ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命

2013-05-20 20:06:36 | は行

ライアン・ゴズリングは
なんでこんなに色男なのか。

そしてこのタイトルは
なんでこんなに覚えにくいのか(苦笑)


「プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命」79点★★★★


**************************

ルーク(ライアン・ゴズリング)は
移動遊園地で命がけのバイクショーをする
天才的なライダー。

彼はかつての恋人ロミーナ(エヴァ・メンデス)と偶然再会し、
ロミーナが自分の子を生んでいたと知る。

二人を養おうと決めたルークは
危ない仕事に手を染めるようになり――。

**************************


「ブルーバレンタイン」の監督×ライアン・ゴズリング×
ブラッドリー・クーパーという
期待あおりまくりの作品。

そして実際
「うーむ・・・こうきたか!」とやられました。

こうきたか!を存分に味わいたい方は
ここまでにしておきましょう(笑)



前半はライアン・ゴズリングの危さをともなう
匂い立つ色気で押しまくり


「いつブラッドリー・クーパーが出るのかしらん?」と思わせておき、
アッ!という感じでバトンタッチ。

後半のクーパー主体のストーリーへとつないでいくという
展開なんですねえ。

クーパーはマジメな警察官役で、

この対照的な二人の男の人生が
交わるかに見えて一瞬で離れ、次へと進むっていうのは
二人のスター度からしても、かなり意外性があってうまいと思う。

さらにそこから
彼らの子ども世代へと話がつながるという
壮大な二世代にわたる「男」の物語なんです。


色気むんむん醸し出しつつ、
色っぽいシーンがほとんどないのも洒落てるし

アイスクリームのエピソードや
「スター・ウォーズ」のセリフなど
胸につん、とさせる細部もしっかり描き込んでる。

思ったよりも大きな物語を前に、
しばしボーッと、エンドロールを見上げつつ、
じわじわと込み上げてきました。


★5/25(土)から新宿バルト9ほか全国で公開。

「プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ」公式サイト
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

くちづけ

2013-05-18 22:09:57 | か行

観てから、
宅間孝行氏演じる“うーやん”の真似が
と、とまらない・・・(笑)


「くちづけ」71点★★★★


***************************

知的障害を持つ人々が集団で生活する「ひまわり荘」。

常にハイテンションのうーやん(宅間孝行)や仙波さん(嶋田久作)ら
個性的な面々が集まり、日々ワイワイと暮らしている。

そんなある日、
ひまわり荘に、住み込みのスタッフとして
いっぽん(竹中直人)が
娘のマコ(貫地谷しほり)とやってくる。

いっぽんはかつてヒット作を生み出した漫画家で
知的障害を持つマコを男手ひとつで育ててきたのだ。

男性をこわがるマコだが
「ひまわり荘」の面々とはすぐに打ち解けて――。

***************************

俳優、脚本家として活躍する宅間孝行氏が
実際の事件にインスパイアされ
自身の劇団「東京セレソンデラックス」のために書き下ろした大ヒット戯曲を

堤幸彦監督が映画化したものです。


ヘビーな題材を
中盤までライトなエンタテインメントにしていて
なかなか見ごたえがありました。

特に舞台となる「ひまわり荘」での
うーやんほか個性的な登場人物たちのやりとりが可笑しく
かなり大笑い。

舞台を意識した演出も
ユニークな味になっていて

ひまわり荘を舞台正面に、
下手からひとつのグループがはけて
ひとつのエピソードが終わると、

上手から別のグループが現れて
さりげなくストーリーをつないでいく。


そして
笑いのなかに、
障害を持つ人が生きていく上での社会の不寛容や
実際の苦労といったシビアな現実を織り交ぜていく。

場がガクンとシリアスに転換する感覚も、
その“演劇”っぽさがうまく作用して不自然でないんです。

竹中直人の鬼気迫る演技と、
脇キャラたちの魅力も大きいですね。

麻生祐未さん、こんなにいい役者だったか。
橋本愛氏も手堅いしねー。


ただ
悲劇へとなだれ込む後半は少々しつこく、
それまでの軽やかな魅力をそいでしまって、やや残念。

“堤節”というか堤流のサービスっぽさが
出てしまった感じですかねえ。

泣ける、との評判どおり
周囲もすすり泣き大合唱でした。

ワシは泣きませんでしたけど。


★5/25(土)から全国で公開。

「くちづけ」公式サイト
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

中学生円山

2013-05-17 21:12:10 | た行

「少年メリケンサック」最高だった。
「11人もいる!」も面白かった。
「あまちゃん」も絶好調!

でもこれはダメだった・・・


「中学生円山」30点★★


*************************

中2男子の円山克也(平岡拓真)は、
平凡な父(仲村トオル)と母(坂井真紀)と妹と
団地で暮らしている。

彼は日々、あることを達成すべく
真剣に「自主トレ」を繰り返している。

そんなある日、団地の上の階に
シングルファザーの下井(草剛)が引っ越してくる。

下井は
彼の秘密の自主トレを知っているらしい。

「なぜ知ってるんだ――?!」

いったい、この男は何者なのだ――?!


