中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

医師の診断書 料金に約10倍の差

2013年02月28日 | 情報
MH問題では、診断書の役割は重要です。
診断書を会社に提出するのは、休職者の責任ですから、費用負担も原則、休職者になります。
しかし、診断書には健康保険が適用になりませんので、療養期間が長引くと、
診断書の費用負担も、ばかになりません。

NHK 2月24日放送分から

保険の請求などに必要な医師の診断書の料金は、病院によって1000円から1万円余りと、
およそ10倍の格差があるという調査結果がまとまりました。

この調査は、民間の調査会社「医療経営情報研究所」が、去年10月、全国の病院を対象に行い、およそ400か所から回答を得ました。
それによりますと、保険会社や勤務先などに提出する診断書の作成、発行にかかる料金は、
最も安い病院では1000円、最も高い病院は1万500円で、およそ10倍の差がありました。
また、地域によっても差があり、最も高かったのは四国で平均4988円、次いで東北が平均4760円、
最も安かったのは近畿の平均3176円でした。
調査した研究所によりますと、医師の診断書は病院が料金を自由に設定できるため、
患者からは「ほかの病院と比べて診断書の料金が高い」などの、病院に対して苦情も寄せられているということです。
医療経営情報研究所の田中利男さんは、「患者に分かりやすく病院内で掲示したり、ホームページで料金を示したりするほか、
支払いの際にも診断書の料金を明示して、理解してもらうことが重要だ」と話しています。
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睡眠不足で不安・抑うつが強まる神経基盤を解明

2013年02月27日 | 情報
国立精神・神経医療研究センター・三島和夫部長らの研究グループが、 '13.2.14に
睡眠不足で不安・抑うつが強まる神経基盤を解明したと公表しました。

以下、国立精神・神経医療研究センターのHPより転載しました。
http://www.ncnp.go.jp/press/press_release130214.html

■ 本成果のポイント
ウィークデイに相当するわずか5日間の睡眠不足により、
ネガティブな情動刺激(他人の恐怖表情)に対する左扁桃体*1の活動が亢進することが分かりました。
一方、ポジティブな情動刺激(幸せ表情)に対する扁桃体の活動性は変化しませんでした。
ネガティブな刺激に対する扁桃体の過剰反応は、左扁桃体-腹側前帯状皮質*2間の機能的結合が減弱していることに由来していました。
睡眠不足が強いほど左扁桃体-腹側前帯状皮質間の機能的結合はより減弱し、
機能的結合が弱くなるほど不安・抑うつ傾向がより強まることが分かりました。
*1:扁桃体は情動と記憶を司る神経核です。*2:前帯状皮質は扁桃体の活動を抑える役割をします。

国立精神・神経医療研究センター・三島和夫部長、元村祐貴研究員らの研究グループが、
睡眠不足時に不安や抑うつが生じやすくなる神経基盤を明らかにしました。
睡眠不足は眠気を強め、精神運動機能(作業能力)を低下させることは広く知られています。
一方、睡眠不足が不安感や混乱、抑うつなど情動的不安定を引き起こすことも明らかになりつつありますが、
その神経メカニズムについては不明でした。

本研究では、14名の健康成人男性に5日間の充足睡眠セッション (平均睡眠時間:8時間5分)
および5日間の睡眠不足セッション(同4時間36分)の両方に参加してもらい、
睡眠不足が睡眠構造、不安や抑うつの強さ、さまざまな感情を表す表情写真を見た際の脳活動(機能的MRIで測定)に及ぼす影響と
そのメカニズムを検討しました。
睡眠不足時には恐怖表情を見た時の左扁桃体の活動が有意に増大しました。一方、幸せ表情ではそのような変化は生じませんでした。
睡眠不足度の指標である徐波睡眠比率(全睡眠中に占める深睡眠の比率)
および徐波(δ波)パワーが高まるのに比例して左扁桃体-腹側前帯状皮質間の機能的結合が有意に減弱していました。
また、機能的結合が減弱するほど左扁桃体の活動が亢進し、不安と混乱が有意に強まり、また抑うつが強まる傾向がみられました。
 
