中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

事例を検討してください

2014年07月31日 | 情報
事例検討をしましょう。
今回も、(独)労働者健康福祉機構の季刊誌「産業保健21」よりいただきました。
準公的機関の季刊誌の記事ですから、利用するのは問題ないからです。
因みに、一方で筆者が持つ事例を使用しないのは理由があります。
・社労士として、守秘義務があります
・事例を脚色するということは、「うそ」を言うことです、その「うそ」を修正するために、また「うそ」の上塗りを
  しなければなりません、結局、事例全体に信ぴょう性がなくなり、検討に値しなくなるからです
ですから、当事例も、いろいろと疑問が残る内容には違いありませんが、使わせていただくのに不満は言えません。

以下の事例について、みなさんはどのように対応されますか?
筆者の考えは、1週間後当ブログにて紹介します。

事例:長く治療を続けていますが、思うように出社できない社員がいます

衛生推進者からの相談
私は、中小規模事業場の人事部で衛生推進者(メンタルヘルス推進担当者)をしています。
総務課のUさん(男性:30歳代後半)は、ここ8年ほど抑うつ状態が続いており、睡眠がうまくとれないこともあるようです。
一度休職し、復職したのですが、なかなか通常勤務ができない状況です。
抑うつ状態になる前までは、バリバリと仕事をこなしていたので、会社としてもUさんを支えていきたいと考えております。
メンタルヘルスクリニックに通院していますが、最近の話を聞くと、主治医の先生から「物事の考え方、捉え方に問題がある」
「カウンセリングでもいいのでは?」などといわれ、少し突き放された印象があるようです。
Uさんは「薬の処方のみ」と割り切って通院していますが、本当の原因が何なのか
(病気なのか、障害なのか、それとも単なる怠けなのか)思い悩んでいます。
今後、Uさんを支えていくために、会社としてどのような対応をとるべきでしょうか?

なお、「産業保健21」に掲載されている、この事例に対するアドバイザーの回答は、以下を参照してください。
https://www.rofuku.go.jp/Portals/0/data0/sanpo/sanpo21/sarchpdf/77_mental_20-21.pdf
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契約社員、3年で「無期雇用」に

2014年07月30日 | 情報
労働契約法の改正を先取りする動きがありました。
筆者は、「先取り」を称賛するのではなく、契約社員でも無期雇用が可能になることが、
メンタルヘルス対策上、極めて有効な対策であることを、強調したいのです。
「同一労働・同一賃金」の大原則を遵守することが、メンタルヘルス対策になると考えています。
同じ職場内で、同じ仕事をしているのに、正規・非正規では給与が違う、待遇も大きく違う、
これでは職場内に、いろいろな軋轢が生じるのは目に見えています。
相対的に減員されたことにより、正規社員の責任範囲は大きく広がっていますので、その精神的な負担は計り知れません。
一方で、非正規社員は、正規と同じ仕事をしているのに、時給で給与計算され、ボーナスもありません。
これでは、「やる気」が削がれますし、「大した仕事もしないのに」という正社員への妬みにもつながります。
会社の人件費削減対策で、今日のような状況が生み出されたのですが、
人件費削減という「荒療治」がどのような副作用を生じさせるのか、考えたことがないのでしょう。
ですから、法改正を目前にして真剣に考える時期に来ています。

契約社員、3年で「無期雇用」に…三菱UFJ銀
読売新聞 7月25日
 三菱東京UFJ銀行は、現在は6か月~1年程度ごとに契約更新している契約社員を、
期間を定めず定年まで働くことができる無期雇用の契約社員にする方針を固めた。
3年超、働いた人が対象になる。ほかの業界にも広まる可能性がある。
同行では社員約4万5000人のうち、1万1400人が支店の窓口業務などを担う契約社員だ。
そのすべてが無期雇用への切り替え対象となる。厚生労働省によると、企業が1万人規模の契約社員を無期雇用に切り替えるのは珍しい。
2015年4月に導入する。
契約社員の9割を占める女性が活躍する場を提供する。人手不足が懸念される中、人材確保につなげる狙いもある。
無期雇用の契約社員になった人は、定年が60歳までとなる。再雇用制度を使えば最長65歳まで働ける。
けがや病気で長期間休んでも、雇用が維持される。原則、仕事の内容は変わらないが、長く働いた契約社員は、
部下を指導する役割を持たせ、その分、賃金を増額する。

