12歳でカーネギー・ホールでデビューを飾った
ホンモノの天才少年だっていうんですから
スゴイじゃありませんか!

何も知らずに見ていたけれど
演奏シーンとかに漂うオーラに
ただならぬものを感じたのは確か。

実際に彼がすべて演奏しているんだそうで
なるほど、この説得力の合点がいきましたわ(笑)


ウクライナの湖や森をはじめ
映像も美しく
作りも丁寧。


森のなかで倒れた鹿に「戦争」を重ねるシーン、
映画の姿勢すべてが現れているようで、好きでした。


★2/9(土)からヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開。

「命をつなぐバイオリン」公式サイト
コメント
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