中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

今年はどのような年でしたか?

2012年12月28日 | 情報
本日で、本年のブログは終了します。
新年は、1月7日よりスタートします。
みなさま、よき新年をお迎えください。

弥栄
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健康な人材こそ、成長の源泉

2012年12月28日 | 情報
日経新聞HPより転載です。アップされた日時は不明です。
本年最後に相応しい記事ですので、以下に紹介します。

古井祐司氏
東京大学医学部附属病院 22世紀医療センター 健診情報学講座助教 医学博士 HCCヘルスケア・コミッティー社長兼CEO

健康な人材こそ、成長の源泉

企業の間で「健康会計」のような考え方に対する関心が高まっています。
「健康会計」とは、「健康な社員が収益性の高い会社をつくる」という米国Robert H. Rosenが提唱した
「ヘルシー・カンパニー」によく似た概念です。社員の健康維持・増進を図るための投資が効果をあげているか。
生活習慣病の減少や医療費の削減などに関して定量的な評価を下すことで、
企業が社員の健康維持・増進にどの程度真剣に取り組んでいるかを投資家や消費者に示す、
CSR(企業の社会的責任)会計と同じような狙いといえます。
「健康会計」の導入機運が高まってきた背景には、経済産業省の後押しがあります。
経産省にとっては、GDP(国内総生産)の伸びが停滞する中で生産性向上が喫緊の課題。
企業を支える働き盛りの40歳代以降では、心筋梗塞や脳梗塞など生活習慣病の重症化リスクが高まることから、
貴重な労働力の損失を食い止める施策を打ち出したいのです。また、経産省主催の「健康会計」の委員会には、
壮年期の生活習慣病の増大に歯止めをかけたい厚労省の担当者も出席しています。
健康会計」の考え方は、健康への投資によって医療費が減ったという単純な費用対効果ではありません。
投資により人材の健康を維持し、それが活力になって企業の売り上げが増加したり、新規事業が創出されることも視野に入れています。

健康な社員が増えれば企業負担軽減へ

「健康会計」の指標として初めに思い浮かぶのは、企業が負担する医療保険料などの福利厚生費でしょう。
しかし、今後福利厚生費に大きな影響を与えるのは、企業が財源の過半を負担している自社の健康保険組合の保健事業への取り組みです。
この4月から、生活習慣病の予防を目的に、40歳以上の加入者に対して特定健診・保健指導を行うことが
すべての健保組合などに義務付けられましたが、これらの事業も保健事業のひとつです。
これまで健診は受けても、その後のフォローがないため、知らない間に病気が重くなって、
人工透析になる寸前で初めて病院にかかるといったことが多く見受けられました。
したがって、特定健診制度では、健診を受けた方全員に、自分の健診結果の意味や今後何に気をつければ良いかといった
個々の特性に応じた「情報提供」を行うことが最大のポイントです。さらに、メタボリック症候群と判定された方には、
専門職による面接指導などの「特定保健指導」が実施されます。
特定健診・保健指導のような保健事業に対する投資がどの程度効果をあげているか。
例えば病欠が減ったり、家族の医療費が減ったといった点を「健康会計」の指標にする案が検討されています。
健康投資によって企業の負担が増える可能性があるにもかかわらず、前向きな姿勢を示す企業は少なくありません。
その理由のひとつは、保健事業の実施率が高い健保組合ほど、高齢者医療制度への拠出金が減額されるという
インセンティブが導入されたことです。要は、健康に投資をする健保組合ほど医療費や拠出金のコストが減り、
結果として企業の福利厚生費が削減される可能性があるのです。