本研究の結果、日常生活で経験し得る程度の睡眠不足により、
扁桃体の過活動を腹側前帯状皮質が抑止するフィードバック機能が低下することが明らかになりました。
そのため睡眠不足時に不快な情動刺激(感情ストレス)を受けると熟眠時よりも扁桃体の活動が亢進し、
不安や抑うつが高じやすくなるものと推定されました。
このような情動制御系の機能変化は睡眠不足時に情動不安定が生じやすくなる神経基盤の一部を構成していると考えられます。
http://www.ncnp.go.jp/press/press_release130214.html
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労組を活用しませんか(続編)

2013年02月26日 | 情報
1月21日の当ブログで「労組を活用しませんか」を掲載しました。
その後、去る2月9日に開催された「産業保健法務研究研修センター」の設立総会が開催されましたが、
発起人である近畿大学法学部の三柴教授は、基調講演において
メンタルヘルス対策における、労組の『不甲斐なさ』を嘆いておられました。
小生と問題意識をまったく同じくするものと、感激いたしました。

1月21日のブログでは、組合関係者のみなさまの奮起を促しましたが、
人事労務部門のみなさまには、企業のMH対策に、もっと労組の力を生かすことを考えていただきたいと思います。
言うまでもありませんが、労組の役員のみなさんは、従来より労使の協議会や、衛生委員会の委員でもあるはずですから、
当然にMH問題に対する問題意識は十分に持っていると考えてよいでしょう。

人事・労務部門のみなさんには、労組というと「社内の敵対勢力」などという思い込みがあるようです。
会社側と労組側が対立する構図は過去のものです。
MH問題は労使が一体となって取り組まなければならない大きな経営課題です。
もちろん、労組側も何もしていないわけではありません。
例えば、自動車総連のHPを見ると、MH問題に真剣に取り組んでいる様子もうかがえます。
http://www.jaw.or.jp/anzen/index.html
以下に、1月21日のブログを再掲載します。

周知のとおり、中小企業の中には、MH対策がなかなか促進できない問題があります。
経営者や経営層が、その重要性になかなか気が付かないのですね。
気が付いていただければ対策は大幅に前進するでしょう。
一方で、企業の中には、企業内組合、または従業員組合があります。
従業員のみなさんは、意外と気が付いていなようですが、この組合が大きな力を持っているのは事実です。
中には、かたちだけの組合もありますが。

組合の現状を推測すると、現在のような不況下では、賃金問題はおろか、雇用の確保に関心が集中してしまい、
MH対策までにはまったく関心がいかないのではと認識していますが、
労働組合・従業員組合の存在理由、または組織の目標・目的を考えれば
当然にMH対策に大きな関心をもって、然るべきでしょう。

しかし、組合の幹部は、歴史的に賃金問題には深い見識を持っていますが、
MH問題については、「MH対策って何?」くらいのレベルではないかと想像してしまいます。
組合関係者のみなさま、間違っていましたら謝罪いたします。
しかし、MH問題に関して、残念ながら組合が「表舞台」に登場してくるような現象を目にしていません。
組合関係者のみなさま、ぜひMH対策にも関心を持ってください。

必要であれば、橋本社会保険労務士事務所がお手伝いします。
メールアドレスは、s-hashi@ya2.so-net.ne.jpです。
または、拙著『中小企業の「うつ病」対策』をお読みください。
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ポジティブ・オフ休暇制度

2013年02月25日 | 情報
ポジティブ・オフ休暇制度とは、なにか?
以下、観光庁HPより転載です。
http://www.mlit.go.jp/kankocho/page02_000023.html

