中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

過労社会 つぶされる若者たち

2013年06月28日 | 情報
過労社会 つぶされる若者たち(13.6.3-5東京新聞)

長時間労働や職場での理不尽な処遇などによって、若者が体を壊したり、自ら死を選ぶニュースが報じられています。過労社会の実態は?

過労社会<上>労組も守ってくれない 過重な残業「見ないふり」
2013年6月3日 朝刊
「すかいらーくの組合はもう労働組合として機能していない。
会社のご用聞きだ」外食大手「すかいらーく」の店長だった中島富雄さん=当時(48)=は二〇〇四年八月に過労死する直前、
妻の晴香さん(57)に、こう漏らした。
かつて労組幹部だった中島さんはサービス残業の改善を訴えたが、古巣の労組は冷たかった。失望し、外部の個人加盟ユニオンに相談。
倒れたのは訴訟準備の最中だった。晴香さんは夫の遺志を継ぎ、ユニオンの支援を受けながら、会社に職場の改善を約束させた。
中島さんの労災が労働基準監督署に認められた二カ月後の〇五年五月に発行された業界専門誌に晴香さんは目を疑った。
すかいらーく労組の委員長がインタビューに答えていた。「店長は忙しさも半端ではありません。
しかし、本当にできる店長は、その中でも休みが取れるのです」
夫の過労死が自己責任だと言いたいのか。晴香さんは〇七年七月、「過重労働に見て見ぬふりをしてきた」として、
労組にも過労死の責任があったことを認めるよう求め、武蔵野簡易裁判所に調停を申し立てた。
労働基準法は一日の労働時間を八時間などと定める。
ただ三六条は残業時間の上限について、労使間で協定(三六協定)を結んで労基署に届け出れば、残業させられるとしている。
すかいらーく労組は晴香さんの訴えを否定し、協定書の開示さえ拒もうとした。協議は決裂し、調停は成立しなかった。
すかいらーく労組の山崎大輔事務局長は取材に「過重労働防止にはきちんと取り組んでいる」と反論する。
当時のすかいらーく社長は初代労組委員長。歴代委員長も後に会社幹部になった。晴香さんは憤る。
「経営者の方しか向いていない労組なんて要らない」
厚生労働省は通達でおおむね月八十時間を超える残業を過労死との因果関係が強い「過労死ライン」とし
、長時間労働の抑制を指導している。しかし、大手百社に対する昨年七月の本紙調査では、七割の企業が八十時間以上の残業を容認。
三六協定は労使合意が前提で、労組側は過重な残業を拒否できる建前だが、実際は防波堤の役割を果たしていない。

労組の総本山の「日本労働組合総連合会(連合)」。
新谷信幸総合局長は「健全な労使関係がある企業は、三六協定の上限は高く設定していても、それとは別に規定を設け、
長時間労働にならないようにしている」と説明。その上で、「そもそも八十時間を超える協定を、
なぜ労基署は受理するのか」と批判の矛先を行政に向ける。
サービス残業や不当解雇など個別の労働紛争で、一一年度に全国の労働局に寄せられた相談は過去最多の二十五万件。
一方、労組の組織率は20%を切っている。
労使協調路線が趨勢(すうせい)となり、ストライキなどが減った上、労働者が抱える個々の問題に労組は関与せず、
労組に加入する意義が薄れているとの指摘もある。
独立行政法人「労働政策研究・研修機構」(東京)の〇七年の調査では、
労組に期待しないと回答した労働者は47・5%。理由のトップは「会社と同じ対応しかできない」(36・8%)で、
「(労組に相談すると)会社から不利益を受ける恐れがある」(20・1%)との回答もあった。
労組問題に詳しい甲南大学の熊沢誠名誉教授は「一人のために労働者が連帯すれば職場は変わる。
働き過ぎやメンタルなど個人の受難に寄り添うことが、労組の復権につながる」と訴える。

安倍政権の「成長戦略」が月内にも取りまとめられる。
「世界で一番企業が活動しやすい国」を目指し、労働分野の規制緩和も視野に入れる。
労働環境が急速に悪化する中、規制緩和で、働く人の健康や命を守るセーフティーネットは機能するのか。働く現場に迫る。 

<労働組合> 憲法は、労働者が団結し、会社と団体交渉したり、行動(争議)したりする権利を保障している。
国内では企業ごとに組織する企業別労働組合が主流。昨年6月末で、組合員約989万人のうち企業別組合の所属は約829万人。
全労働者に占める組合員の割合は1949年の55.8%をピークに年々低下し、
昨年は過去最低の17.9%。個別労働紛争の増加などで、近年は個人でも加入できる労働組合「ユニオン」が増えている。

