中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

(プラス情報)職種限定の配転認めず

2024年04月27日 | 情報
小職、浅学菲才を改めて認識した報道でした。
「職種限定の配転認めず」は、当然のことと理解していましたので。

最高裁、職種限定の配転認めず 初判断「労使合意では命令不可」
4/26(金) 共同

技術職として長年勤務した従業員を事務職に配置転換することの妥当性が争われた損害賠償請求訴訟の上告審判決で、
最高裁第2小法廷(草野耕一裁判長)は26日、職種を限定する労使合意がある場合、
使用者側が一方的に配転を命じることはできないとの初判断を示した
配転命令を有効とした二審大阪高裁判決を破棄し、審理を差し戻した。
二審判決によると、原告の男性は滋賀県社会福祉協議会と労働契約を結び、福祉用具センターで主任技師として勤務。
2019年に総務課への配転を命じられた。
男性側は「書面での明示はないものの、技術者として就労させる旨の職種限定の合意が事実上あった」と主張していた。


職種限定の配置転換訴訟 「同意なしで命令できない」最高裁が初判断
毎日新聞 2024/4/26

勤務する職種を限定する労使合意があった場合に、雇用者が労働者を配置転換できるかが争われた訴訟の上告審判決で、
最高裁第2小法廷(草野耕一裁判長)は26日、「労働者の同意なしに、配置転換は命令できない」との初判断を示した。
原告の労働者側の主張を退けた2審・大阪高裁判決(2022年11月)を破棄し、審理を高裁に差し戻した。裁判官4人全員一致の意見。
1、2審判決によると、原告の男性は01年から滋賀県福祉用具センターに勤務し、主任技師として福祉用具の製作や改造を担当。
ところが19年に事前の打診なく、総務課への異動を命じられ、違法な配置転換だとして損害賠償を求める訴訟を起こした。
1審・京都地裁判決(22年4月)は、男性とセンター側の間に技術者として職種を限定して就労させる暗黙の合意があったと言及。
ただし、センター側では用具の製作・改造の仕事の需要が減少しており、
センター側は男性の解雇を避けるために配置転換を命令したとして、違法性はないと判断した。2審も支持した。
これに対して小法廷は、男性から同意を得ていない以上、センター側に配置転換を命令する権限はないと指摘。
その上で、センター側に賠償責任が生じるか、さらに審理を尽くすべきだとした。
男性の代理人弁護士は判決後に記者会見し、「誇りを持って長くやってきた専門職から、全く別の仕事を命じられることに歯止めがかかる」と評価した。
早稲田大の水町勇一郎教授(労働法)は「妥当な判決だ。従業員の職務を明確に定めた『ジョブ型雇用』が日本でも増える中、
同種のトラブルは今後多くなることが予想され、影響は大きい。雇用者は労働者の意思を丁寧に確認していく必要がある」と話した。
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27日から5月6日まで、長期休載します

2024年04月26日 | 情報
毎年ゴールデンウィーク中は、当ブログを休載してきましたが、
本年は27日から5月6日まで、長期休載します。

関与先に、計画的に有給休暇の100%取得を推奨してきたこともあり、
小職自らが実践しないと、「紺屋の白袴」 になりかねませんので、
やむを得ず、長期休暇に入らせていただきます。

再開は5月7日(火)です。
よろしくお願いします。
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健康経営を目指すと

2024年04月26日 | 情報
〇当ブログにおいて、最近の健康経営志向は、本来の主旨から逸脱していると、解説しました。
さりとて、健康経営の本来の趣旨に沿って推進することは、メリットがたくさんあり良いことなのですが、
中小規模の企業にとっては、やはり高いハードルでもあります。

〇中小規模の企業ではなかなか取り組みができない、スタートしない現象が多いようです。
理由は、経営者の理解がない、推進に必要な人材とノウハウがない、等があげられます。

〇そこで、今回は、いろいろなインセンティブを紹介し、からめ手から「その気」を引き出してみることにします。
なお、繰り返して申し上げますが、メンタルヘルス対策から検討すると、
「健康経営」は必要条件ですが、十分条件ではないことをご理解ください。