1.ポジティブ・オフ運動とは

「ポジティブ・オフ」運動とは、休暇を取得して外出や旅行を楽しむことを積極的に促進し、
休暇(オフ)を前向き(ポジティブ)にとらえて楽しもう、という運動です。
今夏の電力需給対策※を契機としつつも、長期的には、休暇を楽しむライフスタイルや
ワーク・ライフ・バランスの実現などの「ライフスタイル・イノベーション」につなげていくもので、
内閣府、厚生労働省、経済産業省と共同して提唱・推進していきます。
 「ポジティブ・オフ」運動は、その趣旨に賛同する企業・団体により実施されます。
7月15日現在、別紙に掲載した51の企業・団体が賛同しています。
賛同企業・団体は今後も拡大する予定で、また、新たな賛同申請も随時受付中です。
賛同企業・団体による「ポジティブ・オフ」の取組で優れたものなどを、
観光庁ウェブサイト内の「ポジティブ・オフ」のページにて紹介しています。

2.ポジティブ・オフ運動の背景と趣旨
(1)背景
今夏は、東日本大震災の影響により、東北電力・東京電力管内では、原則として、
昨夏のピーク電力需要に対して15%の電力使用削減が求められています。
このため、企業部門においても様々な節電策がとられていますが、その一つとして、休業・休暇の長期化・分散化があります。
同時に、家庭部門における節電の取組も必要であり、「夏期の電力需給対策について」では、
旅行等の外出は、行先を問わず、家庭部門に確実な節電効果をもたらすものとして、推奨されています。
 一方、地域に目を向けると、東日本大震災の直接的被害のほかに、風評被害や自粛等により、被災地はもとより、
全国各地において、観光が大きなダメージを受けており、地域経済の活性化に大きな影響を与えています。
 これらを背景として、節電のための取組と、外出/旅行の促進による地域経済の活性化の両立を目指して、
今夏、「ポジティブ・オフ」運動を開始するものです。

(2)趣旨
「ポジティブ・オフ」運動の開始の背景は上述の通りですが、
今夏の取組は、より長期の目的に向けた、一つの契機と位置付けています。
「ポジティブ・オフ」運動の趣旨は、休暇を取得して外出や旅行を楽しむことを積極的に促進し、
「休暇(オフ)」を「前向き(ポジティブ)」にとらえて楽しもう、というものです。
今夏は、純粋な自発的な休暇というよりは、ある意味で、「必要に迫られて休む」という側面がないわけではありません。
しかし、せっかくの「休み」の機会であり、また例年より長期化する傾向もありますので、
これを前向きにとらえて、より充実した、いつもとは違う休みを経験し、
「休む」とはどういうことか、をゆっくりと考える契機とすることで、将来に向けて、
休暇を楽しむライフスタイルやワーク・ライフ・バランスの実現などの「ライフスタイル・イノベーション」に
つなげていくことを目指しています。

3.ポジティブ・オフ運動の実施概要
(1)主体
提唱:観光庁
共同提唱:内閣府、厚生労働省、経済産業省
取組実施:上記4府省庁、各「ポジティブ・オフ」運動賛同企業・団体
(2)「ポジティブ・オフ」運動賛同企業・団体による取組内容
「ポジティブ・オフ」運動賛同企業・団体は、以下に掲げる取組を実施します。
このうち、[1]~[4]のうちいずれかを必ず実施することとしています。
[1]既存の休業・休暇の制度の範囲内において、社内メール等の方法を活用し、従業員に外出/旅行の実施を啓発すること。
[2] 既存の休業・休暇の制度の範囲内において、福利厚生としての費用負担等を行い、従業員の外出/旅行をサポートすること。
[3]休業・休暇の制度を変更する、又は新たな休業・休暇を設定するとともに、
社内メール等の方法を活用し、従業員に外出/旅行の実施を啓発すること。
[4]休業・休暇の制度を変更する、又は新たな休業・休暇を設定し、福利厚生としての費用負担等を行い、
従業員の外出/旅行をサポートすること。
[5]外出/旅行促進運動に合わせ、自社商品/サービスをPRすること。
[6]その他、「ポジティブ・オフ」運動の趣旨に合致するもので、各企業・団体独自の取組を実施すること。
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有給休暇の取得率(事例編)