過労社会<中>名ばかり管理職今も 拡大解釈サービス残業助長
十三カ月で休みは三日。残業代はなし。2013年6月4日 朝刊

茨城県笠間市の和菓子メーカー萩原製菓の男性社員=当時(30)=は二〇一一年八月、帰宅後に倒れ、心室細動で亡くなった。
死亡直前の残業は月百時間を超え、昨年三月に労災が認められた。会社は、残業に必要な労使協定を結んでいなかった。
会社は「労働基準法の労働時間規制の適用を除外される管理監督者だった」と水戸労働基準監督署に強弁した。
 労基署によると、男性は肩書こそ製造本部長だったが、仕事は出荷管理で、自ら菓子店に卸すこともあった。
労基署は権限も裁量もない「名ばかり管理職」だったとして、昨年十月、労基法違反の疑いで、会長と社長を書類送検した。
 名ばかり管理職は〇八年一月、東京地裁が日本マクドナルドの店長を「管理監督者に当たらない」と認めた判決で世間の注目を集めた。
残業代を削るために、実態が伴わなくとも「管理職」の肩書を与える-。
判決から五年余がたつ今も、個人加盟の労働組合「東京管理職ユニオン」には名ばかり管理職への相談が後を絶たない。
中ノ郷信用組合(東京都墨田区)の元社員小池正明さん(60)も、相談者の一人だ。
管理監督者をめぐって会社と争った小池さん。「かつては自分も仕事人間。
会社のため長時間労働は当たり前と思っていた」と語る=東京都渋谷区で
得意先の中小零細企業を大手銀行に奪われ、信組も融資が伸び悩む。
組織のスリム化で課が統合、小池さんは七年前、経理課長から部下のいない平社員に降格された。
だが、給与ランクは七等級のまま。七等級以上は一律に管理監督者とされ、役職手当の代わりに残業代は出ない。
決算前の残業は月百時間を超えたが、小池さんに残業代は出なかった。
小池さんの役職手当は最低の月二万五千円、〇八年度の年収は約六百八十万円。
残業代が出る一ランク下の社員十八人のうち十一人が小池さんの年収を上回り、最大で約百万円の開きがあった。
信組は、マクドナルド判決後も労働条件を改めなかった。
小池さんは一一年五月、未払い残業代の支払いを求めて東京地裁に提訴。
昨年七月、信組が二百九十五万円を支払うことで和解が成立した。信組は本紙の取材に「給与待遇を見直したい」と答えた。
小池さんは「収益確保のために制度を悪用して人件費を削る。従業員の弱みにつけ込む会社は結果的に駄目になる」と憤る。
昨年、上場企業二百二十四社に行った民間調査では、51・0%の企業が課長代理クラスに残業代を支払っていなかった。
厳格に審査されれば、課長代理は名ばかり管理職の可能性が高い。
神戸大法学部の大内伸哉教授は「国の管理監督者の要件があいまいで、法の趣旨に反した拡大解釈を生み、
違法行為を助長している」と指摘。残業時間の上限を定める三六協定のように、
事業所ごとに労使間で具体的に管理監督者の適用範囲を決め、労基署に届け出る制度を提案する。

名ばかり管理職の問題を放置したまま、安倍政権は、労働時間規制のもう一つの例外ルールである「裁量労働制」の適用拡大ももくろむ。
就業時間など働き方を労働者に任せる代わりに、一定時間働いたとみなして残業代を支給しない。
東京管理職ユニオンの鈴木剛書記長は「経営者に都合のいい制度にしようとしている。
さらに長時間労働をまん延させかねない」と規制緩和に待ったをかける。

 <管理監督者> 労働基準法の労働時間(1日8時間、1週間40時間)規制の適用から除外され、残業代の支払いが免除される。
厚生労働省は通達で「経営者と一体的な立場にあり、人事や労働条件の決定権限が与えられている」「出退勤が自由」
「一般の従業員より賃金が高い」といった要件を提示。
未払い残業代請求をめぐり管理監督者に当たるかどうかが争われた裁判では、管理職であっても管理監督者とは認めず、
経営側に厳しい判断が相次いでいる。

過労社会<下>希望押しつけ無責任 若者に身を守る知識を
NPO法人「あったかサポート」が2011年5月、
京都府立鳥羽高校の定時制で行った労働法教育の出前授業=京都市南区で(同法人提供)。2013年6月5日 朝刊