病気にさせない、重症化させないことが大きなカギ

メタボの方を放置しておけば生活習慣病にかかるリスクが高まり、人工透析が必要な事態となれば、
健保組合が支払う医療費は1人あたり年額500万円。治療を20年続ければ1億円を負担することになります。
そのため、何よりも必要なのは、リスクのある人を病気にさせない、病気の人は重症化させない工夫なのです。
わたしどもHCCが行ってきた先行的な保健事業の結果では、特に「情報提供」の意義が大きいことがはっきりしています。
ある1万人規模の健保組合では、そのうち健診でほぼ健康とされた8,000人の中で、
1年後には5%にあたる400人の健康状況が悪化し、新たにメタボになっていたのです。
つまり、健診をしているだけでは意味がなく、健診結果に基づき、その人の心に響く
「情報提供」をすることで健康に対する感度を上げてもらうことが重要です。
個々の健康状況に応じたオーダーメードの健康冊子を配布すると、皆に同じ健康冊子を配るよりも圧倒的に関心が高くなり、
2年後でも3分の1以上の方が「情報提供」の内容まで覚えていたという結果が得られています。
全員に「情報提供」を実施した後、メタボの方にはさらに「特定保健指導」を受けていただきます。
先行事業では指導によりメタボリック症候群が4割減りました。
ただ、残念ながらこうした特定健診・保健指導が義務化されたことは、一般にはまだ周知されていないようです。
特定健診・保健指導がきっかけとなり、社員自身が健康への意識を高めないことには実効性は期待できません。
それだけに人事総務部門が率先してその意義を社内に周知徹底し、健康な社員の集まる組織づくりに寄与することが求められます。
同時に、社員の健康への投資を経営陣に働きかけていくことも必要でしょう。
「健康会計」のような考え方の普及、定着のために、人事総務部門の果たす役割はきわめて大きいといえます。
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健康診断受けぬ社員、上司賞与も減額

2012年12月27日 | 情報
2012年12月24日 読売新聞より

コンビニエンスストア大手ローソンは、社員が健康診断を受けなかった場合、
社員と直属の上司の賞与(ボーナス)を減額する制度を2013年から導入する。
社員の健康維持によって業務の効率を上げるのが目的で、同社は「人件費の削減が目的ではない」と説明している。
同社は13年春の健康診断を受けなかった社員に対し、まず3回程度、受診するよう促す。
それでも14年2月までに受診しない社員に対して、14年5月末に支給されるボーナスの15%分、
その上司は10%分を減額する措置を取る。
同社は年に1回、春に健康診断を行っているが、「仕事が忙しい」などの理由で受診しない社員がいるため、
受診率は83%超にとどまっているという。上司のボーナス減額にまで踏み込むことについて、
同社は「仕事の割り振りなどの管理責任を問う」としている。

これは、英断ですね。
まず、企業は安衛法で、定期健康診断を1年に1回実施しなければならないのですが、上記の記事の通り、
受診率が100%になることは至難の業といえます。
企業も、あの手この手を駆使して受診率を高めるよう努力しているのが現状ですが、
しかし、定期健康診断を受診しないのは従業員の責任、というわけにはいきません。
これを放置して、定期健康診断を受診しない従業員が、何らかの病気を発症すると、企業は安全配慮義務違反を
問われる可能性があるからです。

しかし、定期健康診断を受診しないとボーナスを減額する措置には問題もあります。
多分、記事のようにストレートに結びつけるのではなく、ボーナスは業績給の性格がありますから、
業績評価の一部に「定期健康診断の受診」があって、定期健康診断を受診しない従業員は、この項目が零点となり、
結果としてボーナスが少なくなるという、ことなのでしょう。
また、上司まで類が及ぶのは、どうなのでしょうか?これも上記と同じように、直接的に結びつけるのではなく、
上司としての部下の監督責任評価が低くなり、結果として賞与の額に影響が出る、ということなのでしょう。
いずれにしても、運用を間違えると労使間の対立にもなりかねませんので、労使間の緊密な話し合いが必要になります。
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プログラムとプラン

2012年12月26日 | 情報
職場復帰支援について、プログラムとプランは、どう違うのですか?という質問を受けました。

企業・組織においてMH問題は、重要な経営課題になっています。
このMH問題を解決するために、職場復帰支援制度の重要性が、とても高まっています。
これは、従業員を企業の重要な「資産」として位置づけている企業・組織が多いこと、それと、
職場復帰を成功させることがとても難しいこと、の裏返しであるということでしょう。