2013年02月22日 | 情報
企業・組織の人事労務担当のみなさんは、他社の事例に高い関心をもっていることを承知しています。

日立グループで、ソフトウェア・サービス事業 ・情報処理機器販売事業を展開している
(株)日立ソリューションズ社のホームページに、「ナビパラ.コム中堅中小企業向け経営課題解決支援サイト」があります。
当サイトにて、自社のメンタルヘルス不調者を出さない職場作りが紹介されています。
http://www.navipara.com/management/m002.html#03

また、当社では、ポジティブ・オフ休暇制度を導入しています。
以下は、労政時報のHPより転載です。
http://www.rosei.jp/jinjour/article.php?entry_no=58121
会社概要:2010年10月に日立ソフトウェアエンジニアリングと日立システムアンドサービスの合併により発足。
事業分野別のカンパニー制を展開する日立グループの「情報・通信システム社」の中核企業として幅広くソリューションを提供。
http://www.hitachi-solutions.co.jp/
本社:品川区東品川4-12-7
設立:1970年9月
従業員数:1万389人(2012年9月末現在)
平均年齢:38.9歳

●“ポジティブな休み方”を広げる取り組みをスタート
今日、企業が設けている休暇制度を見渡してみると、その種類や名称は実に多彩だ。
リフレッシュ休暇やメモリアル休暇、ボランティア休暇、自己啓発休暇…など。社会の変化と社員のニーズに対応するために、
あるいは企業が社員のさまざまな活動を積極的に支援する施策の一環として、休暇制度の種類や仕組みは、年を追って多様化してきた。
こうした変化は、おそらく多くのビジネスパーソンに肯定的に捉えられているはず。
しかしその一方で「休暇に何らかの名目が付いていないと休みが取りづらい」という変わらない現実を映しているようにも思える。
会社がお墨付きで制度化した「○○休暇」なら、上司の視線も気にならず、職場の同僚にも気兼ねなく申請できる。
でも普段の年休は『何で休むの?』と聞かれるわけではないけれど、皆が忙しく働いている職場ではとても言い出しにくい…。
ワーク・ライフ・バランスの推進が声高に叫ばれる今日でも、こうした心理的なハードルを越えることは、なかなか容易ではない様子だ。
そうした中で、日立グループの中核的なシステムインテグレーション企業である日立ソリューションズは、
2012年10月から新しい休暇制度の取り組みをスタートした。その名称は「ポジティブ・オフ休暇」。
細かなルールや休みを取る名目にこだわらず、“あなたがポジティブに休暇を使うのならば、
それがポジティブ・オフ”というスタンスで休み方の幅を広げ、生活の充実に年休をもっと生かしていこうという取り組みだ。
こうした会社からの呼び掛けにより、社員のオフがどのように変わりつつあるのか、その様子を追ってみた。

●より自律的な働き方を目指す
同社では毎年10~11月の2カ月間を「時短推進強化月間」と定め、労使一体となって残業・休日出勤の抑制、
長時間残業者の業務改善、健康面のフォローアップなど全社的な取り組みを展開している。
今回紹介するポジティブ・オフ休暇は、2012年度の強化月間の展開に当たり、
より自律的でメリハリある働き方の実現を目指す施策の一つとしてラインアップされたものだ。
これまで同社は、プロジェクト業務の進行トラブルや、特定個人への業務の偏りなどによる長時間残業の発生、
あるいは月40~50時間水準の恒常的な残業などIT企業特有の問題に対し、経営トップの強力なリーダーシップの下で、
さまざまな対応策を講じてきた。特に、強化月間の取り組みでは、残業ゼロ・休日出勤ゼロ日の設定、
役員や労使担当者による職場巡視の実施、執行役員会での長時間残業者報告、
長時間残業が一定レベルを超えた者に対する警告メールの発信など、いわばトップダウンで残業規制のキャップ(上限)をはめ込み、
是正を図る手だてが中心になっていたという。
こうした取り組みは、旧2社の合併以前から行われてきたものだが、その流れをくみながらも、
2012年度の強化月間実施に当たって同社は、新たな狙いを構えて施策を組み立てることとした。
その狙いとは、働きやすい職場づくりに向けた「自律的なタイムマネジメント意識」の醸成を図ることにあった。