「職場で理不尽な待遇を受けても、仕方ないとあきらめてしまう。かつての自分もそうだった」
ウェブデザイナーの山口猛さん(32)=仮名=は振り返る。
東京都港区のIT企業で働いていた三年前、サービス残業を強いられた揚げ句、リーマン・ショックのあおりを受けて解雇された。
残業代が出なくても当たり前だと思っていた。これが会社なんだと。
同僚は月の労働時間が四百時間に及び、うつになった。泣き寝入りしなかったのは、後から転職してきた上司の存在があった。
上司はかつて個人加盟ユニオンで働いていたこともあり、労働知識が豊富だった。
「これは違法だ。出退勤の記録を残しておけば残業代は取り返せる」。
上司のアドバイスに、在職中からタイムカードをコピーしたり、勤務時間をメモしたりして証拠を集めた。
雇用契約の書類は捨てずに残しておいた。解雇後、上司の紹介でユニオンに駆け込み、未払いの残業代を取り戻した。
山口さんは「労働の知識やトラブルの対処法を知っておくことの大切さを身をもって感じた」と話す。
 しかし、学校や職場で労働者の権利や制度を学ぶ機会は極めて少ない。
文部科学省が提唱するのは「働くことはこんなに素晴らしい」といった働く意欲を育むことに主眼を置いたキャリア教育だ。
学生のインターンシップ(就業体験)は盛んだが、
そこで、入社後に実際直面する可能性のあるトラブルへの対処法を学ぶことはほとんどない。

最近では無知につけこみ、過酷な働かせ方で若者を使い捨てにする「ブラック企業」の存在が問題視されている。
働くルールや権利を知らないまま、社会に放り出される若者はブラック企業の前に、あまりに無防備だ。

厚生労働省の調査によると、二〇〇九年三月の大卒者で入社後三年以内に仕事を辞めた人は28・8%に上る。
 国は昨年、若者の雇用環境を改善しようと「若者雇用戦略」をまとめた。
ここでも議論の中心は、キャリア教育の充実や学生の大手企業志向と求人のミスマッチ解消ばかり。
根底にある過重労働やサービス残業など、働く現場の問題にまで踏み込むことはなかった。
 昨年五月、若者雇用戦略の最後の作業部会の席上、メンバーの上西充子・法政大学キャリアデザイン学部教授は、
事務局が用意した原案に異を唱えた。「厳しい環境はしょうがないという前提で、
骨太の若者を育てるという雇用戦略がまとめられるのは、非常に大きな問題を感じる」
上西教授は「労働法教育の普及に程遠い現状の中で、
ブラック企業に入るのは自己責任であるかのように若者を追い込むのは酷だ」と訴える。
社会保険労務士らでつくるNPO法人「あったかサポート」(京都)は、〇六年から大学や高校で労働法教育の出前授業を行っている。
労働条件を知るための求人票の見方など実践的な労働知識を教えるほか、困ったときの対処法や相談窓口を紹介している。
あったかサポートの笹尾達朗常務理事は、偏ったキャリア教育に疑問を投げかける。
「これだけ若者の雇用が悪化しているのに、希望や夢だけ教えるのは無責任。
学校教育の中で、身を守るすべや働くリスクまで教えるべきだ」
<キャリア教育> 勤労観を身に付けるとともに、主体的に進路を選択する能力や態度を育てるための教育。
1999年の中央教育審議会の答申で初めて登場した。
若者のフリーターやニートの増加などから、学校での教育の必要性が叫ばれるようになった。
代表的な取り組みは中高での職業体験や、大学でのインターンシップ。2011年度からは大学設置基準で、
キャリア教育へ取り組むことが義務化された。


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教育研修は自分たちでできます

2013年06月27日 | 情報
MH対策で重要な位置づけにあるのが、従業員、管理職、産業保健スタッフに対する教育・研修でしょう。
しかし、事業場内資源すなわち自分たちで一から始めるのはなかなか難しいと思っていませんか。
EAPに頼れば、一通りの教育研修はしてくれますが、御社に相応しい内容になるかは疑問です。
しかも、費用が100万円単位で必要になります。ほんとにびっくりしますよ。
後述するMH対策支援センターは、何と無料で教育してくれますが、1回限りですし、
内容もそれなりで、「隔靴掻痒」の感は否めません。

そこで、費用をかけずに、自分たちの努力で知識を積み重ね、自分たちで社員教育を実施できる方法があります。
まず、厚労省の「こころの耳」、http://kokoro.mhlw.go.jp/
さらに中災防http://www.jisha.or.jp/health/index.htmlや
産業医学振興財団
http://www.zsisz.or.jp/images/pdf/fh_gaiyou.pdf#search='http%3A%2F%2Fwww.zsisz.or.jp%2Fimages%2Fpdf%2Ffh_gaiyou.pdf'
のHPから該当資料をダウンロードして、関係者間で読み合わせしましょう。