〇国や公共団体などによるインセンティブ措置の例

補助対象
補助内容
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
革新的製品・サービスの開発または生産プロセス等の改善に必要な設備投資等を支援
補助率1/2もしくは2/3、補助上限額2250万円*
 *従業員数・申請枠・類型により異なる
IT導入補助金
生産性向上に資するITツール(ソフトウェア・サービス等)の導入を支援
補助率1/2、補助上限額450万円
事業継承・引継ぎ補助金
事業継承を契機とした経営革新的な取り組みや、専門家を活用した事業の引継ぎを支援
補助率1/2もしくは2/3、補助上限額600万円*
 *経営革新事業は一定の賃上げ要件を満たすと最大800万円
Go-tec補助金
中小企業等がものづくり基盤技術およびサービスの高度化に向けて、大学・公設試と連携して行う研究開発を最大3年間支援
中小企業等は補助率2/3以内
通常枠:最大9750万円
 出資獲得枠:3年間合計3億円以下
事業再構築補助金
新市場進出、事業・業種転換、国内回帰等、事業再構築を行う事業者を支援
中小企業は補助率1/2~3/4、補助上限額500万円~5億円
 ※従業員数・申請枠により異なる
出典:経済産業省ヘルスケア産業課 提供資料より作成

〇そのほかに、自治体や金融機関などでも、健康経営優良法人や健康経営に取り組む企業向けに、インセンティブを付与する動きが広まっています。
例えば、自治体が行う公共工事や入札審査での加点評価、融資優遇や保証料の減額、奨励金や補助金、銀行などでは融資優遇や保証料の減額・免除、
保険会社などでは一部の保険商品に健康経営優良法人割引や割増配当率を適用していることもあります。

(参照)ポータルサイト「ACTION!健康経営」の「地域の取り組み」のページ


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「5月病」ならぬ「4月病」に注意

2024年04月25日 | 情報
「5月病」ならぬ「4月病」に注意 症状の悪化で「6月病」も
毎日新聞 2024/4/21

新年度が始まり、新しい環境で張り切る一方で、気が焦って疲れたり、よく眠れなかったりしてはいないだろうか。
大型連休明けに体調不良になる「5月病」はよく知られるが、実は「4月病」とも呼ばれる特有の症状があるという。

頭痛、めまい、倦怠感……
会社勤めの人が多く訪れる東京都中央区の人形町メンタルクリニック。
4月は、体の機能を保つ自律神経の乱れから、頭痛やめまい、倦怠(けんたい)感や不眠を訴える患者が多い。
勝久寿院長は、新年度に伴う職場や家庭などの環境の変化や、寒暖差に対応するため、自律神経に過度の負担がかかることが影響しているとする。
春は気分が高まりやすく、知らずにオーバーワークになってしまうことも要因の一つだという。
医薬品メーカー「ツムラ」による「働くことと不調に関する意識調査」では、
社会人歴3~5年の人の約6割が「1年のうちでも4月は不調を我慢しがち」と回答している。
4月に抱えたストレスや疲れが大型連休明けに表面化して「5月病」となり、「やる気がでない」などの適応障害になってしまうという。

放置すると「6月病」のおそれ
4月、5月は何とか乗り切れたものの、6月に心身の調子を崩すケースもある。「6月病」とも言われ「うつ病」に分類される。
勝院長は、ストレスをバネにつるされた「重り」に例えて、こう説明する。
「急性疾患の適応障害は、重りを取り除けばバネが戻ります。
しかし、うつ病はバネが伸びきってしまい、重りを除いてもすぐ元に戻らない。
ストレスから離れても調子が戻らなければ、慢性疾患のうつ病への移行を疑ったほうがいいでしょう」
特に注意すべきは、中高年の管理職だ。
休んだり、人に任せたりしにくく、数カ月間ストレスを抱え込んだ結果、症状が悪化してしまう。

4月からの対処が重要
「単なる体調不良」と安易に判断し、放っておくと症状が重くなるおそれがある。
だからこそ、4月からストレスの解消を意識することが大事だ。
入浴やアロマなど自律神経を整えるリラクセーションや、軽い運動も効果的だ。
予定を入れすぎず、睡眠をしっかりとって休息する。
アルコールに頼るのは逆効果で、規則正しい生活を心がけるのが原則だ。
勝院長は「職場など周囲の注意やサポート」も重要だとする。
年度始まりの繁忙期で本人は仕事に熱中し、体の変化にうとくなる。
4月病は広く認知されていないため、周囲は精力的に仕事をする様子を問題視しにくい。
「焦ってせかせかしている、予定が多くて仕事が回っていない。
そんな変化に気づいた場合は、ブレーキをかけてあげることが大事です」
頭痛、めまい、胃腸の不調などの症状で内科を受診しても所見が見当たらない場合は、メンタルの不調が疑われる。
仕事が回らず、不安が増す悪循環が起こってしまった際も、専門家への相談が好ましい。
勝院長は「適応障害は、怠けているように思われがちだが、職場に行こうとすると吐き気や動悸(どうき)が止まらなくなる。
そうなった時は専門医に相談し、周りも受診を勧めてほしい」とアドバイスする。