*************************


宮藤官九郎監督、4年ぶりの映画です。

このところますます絶好調!のクドカンですが
うーん、これはダメだった~。

ノートの走り書き&落書きを
120分見せられた感じ。

まあ
宣伝ビジュアルなどで想像したものから
受ける印象そのまんまではあります。

オ〇ン〇ンをなめるために
ひたすら前屈を鍛えるアホな中学男子・円山。

妄想とエロが全ての14歳男子は
それだけでネタになるけど、
ホントにそれだけだと、おもしろくないよ~。

みうらじゅん氏原作×田口トモロヲ監督の
「色即ぜねれしょん」(09年)をちょい思い出したりもして。
(そういや同じコンビの「アイデン&テティ」の脚本は宮藤氏でした)


ただ
小ネタはチョコチョコ挟まるし、

韓流ドラマにハマる主婦・坂井真紀と
ドラマの主人公が「息もできない」のヤン・イクチュンなのには
笑っちゃいました。


★5/18(土)から全国で公開。

「中学生円山」公式サイト
コメント (6)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

モネ・ゲーム

2013-05-16 20:35:53 | ま行

とことんイジられる
コリン・ファースが可笑しいっす。

「モネ・ゲーム」67点★★★☆


*************************

ロンドンの美術鑑定士ハリー(コリン・ファース)は
雇い主の大富豪シャバンダー(アラン・リックマン)に散々いじめられ、
復讐を決意する。

その計画とは
旧友の少佐(トム・コーネイ)に描かせたモネの贋作を
シャバンダーに売りつけるというもの。

ハリーは
テキサス娘のPJ(キャメロン・ディアス)を仲間に入れ
計画を実行しようとするが――?!


*************************

コーエン兄弟が脚本、
「終着駅 トルストイ最後の旅」の
マイケル・ホフマンが監督したコメディです。


1966年の「泥棒貴族」(主演マイケル・ケイン×シャーリー・マクレーン)の
リメイクだそうで、

元ネタは未見なのですが、あらすじを見ると
ほうほう、盗むモノは違えども、
登場人物の役割と雰囲気は、そのままなぞってるような感じですね。


どこか懐かしい雰囲気のコメディで
「ピンク・パンサー」のような
「ミスター・ビーン」のようなベタさあり。

その世界で
とことんイジ(め)られるコリン・ファースが
想像よりもハマってておかしい。


会話に加わろうとイスを寄せようとしても
どうしてもイスが動かなかったり

ズボンがビリリと破けたり(笑)
部屋から閉め出されちゃったり

はたまた
教科書に出てくるような日本人が登場して
笑われたり(失笑)

いずれも古い手なんだけど
まあコリン・ファースが生き生きと楽しそうだし

相棒役のキャメロン・ディアスも
求められる役割をしっかりこなすはじけっぷり。

どぎつい下ネタがないのも安心で、
イギリスのテレビコメディを見ているような
ほがらか~な気分になりました。

オチはけっこう決まってたし。

ん?シリーズ化されたり‥しないよね(笑)


★5/17(金)から全国で公開。

「モネ・ゲーム」公式サイト
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ビル・カニンガム&ニューヨーク

2013-05-15 19:36:11 | は行

オーバー70の我が父に勧めました。

こんなふうに、まだまだ現役で
生きがい=仕事に邁進してほしいですからね。


******************************


「ビル・カニンガム&ニューヨーク」74点★★★★


******************************


1960年代から、NYのストリートで
一般人のファッションを撮り続け

ニューヨーク・タイムズ紙にコラム連載を持つ、
写真家ビル・カニンガム(84歳)のドキュメンタリーです。


業界人には有名な人物だけど、
その私生活を知ってる人は皆無らしい。

実際、このドキュメンタリーも
彼の承諾を得るまでに8年(!)もかかっているんだそうです。

そしてカメラがとらえた彼の姿は
まあとにかく
エネルギッシュでチャーミング!


雨の日も、風の日も
NYの街をチャリンコで颯爽と流し
瞬間瞬間を「戦場カメラマンのように」切り取っていく。

ファッションショーにも行き
夜はパーティーを撮影し、と
まさにファッション三昧。

あのアナ・ウィンターも
彼にだけは止まってポーズを取り
「彼に撮られることは名誉」と言うからスゴイ。
しかも「ダメだとスルーされる」んだって(笑)

そう、ビル師匠は
顔は広くても、決してセレブと馴れ合うことはせず
センスは厳しいけれど、悪意やいじわる心はゼロ。

小さなアパートに暮らし、
食事はほとんどファストフードのサンドイッチとコーヒー(笑)という
慎ましやかな暮らし。

それらは決して無理をしたストイックさではなく
自分の審美眼に叶う「イケてる」ものを追い求める彼の
誠実さゆえの、最もやりやすいスタイルなのだ。


それを50年以上やり続け、
いまも生き生きと
ファッションに対する情熱を燃やし続ける姿を見ているだけで
こちらが元気をもらえるんです。


そんなビルが
プライベートな話になったとき、
一瞬声をつまらせるシーンには、グッときましたよ。
いろいろ去来する思いはあったんだろうなア。

ああ、こんなふうに
「仕事じゃなくて喜びだ」と語れる人間になりたい!

がんばるぞ!


★5/18(土)から全国で公開。

「ビル・カニンガム&ニューヨーク」公式サイト
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする