中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

中小企業は2割どまり(続編) 

2016年09月30日 | 情報

ストレスチェックは、11月末までに実施しなければならないのですが、
記事の通り、未だにストレスチェックを実施していない企業がたくさんあることが、分かりました。

小生の事務所にも、ストレスチェックが、未だ計画の俎上にも上らないという、悲鳴にも似たお問合せをいただきます。
以下、標準的な回答です。
最も重要なことは、「拙速」であってはならないということです。
法令通り、11月末までに実施しようとすると、人材が不足していたり、安全衛生の態勢に不備がある
中小の企業では、今から2か月くらいの期間で、計画して実施するには、時間が不足しています。
ですから、11月末までに実施する、しなければならないという先入観を、まず捨ててください。

ただし、法令遵守が社長方針であり、企業文化でもあることから、
11月末までに実施したいのであれば、外部の専門機関に「丸投げ」することです。
ただし、それなりの費用を、予算計上する必要があります。
ストレスチェックは、1回限りで終わりということではありません。
これから、定期健康診断と同様に、毎年実施しなければならないのです。
従業員から信頼されないストレスチェックを、毎年「形式的に」実施するのであれば、
御社の貴重な費用を、まさに「どぶに捨てる」ようなことになってしまいます。
ですから、慎重に実施して、実績を積み重ね、従業員から信頼される制度にしていかなければなりません。

法令で、罰則を科せられているのは、以下の三項目です。
①ストレスチェックを、毎年11月末までに実施すること。
②個人情報を、外部に漏らしてはならないこと。
③実施結果を、労基署長あてに報告すること。

ただし、導入初年度は、制度の導入・定着させることが、当局の役割ですから、
いきなり、初年度からストレスチェックが未実施であると、処分されることはありません。
ですから、初年度は、「ストレスチェックを実施できませんでした」と、
労基署長あてに報告すればよいでしょう。
しかし、「できませんでした」では、通用しませんので、いつまでにどのようにして、
ストレスチェックを実施するのか、計画書を併せて提出することをお勧めします。
また、計画すら進んでいない企業にあっては、どのような問題点がある、どのような疑問があるのか、
正直に相談してみてください。とにかく、ストレスチェックの実施を疎かにしているのではないという
態度を示すことが重要です。そうすれば真摯な態度が評価されて、いろいろと相談に乗ってくれるでしょう。
これから先は、個別の相談になります。

橋本社会保険労務士事務所でも、ストレスチェックのご相談に応じています。
ただし、有料になることをご了承願います。

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中小企業は2割どまり 

2016年09月29日 | 情報

ストレス検査、中小企業は2割どまり 義務化1年目 
2016/9/18 日経

働く人の心の健康対策として昨年12月に始まったストレスチェックについて、
今年7月時点で千人以上の企業は49.5%が既に実施したのに対し、
200人未満の企業では20.6%にとどまったことが18日、
メンタルヘルス対策を手掛ける「アドバンテッジ リスク マネジメント」(東京)の調査で分かった。
ストレスチェックは50人以上の事業所に年1回の実施が義務付けられ、質問票を使って心理的負荷を測定。
強いストレスがあれば医師による面談をしたり職場環境を改善したりする。
制度開始から1年に当たる11月までに初回を実施しなければならない。
調査は7月、50人以上の企業600社を対象に実施。
ストレスチェックの実施率は平均33.8%だったが、規模が小さくなるほど下がった。
千人以上が半数だったのに対し、500~999人が35.4%、200~499人が27.2%、200人未満では5社に1社にとどまった。
また、今後の予定として、外部に委託するか自社で実施するか決まっていない上、
実施の時期も決まっていない企業の割合は200人未満で13.3%あり、
規模が小さいほど準備が遅れている傾向も浮き彫りになった。
調査担当者は「中小での実施や準備が遅れているのは、費用や人員に余裕がないことが主な要因ではないか。
中小企業が実施しやすいよう、各地の労働局は企業が抱えている問題を把握し、
具体的な助言をすべきだ」と話している。〔共同〕

ストレス検査、企業手探り 
プライバシー保護周知し受験促す 異動に生かした例も
2016/8/14日本経済新聞

従業員50人以上の企業などに義務付けられた「ストレスチェック」。
働く人の心の健康状態を調べ、職場環境の改善などに生かすのが目的だ。
初回の検査期限の11月末まで3カ月余りとなり、多くの企業が実施する中で課題も見えてきた。
いかに従業員の受検率を高めるか、結果をどう対策に生かすか。試行錯誤が続く。

「あなたの仕事についてうかがいます。最も当てはまるものに○を付けてください」
こんな書き出しで始まるテストを受けた人は多いだろう。
昨年12月の改正労働安全衛生法の施行で年1回、行うことになったストレスチェックだ。項目は4つに大きく分けられる。
まずは仕事の状況について。▽時間内に仕事が処理しきれない▽部署内で意見の食い違いがある
▽職場の作業環境はよくない――といった項目について「そうだ」「ややちがう」などの選択肢から選ぶ。
最近1カ月に不安や憂鬱、腰痛、目まいなど心身に不調が出た頻度のほか、
上司・同僚や家族のサポート度合い、仕事や家庭生活の満足度も聞かれる。
対象は企業や自治体など従業員・職員が50人以上の事業所。
職場でのストレスが原因で心の病になる人は増えており、
従業員が置かれた環境を把握することでメンタルヘルスの不調を防ぐ対策に生かしてもらう。
項目は企業側に委ねられているが、厚生労働省が例示した57問を使う場合が多い。
それぞれに点数が設定され、合計点でストレスの度合いを判定し、従業員に通知する仕組みだ。
ストレスが高い人が希望すれば、医師が面接して助言。企業は医師の意見に基づきその人の業務負担を減らしたり、
全体の分析結果を受けて職場環境を改善したりする。
11月末までに1回目を実施するよう求められており、企業は対応を進める。
ストレスチェックを受託するアドバンテッジリスクマネジメント(ARM)が中小を含む全国600社を対象に調査したところ、
8月末までに実施を終えると答えた企業は6割超だった。
課題も見えてきた。1月、約7千人の従業員を対象に実施したアパート賃貸大手のレオパレス21。
寺嶋洋一・人事部課長代理は「当初は受検率が65%にとどまった」と振り返る。
社員からは「忙しい」「意義が分からない」の声のほか、「プライバシーが漏れるのが嫌だ」という意見が出た。
制度は従業員が受検するかどうかは任意とし、受けないことを理由にした不当な取り扱いを禁じている。
また検査自体は企業ではなく、委託された医師・保健師や外部機関が行うのがルールで、
本人の同意なしに個別の結果は企業に知らされることはない。
制度の趣旨に加え、こうした点を丁寧に説明し、受検への理解を求める必要がある。
レオパレス21は当初2週間とした実施期間を10日ほど延長。
「プライバシー厳守」なども周知し、受検率は85%に向上した。
約460人は「高ストレス」と判定され、20人が医師と面談。その結果、8人は部署を異動してもらった。
「休職に至らないよう一定の対処ができた。
どの部署で過重労働やコミュニケーション不足があるのかも洗い出せた」(寺嶋氏)
結果を生かし、こうした配置転換や休職、管理職研修などをどう行うかも課題だ。
ARMの神谷学常務は「『どう対応すればいいか分からない』との相談は多い」と打ち明ける。
メンヘル対策に不慣れで戸惑う企業は少なくないようだ。
JR系の鉄道情報システム(東京・渋谷)はストレスチェック制度に先立ち、
2011年から毎年、社員約600人に検査をしてきた。稲垣隆之人事課長は「10人ほどいた休職者が2~3人に減り、
多くは1~3カ月で復帰できている。検査などを踏まえ、症状が軽いうちに対処できているためでは」と話す。
検査を積み重ねれば、こうした一定の効果がみられるかもしれない。
制度に詳しい産業医の深沢健二氏は「すぐにはうつ病などは減らないかもしれない。
ただ従業員がSOSのサインを出すにはいい機会で、前向きにとらえて受検してみては」と話す。

■労災認定 10年で3.7倍に
ストレスチェックの導入は、自殺者数の多さや精神疾患による労災認定の増加を受けてのことだ。
年間の自殺者は1998年から14年間、3万人超えが続き社会問題に。
2015年まで6年連続で減ったが、同年でも2万4千人に及ぶ。
精神疾患による労災申請は15年度で1515件と10年前の2.3倍。認定件数は472件で同3.7倍に増えた。
これらを背景に、政府は職場のストレス緩和やメンタルヘルス対策を重点的に行う方針を決め、
10年から制度導入の検討を開始。昨年12月の制度施行につながった。

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ストレスチェック広報

2016年09月28日 | 情報

きょうのブログは、小生の戯言です。従って、読み飛ばしていただいて結構です。

9月14日の全国紙に、ストレスチェックの実施についての広報記事が掲載されました。
さらに、ラジオ広報も実施しています。
双方ともに、11月末までにストレスチェックの実施することを促す内容になっています。
ところで、みなさまの企業・事業場では、ストレスチェックの進捗状況はどのようになっているでしょうか?

施行された法令の遵守を、マスコミを利用して広報することは、とても珍しい現象です。
滅多にお目にかかることはないでしょう。
広報すること自体は、決して悪いことではないのですが、
なぜ、多額の費用(多分、億単位)をかけて、そこまで広報しなければならないのか、疑問を感じます。
法令では、従業員50人未満の事業場では、ストレスチェックの実施は努力義務となっています。
小生は、従来より、一般論として努力義務は、「実施しなければならない」と主張してきました。
しかし、ストレスチェックに関しては、従業員50人未満の事業場におけるストレスチェックの実施を勧めていません。
なぜか?
①ストレスチェックの実施には、多くの費用、時間、併せて労力を必要とする。
②そこまでやっても、良好な結果に結びつくかどうか、分からない。
③小規模の企業では、個人情報管理の徹底ができるかどうか、分からない。
④厚労省が推奨するような、ストレスチェックが1次予防になるという科学的根拠(エビデンス)がない。
⑤実施したことにより、無用なトラブルが発生してしまう危険性がある。

さて、原則としては、法律・法令を知らないほうが悪い、というのが一般論です。
もし、知らしめないほうが悪いということであれば、全ての法令を同様な手段で広報しなければなりません。
そのようなことになったら、新聞は政府広報紙になってしまいます。
小生が確認している限りでは、ストレスチェックをたとえ11月末までに実施しなくとも、
当局がいきなり安衛法違反を追求することはないということになっています。
当然ですよね。施行後の1年目、2年目は法令を周知させることが第一義ですですから。

もうひとつ、疑問があります。スペースの約3分の1を割いているのが、ストレスチェック助成金です。
しかも、大きく「ストレスチェック助成金」と表示しています。
ストレスチェック助成金は、従業員50人未満の事業場のみが対象ですが、その記述がありません。
待ってください。ありました。反対側のほうに、アンダーラインを引いてはいますが、助成金の対象は、
「従業員50人未満の事業場なら、助成金を受けることができます。」と小さく表示しています。

ここまでくると、皆さんも感じているでしょうが、新聞広告を掲載する狙いは、
「あっ、助成金の原資が余っているから、助成金の消化促進」だなと。
だから、厚労省ではなく、厚労省より助成金の委託を受けている独法が、広告主になっているのですね。
しかし、独法の活動費用は、確か全国の企業と労働者が拠出する雇用保険料の一部です。
費用が余るなら、余ったで翌年度に返却するばよいことで、無理して消化する必要性は、全くありません。
閑話休題。