●トップダウンから職場主導へ
同社労政部の鵜原靖夫氏(労政グループ 部長代理)は次のように語る。
「長時間残業者のケアに関しては、やはり健康が第一という視点から、
2012年度もトップダウンによるアラーム発信やフォローという施策を継続し、さらに強化して取り組みました。
一方、全社の雰囲気づくりに関する部分については、トップダウンから職場主導へ、
自主自律というキーワードが実感できる取り組みへ改めることにしたのです」
「職場によって業務内容は当然異なりますし、仕事ごとの繁閑の違いもあります。
そんな中で一律に残業は何時間まで、とキャップをはめても実態にはなかなかマッチしません。
働き方の見直しや生産性の向上は、本来は個人やチーム単位で意識して行うもの。
これまでの取り組みでは、トップダウンでやらされている2カ月の強化月間中はそれなりに成果が上がるものの、
期間が過ぎると元に戻ってしまう――といった問題がありました。
そこで全社に向けては、画一的に時短を強化するのではなく、主体的な取り組みを通じてより働きやすい職場づくりが意識され、
労働時間を自律的にコントロールしている実感につながるような施策にポイントを置いて組み立てることにしたわけです」
こうした考えに基づいて、2012年度の推進施策には[図表1]に見るような六つの具体策が挙げられ、それぞれ実行に移された。
これまで、全社一律のルールで実施していた残業ゼロ日の設定と職場巡視は、
それぞれ職場の実勢に合わせて自主的に決めたルールで行うよう改め、実施内容を全社で共有することとした。
また、「効率化に役立つような情報を提供してほしい」という職場からの要望に応え、
イントラネット上に設けた「時短ポータル」サイトを通じて、タイムマネジメントに活用できるWEBツールの提供や、
プロジェクトの成功事例に見るタイムマネジメントのナレッジ共有なども行われている。
こうした取り組みと併せて、各人がより計画的に休暇を活用し、
メリハリある働き方を実現していく狙いから取り入れられたのがポジティブ・オフ休暇である。

●従来構えていた「プロジェクト休暇」などの年休制度をポジティブ・オフ休暇に集約
ポジティブ・オフ休暇は、特別休暇として新設したものではなく、以前から設けていた年休活用策を引き継ぎ、
新しい視点で社内に訴求することを狙って打ち出したものである。
ちなみに同社の年休付与日数は、新卒入社初年度は22日、2年目以降は毎年24日付与される。
このうち5日分は全社一斉の夏季休暇に充てられ、
このほか3日分は年度初めに各人が予定を決めて計画的に取得するルールが設けられている。
年休取得率は近年70%前後で推移しており、以前から休暇取得には比較的積極的な社風であるという。
こうした年休をより気兼ねなく取得できるよう、同社ではこれまで、[図表2]の表に見るような四つの年休制度を設けていた。
このうちボランティア休暇は、2年間の行使期間後に失効してしまう分の年休を、年当たり4日・最高20日まで積み立て、
特定の事由で休む際に利用できる積立年休の制度によるもの。
このほかは通常の年休の「取り方」を工夫したもので、例えば「プロジェクト休暇」は、
個々のプロジェクト進行の山と谷に合わせて、
業務が一段落したタイミングで土日の休みと接続した年休取得を推奨するというものであった。
同社はこうした従来の仕組みをまとめて、ポジティブ・オフ休暇と総称し、
社員の前向きな休暇取得をサポートしていくことを2012年9月に社内へ通達した。
このように改めた背景の一つには、まず年休活用策の利用への意識付けをより強める狙いがあった。
2010年の合併から、同社はさまざまな人事制度の統合を進めてきたが、
四つの年休制度についてはそれぞれの旧会社のみで運用していたものもあり、
合併後に「どんなときに制度が利用できるのかが分かりづらい」といった声も一部で聞かれていたという。
そこで、従来の年休制度すべてと、さらにそれ以外の目的の場合も含めて「自分が前向きな休み方と考えるものは、
『ポジティブ・オフ休暇』と捉えてください」というアピールを発信したわけである。
また、同社が2012年2月に賛同表明した、観光庁主唱の「ポジティブ・オフ」運動の考え方を社内に展開し、
休暇を前向きに活用する風土づくりにつなげていくことも制度導入の大きな狙いとされていた。
「○○休暇」という制度の名目にこだわらず、気兼ねなく休暇を利用でき、それをメリハリある働き方へつなげていく。
そうした職場風土づくりが同社にとってのこれからの一つの目標でもある。