さて、質問に対する回答です。まず、職場復帰支援制度をどう構築するのか、どうやって仕組みにするのか、ということです。
具体的には、企業・組織の経営理念や社長方針に基づいて、就業規則等の社内規定との整合性を考えながら、
職場復帰支援制度を構築します。その制度の主要制度が、復職を希望する従業員を、実際に復職させる過程を制度化したものが、
いわゆる「職場復帰支援プログラム」です。

一方、復職を希望する従業員は、体調の回復状況や本人の希望がそれぞれ異なりますので、
「職場復帰支援プログラム」に基づいて、個々の従業員の職場復帰過程を具体化したものが、いわゆる「職場復帰プラン」です。
小生は、拙著や講演、現場への具体的なアドバイスについて、以上のような使い分けをしています。

ところが、労働法例を順守して、精神医学の考えを取り入れ、企業・組織の人事労務体制に馴染み、
企業・組織で働く人たちの賛同を得られる、というような「試し出勤制度」を柱とする
職場復帰支援制度の設計は極めて難しい作業と云えます。
本当に難しい、のです。職場復帰支援制度を取り入れたが、制度設計に難点があったためトラブルになり、
制度を廃止したという企業もあるくらいです。ですから、調査データによると、試し出勤制度を導入している企業は、
従業員1000人以上の大企業でも、47.9%という結果になっています(社会経済生産性本部、上場269社対象調査、2008年)。

制度設計はもとより、質問・お問合わせにも橋本社会保険労務士事務所がお手伝いします。
残念ですが、今のところ、ネットを検索しても、本屋で参考書を探しても、メンタルヘルス対策支援センターに相談しても
(実際にMH対策支援センターの相談員に相談した結果です)、御社が満足する回答を得ることはできないでしょう。
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職場復帰支援の手引、は重要です

2012年12月25日 | 情報
厚労省「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引」は、みなさんご存じのはずです、いまさら何を、でしょう。

休職中の検査技師に対する解雇の相当性と賃金請求権の範囲を争った、大阪府保健医療財団事件の判決(大阪地判平成18・3・24)に
この「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引」が引用されたことから、
本手引きの重要性・位置づけに変化が起こり、平成21年3月、本手引きの改訂に繋がりました。

中央労働災害防止協会 健康確保推進部メンタルヘルス推進センター所長 柳川行雄(執筆当時)氏の解説を紹介します。

最初に手引きが作成されたときの意図は、産業保健の立場から職場復帰についての望ましいあり方(いわば役に立つ資料)を
企業に提供しようとするものであったと筆者は理解している。
とくに「指針」としての位置付けではないし、他の方法によることを望ましくないとしているわけでもない。
しかし、これが公表されると、少なくない事業者および労働者は、
これを国の指針として事業者には守るべき義務があるものとの受け止め方をした。
しかも、大阪府保健医療財団事件判決(大阪地判平成18・3・24)に引用されたことから
(実は、事業者は手引きに遵(したが)わなければならないとしたのではなく、
遵ったために職場復帰が遅れても責任はないとしたにすぎなかったのだが)、この傾向はさらに強くなった。
 このため、平成20年度の改訂作業においては、指針として用いられることを想定して、
できる限り様々な立場から評価・分析・検討して見直すことをめざし、委員会の委員として、
労使団体からの推薦委員をはじめ、精神科医、法学者、企業の労務管理担当者、産業医、保健師など幅広い分野の方々に就任をお願いした。
これにより、今回の改訂で、従来に増して多様な立場からの知識・ノウハウが集約されることとなったと考えている。

さらに、建設技術研究所事件(大阪地判平24.2.15)の判決においても
「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引」が引用されたことから、
今後、当手引きの重要性がますます高まることになります。
当手引きに従い、企業・組織のMH対策を推進するよう努めることが当然のこととなるでしょう。

ただ、当手引きの考えを、企業・組織の「就業規則」に翻訳するには相当の手間暇と知識が必要です。
お困りの場合には、橋本社会保険労務士事務所がお手伝いします。
s-hashi@ya2.so-net.ne.jpまで。メール等による質問・問い合わせには無料で対応させていただきます。
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