次に、MH対策支援センターのセミナーを受講しましょう。
分からないことは、MH対策支援センターの相談員に質問しましょう。
それでも、お困りの場合は、(多分お困りになりますから、)橋本社会保険労務士事務所までお尋ねください。
s-hashi@ya2.so-net.ne.jpへ。安価でアドバイスいたします。

さらに、少し古くはなりますが、厚労省の「労働者の心の健康の保持増進のための指針」(平成18年3月31日)には、
教育研修・情報提供の具体的項目が列挙されていますので、この項目に従って、いろいろな情報を組み合わせれば、
「自分たちで独自に作り上げた、MH対策の教育研修プログラム」が出来上がります。
最初は、失敗でも、物足りなさを感じてもOKです。失敗は成功の母ですから。
その代り、自分たちで作り上げた教育研修プログラムで研修が成功すれば、
これ以上は望むことができない、MH対策になるのです。

1.労働者への教育研修・情報提供
事業者は、セルフケアを促進するため、管理監督者を含む全ての労働者に対して、
次に掲げる項目等を内容とする教育研修、情報提供を行うものとする。
[1] メンタルヘルスケアに関する事業場の方針
[2] ストレス及びメンタルヘルスケアに関する基礎知識
[3] セルフケアの重要性及び心の健康問題に対する正しい態度
[4] ストレスへの気づき方
[5] ストレスの予防、軽減及びストレスへの対処の方法
[6] 自発的な相談の有用性
[7] 事業場内の相談先及び事業場外資源に関する情報

2.管理監督者への教育研修・情報提供
事業者は、ラインによるケアを促進するため、管理監督者に対して、
次に掲げる項目等を内容とする教育研修、情報提供を行うものとする。
[1] メンタルヘルスケアに関する事業場の方針
[2] 職場でメンタルヘルスケアを行う意義
[3] ストレス及びメンタルヘルスケアに関する基礎知識
[4] 管理監督者の役割及び心の健康問題に対する正しい態度
[5] 職場環境等の評価及び改善の方法
[6] 労働者からの相談対応(話の聴き方、情報提供及び助言の方法等)
[7] 心の健康問題により休業した者の職場復帰への支援の方法
[8] 事業場内産業保健スタッフ等との連携及びこれを通じた事業場外資源との連携の方法
[9] セルフケアの方法
[10] 事業場内の相談先及び事業場外資源に関する情報
[11] 健康情報を含む労働者の個人情報の保護等

3.事業場内産業保健スタッフ等への教育研修・情報提供
事業者は、事業場内産業保健スタッフ等によるケアを促進するため、事業場内産業保健スタッフ等に対して、
次に掲げる項目等を内容とする教育研修、情報提供を行うものとする。
また、産業医、衛生管理者、事業場内メンタルヘルス推進担当者、保健師等、各事業場内産業保健スタッフ等の
職務に応じて専門的な事項を含む教育研修、知識修得等の機会の提供を図るものとする。
[1] メンタルヘルスケアに関する事業場の方針
[2] 職場でメンタルヘルスケアを行う意義
[3] ストレス及びメンタルヘルスケアに関する基礎知識
[4] 事業場内産業保健スタッフ等の役割及び心の健康問題に対する正しい態度
[5] 職場環境等の評価及び改善の方法
[6] 労働者からの相談対応(話の聴き方、情報提供及び助言の方法等)
[7] 職場復帰及び職場適応の支援、指導の方法
[8] 事業場外資源との連携(ネットワークの形成)の方法
[9] 教育研修の方法
[10] 事業場外資源の紹介及び利用勧奨の方法
[11] 事業場の心の健康づくり計画及び体制づくりの方法
[12] セルフケアの方法
[13] ラインによるケアの方法
[14] 事業場内の相談先及び事業場外資源に関する情報
[15] 健康情報を含む労働者の個人情報の保護等

中小企業でも、自分たちでいろいろと創意工夫し、自社に相応しい教育研修プログラムを作り上げている実例を承知しています。
自分たちで作り上げた「教育プログラム」ですから、達成感を味わえますし、携わった従業員の実務能力は
確実にレベルアップしますし、何よりも社長をはじめとする経営層の「頭の中」をシャッフルする効果もあります。
繰り返しますが、最後の仕上げで、どうしてもまとまらない場合は、橋本社会保険労務士事務所がお手伝いします。
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今どきの朝礼事情