◎入社・入学・異動 新しい環境、3カ月あれば適応できる
元気の処方箋(神田東クリニック院長 高野知樹さん)
2024年4月15日 日経

若葉に包まれた樹々が芽吹く4月。新鮮な気持ちやときめきを感じている人も多いのではないだろうか。
同時に、入学や入社、異動、転居といった環境変化に適応するために、心身のエネルギーを多く費やす時期でもある。
精神疾患の中に「適応障害」というものがある。
環境の変化で不安感などの精神的な症状や学校、職場に行きづらいなど行動面の異変が生じ、社会生活に支障が出る状態だ。
うつ病などの診断がつくほどの重症ではない...(以下、省略)


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休職中の女性を解雇

2024年04月24日 | 情報
ことば尻をとらえて云うと、記者に対して申し訳ないので、主旨を捉えて申し上げると、会社の対応は論外です。びっくりするような事案です。
さらに、一言付け加えると、本件は労災認定されていましたので問題が顕在化しましたが、多くは労災認定に至るまでもなく、闇から闇へが実情ですね。
実務的には、社労士や弁護士との顧問契約をお勧めします。
人あっての企業組織ですから。

職場のセクハラで労災認定、休職中の女性を解雇 福岡の会社が労基法違反か 弁護士「氷山の一角」
4/17(水) 西日本新聞

職場のセクハラによって精神障害を患い、労災認定された福岡市の20代女性が、休職中に解雇されたことが分かった。
労働基準法は仕事が原因で体調を崩した休職者の解雇を禁じている。
女性の代理人弁護士が会社側に法令違反を指摘したところ、4日付で解雇の撤回と自主退職による解決金支給を通知してきた。
弁護士は復職への環境整備をせずに退社を迫る対応を批判した上で「今回の事例は氷山の一角。
周りの目を気にして労災申請すら控えるケースは多い」と強調する。
関係者によると、女性は2021年春の入社後、指導係の男性社員に社内や宴席で体を密着され、頭や頰を触られるようになった。
耳元で「彼とはどこまでやったの」とささやかれるなど、断続的に行為は続いたという。
22年秋にうつ病と診断され、23年1月から休職している。
今年1月に労災認定され、その約2週間後に解雇された。
女性は「セクハラと解雇と、二重に被害を受けた」と話している。
登記簿などによると、同社は福岡市に本社を置き、女性の出勤当時の社員数は数人だった。
解雇について女性側に「心身の不調で業務に耐えられず、回復が見込まれない場合には可能だと就業規則にある」などと説明した。
男性社員はセクハラの延長で、女性の尻をたたいたとして暴行罪で略式起訴され、罰金の略式命令を受けている。
労基法は、経営者などに6月以下の懲役か30万円以下の罰金を科すよう定めている。
代理人弁護士からの指摘を受け、会社側は解雇の撤回と、自主退職すれば解決金を支払うと文書で回答した。
弁護士は「社員が健康で安全に仕事をする配慮を怠った上、退職を迫るのは悪質」と話す。
本紙は同社に取材を申し入れたが、16日までに回答はなかった。
セクハラによる精神障害の労災認定は13~16年度がいずれも20件台で、21、22両年度は60件台に増えている。
弁護士は「休職中の不当解雇は他にもあるはずだ。労災申請を控えて泣き寝入りし、休職期間満了で解雇される例も多い」と述べた。

中小企業は法令順守の意識向上を
 熊本大の中内哲教授(労働法)の話 
中小企業で法務担当を置くケースはそう多くはなく、コンプライアンス(法令順守)意識を高める努力が欠かせない。
弁護士や社会保険労務士とも対話して労働関連法への理解を深める必要がある。
今回のように労災認定された場合、休職期間満了に伴う解雇・退職ではなく、
例えば取引先やグループ企業での就労を提案するなど雇用継続に向けた配慮を模索すべきではないか。
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