みなさんの企業・事業場では、実施したストレスチェックの運営方法や結果について、反省をしていますか?
なにしろ、これから毎年実施しなければならないのですし、しかも費用は、全額自社負担です。
費用が無駄にならないように、対策をしっかりと講じてください。

因みに、東京都社労士会に対し、日時は不明ですが、東京労働局労働基準部健康課長より、
平成27年12月1日より施行され、事業者は平成28年11月30日までに実施する必要がある「ストレスチェック」について、
周知依頼がありました。小生もストレスチェックの実施徹底に向けて、尽力します。



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26.27日は休載です

2016年09月23日 | 情報

26.27日は、出張のため休載します。再開は、28日(水)からです。
よろしくお願いします。

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社員の健康 IT指南

2016年09月23日 | 情報

大企業は、健康経営に向けて、着々と前進していますね。
中小の企業も、これら先進企業の情報を収集して、いいとこどりを心がけましょう。

社員の健康 IT指南
データ統合、改善促す 富士フイルムなど、人材生かす環境整備
2016/9/13 日本経済新聞 

IT(情報技術)を活用した健康経営に力を入れる企業が増えている。
富士フイルムホールディングス(HD)は社員の健康診断の結果や勤怠情報などを一元管理して、
きめ細かい健康管理につなげる。
大和証券グループ本社は健康情報をインターネットで学習するとポイントを与え、給与にも反映する。
健康保険組合の財政悪化や人材不足を見据え、社員が健康で長く働けるようにする。

http://www.nikkei.com/news/image-article/?R_FLG=0&ad=DSKKZO0717446013092016MM0000&ng=DGKKASDZ12IJU_T10C16A9MM0000&z=20160913

富士フイルムHDは、従来は別々に管理していた健康保険組合や産業医、会社の人事部などが持つデータを
グループ全体で統合する。
健康診断やストレスチェックの結果、生活習慣病での受診歴、勤怠情報のほか、
これまでの上司が誰だったかといった職場情報まで合わせて分析できるようになる。
これにより勤務体系や特定の事業所・上司などで生活習慣病が多いといったことも分かる。
問題が見つかれば改善を促し、生活習慣病の予防などにつなげるほか、産業医による健康指導や勤務体系の改善に役立てる。
このほど富士フイルムと富士ゼロックスの2社で導入が完了した。
2017年度末までには国内グループ会社の社員全員、4万7000人が利用する計画だ。
事業所ごとにメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)に該当する社員の比率を出すなど、
健康度のランキングを作ることも検討している。
富士フイルムHDでは自社の中で健康や医療データの分析・活用の専門家を育成し、新たなビジネスにも生かす考えだ。
伊藤忠商事もITを活用する。16年度中に肥満気味の若手・中堅社員にウエアラブル端末を
配布し血圧や心拍数、歩行数、睡眠時間などを自動測定できるようにする。
さらに端末と連動した「マイページ」を社内サイト内に開設し情報を管理できるシステムも開発中だ。
テルモは社員対象のウオーキング大会を実施。
楽しみながら体質改善できるよう毎日歩いた歩数をパソコンに記録すると画面上で果物が育つゲームを取り入れた。
45歳以上の社員が健康増進に取り組むとポイントを付与し、給与に反映していた大和証券グループ本社は、
15年末にメンタルヘルスに関する情報などをインターネットで学習するとポイントを与える制度を導入した。
ITを生かした健康経営に企業の関心が高まっている。
15年12月には従業員の健康増進を推進する団体「ウェルネス経営協議会」が発足した。
ビッグデータや人工知能(AI)などの活用をうたう。
ANAホールディングスやファミリーマートなどが発起人企業として名を連ねる。
企業が社員の健康増進を推し進めるのは経営に直結する課題との認識が広まっているためだ。
病気の社員が増えると保険給付費の支出が膨らみ健保財政を圧迫する。
少子高齢化で労働力人口が減少に向かう中、社員が長く健康で働ける環境をつくることは企業の競争力を左右することになる。

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