2013年06月26日 | 情報
職場でハラスメントが多い理由は、調査結果によると、ダントツの1位にされているのが、コミュニケーション不足です。
そのコミュニケーション不足を解消しようと試みる事業所を紹介する記事が掲載されていましたので、以下に転載します。


握手、体操…ゲーム感覚で笑顔に 今どきの朝礼事情
2013/6/17 日本経済新聞 電子版

職場の朝礼を従業員の結束ややる気につながるよう工夫する動きが広がっている。
新人に話をさせたり、ゲームで盛り上がったりして、一日の仕事を気持ちよく始める準備をする。
人間関係に悩む職場は多いが、朝礼をうまく活用すると職場の雰囲気を変える原動力になるようだ。
話すコツを取得
「隣の部署の吉永君は一見もの静かだけど、本当はお酒大好きでおしゃべり。
私生活では最近ショッキングなエピソードがあって……」。
朝9時、衣料品通販サイト「ゾゾタウン」を運営するスタートトゥデイの広告宣伝部で毎朝開く朝礼が始まった。
4月に入ったばかりの新人2人がタブレット端末を手に、別の部署に配属になった同期を紹介する。
楽しげに聞いているのは先輩社員たち。「見た目と違うね」「もう少し突っ込んでほしかったな」と合いの手も入った。
朝礼ではあいさつと業務連絡を手短に済ませた後、曜日変わりの「思わず笑顔になる」メニューで締めるのが恒例だ。
例えば月曜日は職場仲間で本気のじゃんけん、火曜は最初の1人が決めたテーマに沿って順番に1行ずつ言葉をつなげて1編仕上げる
リレー式の即興ポエムづくりをする。朝礼はいつも10分程度で終わるが、
朝の職場の雰囲気を変えるスイッチの役割を果たしている。
新人の同期紹介は金曜のメニュー。責任者の小高洋介さん(31)から「最初の仕事。朝礼のメニューを考えて」と
投げかけられて新人2人が発案した。
中田真吾さん(22)は「朝礼で何をすべきか分からなかったけれど、同期が75人と多くてよく分からないと先輩に言われたのを思い出して。
これなら新人にしかできないと提案してみた」と話す。
もう一人の稲葉ひかるさん(22)も「最初はうまく紹介できなくて場がシーンとなったが、
続けるうちに同期の私たちも知らなかったことが発掘できた。
『朝礼の時に紹介された新人ね』って先輩と話すきっかけにもなっている」と喜ぶ。
2人とも「朝礼にこういうイメージはなかった」と口をそろえる。なぜ一風変わった朝礼を始めたのか。
小高さんは「周囲からは羽目を外しているようにみえるかもしれないが、
朝の眠気を払い、笑顔でスタートを切れる方法を模索してきた結果」と説明する。
会社が成長し新人も中途入社も増えた。1日いても会話を交わさない人も出てくる。
同僚の人となりを知り、朝からやる気を引き出したい。そのための時間を一人一人が役割を持って参加する形でつくろうと考えた。
人前で話すコツや企画力など仕事につながる面も自ずと磨かれるという。
同僚の一体感を高める機会に朝礼を活用するのは中小企業や工場、商店で多い。
ラムネ菓子やキャラメルをつくる安部製菓(名古屋市)は朝礼に「握手の時間」がある。
屋外での社是唱和や体操の後で従業員が2列になり、移動しながら全員が握手し合う。
参加する社員にも「今日も一日がんばろうと思える」と好評だ。
誕生日に贈り物
誕生日を迎える従業員には朝礼で社長自らプレゼントを渡し、皆が口々にその人のよいところを発表する時間もある。
安部彰二社長(55)は「社内に派閥ができて人間関係がよくない時期があった。
朝礼のやり方を変えて社員の心がひとつになってきた」と話す。
朝礼に1時間以上を費やすのは健康食品や化粧品の通販を手掛ける沖縄教育出版(那覇市)。
2人ずつ向き合って握手し3回手をたたいて「ハッピー」と声を出しつつ笑顔をつくる「ハッピー体操」をする。
初めは恥ずかしがる人が大半だが、続けるうちに笑みがこぼれるようになるという。
メニューはほかにも従業員同士が褒め合う「ビューティーチェック」など盛りだくさん。
最近は自分のことを何でもいいので20分間話し続ける「自己開示」が始まった。
崎山俊樹さん(32)は「15分過ぎると考えてきたことが尽きて本音が出てくるので、皆が自然と聞き入る。
お互いを知ることで仲間との信頼感が生まれている」と話す。
創刊30年近い雑誌「月刊朝礼」の編集人、渡部仁さん(50)は「デジタル時代でコミュニケーションの方法が変わるなか、
その反動もあって顔をつき合わせる朝礼が再評価されている」とみる。
「飲みニュケーション」が敬遠されがちな今、マンネリに陥らないユニークな朝礼が増えていくのかもしれない。
「職場で孤独感じる」6割
産業能率大学(東京都世田谷区)が20~50歳代を対象に実施したビジネスマン調査では
「職場の人と仕事以外で付き合いたいか」との質問に3分の2は否定的だった。
「職場で孤独を感じることがあるか」には「たまに」まで含めると6割が「ある」と回答した。
産能大総合研究所の中村浩史研究員(37)は「仕事の範囲が広がってあいまいになり、困っても周囲に相談しにくい。
忙しいと気配りする余裕もない。職場全体として課題を共有しにくくなっている」とみる。
そのうえで「東日本大震災を機に、職場でも人のつながりの大切さを再認識する人は増えている。
朝礼のひと工夫もそうした意識の表れだろう」と分析する。