契約社員を60歳まで雇用へ 三菱東京UFJ銀
朝日新聞 7月25日
三菱東京UFJ銀行は来年4月から、3年を超えて働いた契約社員が定年の60歳まで働ける制度を導入する。
現在、契約社員は6カ月や1年ごとに契約を更新するが、希望に応じて定年まで無期限で契約する。
雇用環境の改善で人手が不足しつつあるなか、契約社員の待遇を改善し、人材確保につなげる狙いだ。
三菱東京UFJ銀の従業員4万4900人のうち、契約社員は1万1400人いる。多くは女性で、支店の窓口業務や事務を担当している。
このうち9割は来年4月時点で勤続3年超となる。全員が希望すれば1万人以上が無期契約に切り替わる。
大手企業でのこうした動きはまだ珍しい。
契約社員を巡っては、昨年4月施行の改正労働契約法で、企業は5年を超えて働いた契約社員について、
18年4月以降、希望に応じて無期契約に切り替えることが義務づけられた。
三菱東京UFJ銀は、同法の条件より前倒しで、より短い勤続年数の契約社員でも無期契約にする。

厚労省のガイドブック「有期契約労働者の円滑な無期転換のために」
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000043248.pdf#search=
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精神科主治医の選び方

2014年07月29日 | 情報
精神科主治医の選択は、精神疾患をり患した労働者やその家族にとっては、最重要の課題です。

内科医や歯科医は、簡単に探すことができますが、日ごろ縁のない精神科医の診療所を探すことすら難しいのですから、
著名な精神科医ではなくても、患者や家族の気持ちに寄り添い、親身になって治療に当たっていただける医師に、
出会えるのは、実は至難の業なのです。
ですから、当ブログでも、たびたび「精神科主治医の選び方」を紹介してきました。
その後、いろいろな情報が入ってきていますが、その整理をする作業の中で思いついたことがあります。

それは、「産業医資格」を持っている、精神科医を選択するということです。
因みに、精神科専門医の約半数は、産業医資格を持っているようです。

なぜ、産業医資格を持っている、精神科医を選択することが良いのかを紹介します。
うつ病をはじめとする精神疾患をり患し、療養を続けている従業員を雇用している企業にとって、
会社に「協力的な」あるいは「理解がある」精神科医は、産業医資格を持っている、精神科医であるということです。
産業医は、企業の実態を見ていますし、企業の「論理」について、理解までいかなくても、「ああ、そういうものか」くらいの
感触を会得しています。ですから、臨床医として活動する時には、
いろいろなことを言ってくる企業の本音も理解が及ぶように思えるからです。

これは、客観的な選択手法でありません、あくまでも筆者独自の見解ですので、信ぴょう性はありません。
しかし、経験的に申し上げると、有力な選択肢と考えています。
いま、主治医の選択で悩んでいる当事者やその家族の皆様には、過去の関連ブログを引用します。

信頼できる主治医を選びたい
13.8.22

セカンドオピニオンに関連する話題です。
普段、お付き合いのない精神科医を、どうやって、どういう基準で選ぶかは、精神疾患り患者本人や家族にとって重大な問題です。
早期発見・早期治療は、当然のこと、正しい診断・正しい治療が何よりも重要なことだからです。
実際に、信頼できる精神科医にたどり着くまでの苦労は、大変なのです。
そこで、「精神科医の選び方と利用の仕方」を、再度紹介します。
企業の人事労務担当や健康管理スタッフの皆さんにも参考になる情報です。

A、はじめて精神科にかかったとき、以下のような場合には主治医(精神科)以外の意見を求めた方が良い
1)最初から同系統の薬剤が2剤以上処方されたとき
2)自記式アンケートの結果だけで診断しているかのようなとき
3)うつ病症状だけ質問したのち、「抗うつ薬をのんで休養をとれば治る」と説明されたとき
4)副作用について説明がなかった、あるいは副作用がないと説明されたとき
5)(施設の事情がありうるが)夜間や休日は一切対応できないと説明されたとき
6)(医師の事情がありうるが)主治医が「日本精神神経学会精神科専門医」でないとき
 ・心身医学会、心療内科学会専門医は専門が異なる
 ・心療内科だけ標榜している精神科医もいる
 ・若い医師は取得していないことがある

B、精神科で治療を続けているとき、以下のような場合には主治医(精神科)以外の意見を求めた方が良い
1)悪くなったと言うと薬がどんどん増えるとき
 症状悪化の場合、疾患の増悪、薬の副作用や退薬症状も要検討
2)同系統の薬剤が3種類以上処方されているとき
3)長期間の精神療法やカウンセリングでも改善しないとき
 精神科医の診察は不可欠、カウンセリングと精神科治療は区別

C、大切なこと
1)よく主治医に尋ねてほしい。質疑を通した信頼関係が不可欠
2)医師が説明するのを拒否したり、質問しにくいような雰囲気になるなら、
 別の医師の意見を聞くことも考慮