●「ポジティブ・オフ」を宣言して休む
ポジティブ・オフ休暇の利用に関して、現在細かなルールはほとんど設けられておらず、
勤怠システム上での申請方法も通常の年休取得の場合と変わらない。
もちろん、各人に付与されている当年度の年休日数の範囲であれば利用回数の制限もなく、連続休暇として取得するなどの縛りもない。
あえて通常の年休との違いを挙げれば、「ポジティブ・オフで休みます」と宣言することのみといってよい。
「宣言の仕方は、いまのところどんな方法でもよいことにしています。
職場のメンバーに口頭やメールで『明日はポジティブ・オフで休みます』と伝える形でもOKです。
私の場合は、社内で共有しているスケジューラに表示される『年休』のサインのそばに、
『ポジティブ・オフで勉強に行っています』というふうに書き込んだりしています」(ダイバーシティ推進センタ センタ長 久永美砂氏)
宣言する際に「どんな使い方で休む」ことまで知らせる義務付けはないが、
よりオープンに制度が利用されていくことに同社では期待を寄せている。
「スケジューラで『○○さんは、この日はこんな理由でポジティブ・オフなんだね』と分かるように、
オープンに休む人がどんどん増えていけば、休暇を活用する考え方にも広がりが出てきますし、
職場の中での休みやすさも必ず高まってくると思います」(久永氏)

●「わたしのPOSITIVE OFF」をイントラネットで全社に紹介
ポジティブ・オフ休暇は各職場でどのように受け入れられたのか。
10月にスタートした強化月間中の取得実績で見ると、それ以前の四つの年休制度を合わせた利用者数が月当たり全社で
20人程度だったのに対し、ポジティブ・オフ休暇導入後の取得者数は月当たり約60人と3倍に増加している。
これまで通常の年休として取得していたものを「ポジティブ・オフ」宣言をして休む人が増えているように見受けられ、
制度の定着という意味では順調に進んでいるようだ。
こうした利用者数アップの背景には、強化月間のスタートとともに、同社が最も力を入れた制度広報の活動が功を奏している。
 「『自分でポジティブな休み方と考えるものはポジティブ・オフと捉えてほしい』と伝えても、社員にはなかなかピンときません。
そこで、『時短ポータル』のサイトに事例紹介の特設コーナーを設けて、
実際にポジティブ・オフ休暇を利用した人の具体例をなるべく数多く紹介するようにしたのです」
(ダイバーシティ推進センタ 部長代理 小嶋美代子氏) 強化月間の終了後もイントラネットに常設されている「時短ポータル」には、
「わたしのPOSITIVE OFF」と題した事例紹介コーナーがあり、現在12人のポジティブ・オフが紹介されている。
掲載されている内容は、ダイバーシティ推進センタのスタッフが直接社員に取材してまとめたもので、
①どのように休みを過ごしたのか、②休日以外にポジティブな時間の使い方をしている具体例、
③ポジティブ・オフでどんな変化があったか、④職場の人々の反応はどうか、⑤これからのポジティブ・オフ予定、
⑥ポジティブ・オフについて一言――という項目に沿って、社員の生の声がつづられている。
 紹介されている休みの過ごし方は実にさまざまだ。いくつか挙げると、
・土日の休みと合わせてNPO法人が支援する生態系保護のボランティア活動に参加
・誕生日に休みを取ってメディアで評判の人気レストランを訪れ自分にご褒美
・企業に勤めるゴルファーの競技大会に出場し上位に入賞
――という具合に、皆それぞれの前向きなオフを過ごしている。
「取材にうかがった中には、まだ要介護認定を受けていないご両親の通院サポートをポジティブ・オフと捉えて休暇を
利用している方もいました([事例]参照)。早めに計画を立てて休みを取り、
両親と一緒に通院することが自分にとってはリフレッシュになるし、家族との絆もより強まる。
それが自分にとっての“ポジティブな休み方”なんです――というお話でした。
介護は働く人にとって重いテーマの一つですが、意識や考え方によって、より前向きに捉えることもできるのだと感じました」(小嶋氏)