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(安全)衛生委員会の疑問に答えます

2013年06月25日 | 情報
(安全)衛生委員会について、いろいろと質問がありましたので、以下にお答えします。

1.衛生委員会は、50人以上の労働者を使用する事業場ごとに設けるとありますが、「事業場」とは何ですか?

・事業場とは、一定の場所で事業が継続的に行われる作業場のことです。
従って、企業単位ではなく、事業場単位で、法令が適用されます。
例えば東京に本社があり、都道府県所在地に支店があれば、それぞれが一つの事業場となります。
ただし、同じ場所にあっても、工場の中にある診療所や食堂のように労働の態様が全く異なる場合は、
別の事業場として扱うこともできますし、出張所のように別の場所にあっても、著しく小規模で自ら何らの意思決定をしない、
独立性のない事業場は、すぐ上の事業場と一括して扱います。
企業としては、こうした原則の範囲内で、「事業場」を確定いただくことになりますが、
労基署は、実態として法令順守されていることを重要視していますので、ある程度の運用は認められると考えています。

2.衛生委員会は、50人以上の労働者を使用する事業場ごとに設けるとありますが、なぜ、50人以上なのですか?

・法令上、衛生委員会の場合は、「事業者は、常時50人以上の労働者を使用する事業場ごとに」(法18条、令9条)となっています。
まず、「常時50人以上」とは、常態として使用する労働者が50人以上ということですので、当該労働者には、常用の労働者のみではなく
パートタイマーや日雇労働者のような臨時的労働者も含まれることになります。
なぜ、50人かということですが、小生の承知している限り、50人に決定的な根拠はなく、決め事であるということです。
ですから、これが30人でも、100人でもよいのですが、法令で50人としているということで理解してください。

3.事業所の人数が、ある時は50人以上、ある時は50人未満になりますが、衛生委員会はどのように運営したらよいのでしょう?

・実態として、事業場の労働者の人数が、前月は50人以上、前々月は50人未満、半年前は40人、という状況が起こりますが、
その都度、「法令通り」にと言われても、企業も労基署も困りますので、労働者の人数に多少の増減があっても、
一度設置した(安全)衛生委員会は、継続して実施することが望ましいと考えます。

4.法令通りに解釈するのならば、同じビル内に、上位と下位とで、50人前後の事業所がふたつありますが、
これを統合しても構いませんか?

・筆者の考えですが、労基署は、企業の組織、意思決定の決まり方などは知り得ない立場ですので、
法令の精神が順守されているのであれば、統合することは全く問題のないことと考えます。
反対に、場合によっては分割することも可能です。

5.衛生委員会の委員について、人数、資格、立場等はどのように考えればよいのでしょう?

・安全委員会の委員は、法17条、衛生委員会の委員は、法18条、安全衛生委員会の委員は、法19条に、明確に規定されています。
しかし、私見ですが、事業所の責任者が委員長、衛生管理者、安全管理者、産業医が常任の委員になっていれば、
結果として、事業所全体の意見が集約できればよいのであって、あとは事業所責任者の判断で、
人数、資格、立場等を任意に決めればよいと考えています。あまり杓子定規に考えなくても、よいのではと考えています。

全ての質問に共通するのは、
・企業の担当部門のみなさんが、真摯に問題に対処している様子が窺える
・大切なのは、「かたち」ではなく、法令の精神を順守することである
ということです。
なお、法令の精神とは、法第1条・目的を指します。
「労働安全衛生法は、労働基準法と相まって、労働災害の防止のための危害防止基準の確立、責任体制の明確化及び
自主的活動の促進の措置を講ずる等その防止に関する総合的計画的な対策を推進することにより
職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的とする。」
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平成24年度「脳・心臓疾患と精神障害の労災補償状況」

2013年06月24日 | 情報
毎日新聞で、過労死弁護団の幹事長を務める川人博弁護士は、
「自殺の認定も増えているが、これでもまだ氷山の一角でしかないのではないか」と話していますが、筆者もまったく同感です。
なぜか? その理由は、筆者のセミナー等で説明しています。

平成24年度「脳・心臓疾患と精神障害の労災補償状況」まとめ
~精神障害の労災認定件数が475件(前年度比150件増)と過去最多~

厚生労働省は21日、平成24年度の「脳・心臓疾患と精神障害の労災補償状況」を取りまとめましたので、公表します。
厚生労働省では、過重な仕事が原因で発症した脳・心臓疾患(※1)や、
仕事による強いストレスなどが原因で発病した精神障害の状況について、平成14年から、労災請求件数や、
「業務上疾病」と認定し労災保険給付を決定した支給決定件数(※2)などを年1回、取りまとめています。
(※1)くも膜下出血などの「脳血管疾患」や、心筋梗塞などの「心臓疾患」は、過重な仕事が原因で発症する場合があり、
これにより死亡した場合は「過労死」とも呼ばれています。
(※2)支給決定件数は、平成24年度中に「業務上」と認定した件数で、平成24年度以前に請求があったものを含みます。

【ポイント】
1 「過労死」など、脳・心臓疾患に関する事案の労災補償状況
(1)請求件数は 842件で、前年度比 56件の減。3年ぶりに減少した。  
(2)支給決定件数は338件(前年度比28件の増)で、2年連続で増加した。 
(3)業種別(大分類)では、請求件数は、「運輸業,郵便業」178件、「卸売業,小売業」127件、「建設業」123件の順で多く、
支給決定件数は「運輸業,郵便業」91件、「卸売業,小売業」49件、「製造業」42件の順に多い。
中分類では、請求件数、支給決定件数ともに「運輸業,郵便業」の「道路貨物運送業」127件、71件が最多。
(4)職種別(大分類)では、請求件数は「輸送・機械運転従事者」163件、「専門的・技術的職業従事者」133件、
「サービス職業従事者」116件の順で多く、支給決定件数は「輸送・機械運転従事者」86件、「専門的・技術的職業従事者」62件、
「販売従事者」39件の順に多い。
中分類では、請求件数、支給決定件数ともに「輸送・機械運転従事者」の「自動車運転従事者」152件、83件が最多。  
(5)年齢別では、請求件数は「50~59歳」272件、「60歳以上」223件、「40~49歳」216件の順で多く、
支給決定件数は「50~59歳」118件、「40~49歳」113件、「30~39歳」56件の順に多い。 

2 精神障害に関する事案の労災補償状況
(1) 請求件数は 1,257件で、前年度比 15件の減となったが、引き続き高水準で推移。   
(2)支給決定件数は475件(前年度比150件の増)で、過去最多。 
(3)業種別(大分類)では、請求件数は「製造業」225件、「医療,福祉」201件、「卸売業,小売業」196件の順で多く、
支給決定件数では「製造業」93件、「卸売業,小売業」66件、「運輸業,郵便業」「医療,福祉」ともに52件の順に多い。
中分類では、請求件数、支給決定件数ともに「医療,福祉」の「社会保険・社会福祉・介護事業」111件、33件が最多。  
(4)職種別(大分類)では、請求件数は「事務従事者」342件、「専門的・技術的職業従事者」274件、
「サービス職業従事者」153件の順で多く、支給決定件数は「専門的・技術的職業従事者」117件、「事務従事者」101件、
「サービス職業従事者」57件の順に多い。
中分類では、請求件数、支給決定件数ともに「事務従事者」の「一般事務従事者」234件、65件が最多。  
(5)年齢別では、請求件数は「40~49歳」387件、「30~39歳」370件、「20~29歳」242件の順で多く、
支給決定件数は「30~39歳」149件、「40~49歳」146件、「20~29歳」103件の順に多い。  
(6)出来事別の支給決定件数は、「仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった」59件、
「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」55件、「悲惨な事故や災害の体験、目撃をした」51件の順に多い。
また、増加件数は、「1か月に80時間以上の時間外労働を行った」(前年度比29件増)、
「(重度の)病気やケガをした」(同27件増)、「上司とのトラブルがあった」(同19件増)、
「セクシュアルハラスメントを受けた」(同18件増)、「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」(同15件増)の
順に多い。 
詳細は、厚労省HPを参照してください。
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000034xn0.html