●ポジティブ・オフを通じてSNSのつながりがリアルなコミュニケーションに
ポジティブ・オフ休暇を取り入れたことで、職場を越えた社員のつながりの輪が広がった例もある。
「当社では社内SNSを運用していて、仕事上のナレッジの共有や、
技術的な問題について急いで誰かに問い合わせたいといったケースでもよく活用されているのですが、
仕事以外の趣味の分野でもたくさんのコミュニティが活動しています。例えば、企業間の大会でも好成績を挙げている囲碁部や、
韓国旅行や料理の情報交換をしているサークル、焼きたてパンを食べながら会社について語り合うパンコミュニティといった
ユニークなものもあります」
「ネット上で情報交換をするのも楽しいのですが、やはり旅行などは1人より仲間と一緒のほうがもっと楽しい…ということで、
コミュニティのメンバーがポジティブ・オフ休暇を利用して、一緒に出掛けたり活動したりする例も最近では増えてきています。
そうした社員同士のつながりが、一緒に仕事をするときに良い成果につながる例もしばしば見られますし、
制度導入による相乗効果として、これからの広がりに期待しているところです」(小嶋氏)

●「すいません」と断って休む職場を変えていきたい
ポジティブ・オフ休暇の導入を契機に、同社内での休暇に対する意識は確実に変わり始めているように見受けられる。
これからさらにどのような変化を目指していくのかを尋ねてみた。
「『すいません』と断って休みを取る――いまではまだ当たり前になっていることをこれから変えていければと思います。
自分も休みを取るし、職場の誰かも別のときに休む。お互いさまのことですが、みんなが年に何日か計画的に休みを取り、
時には誰かがまとまった休みを取ったとしても、職場では当たり前に仕事が回せるという状態を作っていかなければいけないと思います」
「これからは介護が大きくクローズアップされる時代ですし、部課長がまとまって何日も職場を離れるというリスクもあります。
育児に関しても、子どもが熱を出すのは日常茶飯事ですし、それでまた誰かが休むこともある。
そうした状況にまったく耐性のない職場というのは、これからダイバーシティを指向する組織にはなり得ないと思いますし、
大きな視点で見れば企業としての競争力にもかかわってくる問題です。休むときは休んで、それでもきちんと結果を出せる。
そうしたコントロールがうまくできる組織でなければこれからはなかなか立ちいきません。
ですので、休みやすさについては、働きやすさや働き方のメリハリの一部という認識で、
これからも取り組みを考えていきたいと思います」(鵜原氏)
http://www.rosei.jp/jinjour/article.php?entry_no=58121
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