増える心の病…労災475人、自殺・未遂93人
2013年6月21日 読売新聞
職場でのストレスが原因でうつ病などの精神疾患を発症し、2012年度に労災認定された人が、
前年度より150人多い475人に上り、3年連続で過去最多を更新したことが21日、厚生労働省のまとめでわかった。
このうち93人は自殺を図っており、未遂も含めた人数も過去最多となった。
申請者は、前年度に比べ15人減の1257人とほぼ横ばいで、高止まりしている。
認定が大幅に増えた理由について、同省は「11年12月に認定基準を明確化し、
より幅広く救済できるよう改めたことなどが影響したのでは」と分析している。
認定された人の年代別では、30歳代(149人)が最多で、40歳代(146人)、20歳代(103人)の順。
職種別では、「一般事務」(65人)が最も多く、システムエンジニアなどの「情報処理・通信」(30人)、
店員などの「商品販売」(29人)が続いた。


労災:心の病で475人 昨年度認定最多 自殺、未遂含め93人
毎日新聞 2013年06月22日朝刊
仕事上のストレスが原因で、うつ病などの精神疾患を発症し、
労働災害と認定された人が2012年度は前年度比150人増の475人となり、
3年連続で過去最多を更新したことが21日、厚生労働省のまとめで分かった。
うち未遂を含めて過労自殺と認定された人は同27人増の93人に上り、07年度の81人を超えて過去最多となった。
一向に改善されない長時間労働やパワーハラスメントの増加などが背景にあるとみられる。【東海林智】
厚労省のまとめによると、精神疾患で労災認定されたのは男性が348人、女性が127人。
年代別では、30〜39歳が149人と最多、40〜49歳が146人、20〜29歳が103人の順だった。
どの年代も前年度を大きく上回ったが、特に40代は倍以上に急増した。
原因は「仕事内容・量の大きな変化」(59人)がトップだったが、「嫌がらせ、いじめ、暴行」は前年度の40人から55人に増加、
「セクハラ」は同6人から24人、「月80時間以上の残業」は同3人から32人に急増した。
全体の請求は1257人(前年度比15人減)。
決定が出た中で、労災認定された割合は39%(同8・7ポイント増)と過去最も高かった。
脳・心疾患の労災認定数は338人(同28人増)と高止まりしており、
職種別の内訳は自動車運転者が83人、営業職21人、商品販売18人の順だった。
厚労省職業病認定対策室は「11年末に精神疾患認定の新基準を作り、セクハラなど事例を細かく示したため、
認定が増えたのではないか」と説明。「社会的背景は分析できていない」としている。
これに対し、過労死弁護団の幹事長を務める川人博弁護士は「比較的若い年代の人が精神疾患で労災認定されている例が目立つ。
肉体的にも疲弊している50代ではなく、若くて元気なはずの若年者が多いことを深刻に受け止めるべきだ。自殺の認定も増えているが、
これでもまだ氷山の一角でしかないのではないか」と話している。

心の病で労災認定、3年連続最多 12年度475人
上司とのトラブルやセクハラ増える 2013/6/21 日経

労災認定を受けた人のうち自殺者(未遂を含む)も過去最多の93人。
厚労省は「医療機関でうつ病と診断される人が増えたことに加え、労災申請ができるとの意識も浸透してきた」と説明。
同省は11年12月から、業務による心理的負荷について具体例などを明示した労災認定の新基準を適用しており、
「基準が分かりやすくなったことも要因」(職業病認定対策室)とみている。
労災申請した人は1257人。前年度から15人減ったものの、4年連続で1千人を超える高い水準となっている。
労災認定された475人のうち、発症の原因では「仕事内容・仕事量の変化」が59人で最も多く、
「嫌がらせ、いじめ、暴行」(55人)、「悲惨な事故や災害の体験・目撃」(51人)と続いた。
「嫌がらせ、いじめ、暴行」は前年度と比べて15人増えたほか、「上司とのトラブル」が同19人増の35人、
「セクハラを受けた」が同18人増の24人となり、職場での人間関係が影響した労災認定の増加が目立った。
認定者の業種別では、「製造業」が93人と最多で、次いで「卸売業、小売業」が66人。年代別では30代149人、40代146人の順だった。
12年度に長時間労働で脳梗塞や心筋梗塞などを発症して労災認定されたのは前年度と比べて28人増の338人。
このうち死亡者は同2人増の123人だった。
認定された人の1カ月の平均時間外労働は「80時間以上100時間未満」が116人で最も多かった。
申請者は同56人減の842人となり、3年ぶりに減少に転じた。

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