第107回日本精神神経学会学術集会 
北里大学医学部精神科学主任教授、北里大学東病院副院長、
医学博士 宮岡 等先生の講演より転載

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主治医を頼ろう

2014年07月28日 | 情報
まず、企業サイドから見た「主治医」の評価です。
はっきりと申し上げて「主治医」は「かたき役」です、なぜか?
それは企業サイドから見ると、「主治医」のみが唯一の部外者だからです。
しかし、これは事実であって致し方がないことです。
あと、大きな理由が二つあります。
ひとつは、「診断書」に病名を正確に記していない
もうひとつは、「診断書」に「復職可」とあるが、
どう考えてみても、働くことができる状態にない
この二つの理由から、主治医を信用することはできない、ということです。
これは、大きな誤解から起きている思い込みなのですが、現実です。
因みに、小生のセミナーで小生が「主治医」という単語を発すると、会場内に「失笑」が漏れます。
これは、「誤解」なのですが、「思い込み」を解決する必要があると考えます。

一方で、小生は、職場復帰支援は、「復帰可」の「診断書」が提出されてから始まるのではなく、
労働者が休職した時から始まるのだ、と強調しています。
なぜなら、休職したときから当該労働者に関わらないと、あとあと困るのは企業であるからと説明しています。
ですから、「主治医」に対して、当該労働者(患者)の業務内容、性格・行動、
事業所の事業内容、復職判断時の会社としての要望等を説明しておくことが重要ですと、解説しています。
さらには、当該労働者(患者)の承認、説明の予約、主治医への謝礼の必要を付記しています。
しかし、その理由・背景などは、これは小生のアドバイスノウハウの一つですので、詳細は省略させていただきます。

現実的な提案です。
産業医の選任義務のない企業が頼るのは、結局は「主治医」しかいないことを理解してください。
周囲を見回してください。医療の専門家はいますか?休職者の主治医以外には、いませんよね。
因みに、行政の見解では、このような中小零細企業は、地域産保に相談してください、ということなのですが、
この地域産保には格差があって、「当てにならない」センターが沢山あるのです。
もちろん、中には積極的な活動をしているセンターがあることも承知しています。
このような地域では、地域産保を頼るのが正しいあり方ですが、小生、全国の実態を承知していないので、申し上げているのです。

先日、臨床医の団体のセミナーを聴講させていただきました。
「主治医」の立場から、 石井メンタルクリニックの石井先生、後楽園クリニックの辻野先生の貴重な経験談を拝聴できました。
両先生が、企業の現実や要求に寄り添う姿勢には、新たな「主治医」像に接した思いがあり、感銘を受けました。

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治療は、医師の仕事

2014年07月25日 | 情報
多くの日本人は、仕事熱心です、一生懸命に取り組みます、そして仕事に必要な情報はまめに習得します。
日本人の特性のひとつで、通常は称賛されるものです。

一方で、これがデメリットとして働くことがあることも理解しましょう。
うつ病をはじめとする精神疾患に関わる業務に携わる、多くの人事労務部門、健康管理部門のみなさんが陥りやすい現象なので、
注意喚起の意味で以下に紹介します。

小生がお目にかかる多くの人事労務部門、健康管理部門のみなさんは、圧倒的に仕事熱心です、
高く強烈な問題意識も持ち合わせています。
ですから、医療・医学の分野にも高い関心を持っていますし、その結果豊富な知識も有していることは事実として認めます。
DSMⅣやICD10にも精通していますし、専門医や産業医のセミナーも熱心に聴講しています。
しかし、知識として、習得するのであれば問題はないのですが、専門医・主治医・産業医などの医学の分野に
深く介入することは、避けたほうが良いでしょう。いや、避けなければなりません。

治療は、主治医の専権事項でしょう。
いくら、主治医の診断書の診断名に疑義があっても、復職可の診断書を信用できなくとも。
また、事業所内においては、専任または嘱託の産業医が、医療の専門家として職務に携わっています。

一方で、人事労務部門、健康管理部門のみなさんには、主治医や産業医が関与できない、専門業務があります。
人事労務部門のみなさんには、労働法例や労務管理の実務に習熟していなければなりません。
健康管理部門のみなさんには、事業所に在籍する従業員一人一人の健康管理、
すなわち心身にわたる健康状態の維持管理に努めなければなりません。

うつ病をはじめとする精神疾患に関わる業務には、幅広い人たちが関与します。
精神科専門医、産業医、人事労務担当、看護師・保健師・臨床心理士などの健康管理スタッフ、
さらには、弁護士・社労士などの外部スタッフ、提携先のEAP等々です。
なぜなら、医学・法律・心理学・社会学など、多くの専門知識を総動員しなければ対応できない問題だからです。
しかし、現実は、精神科専門医、産業医は、医学の観点から、メンタルヘルス対策を考察しています。
弁護士・社労士などは、法律や社会学の観点から、メンタルヘルス対策を考察しています。
ですから、それぞれの専門分野における知識は十分なのでしょうが、「ついでに語る」他分野については、怪しい見解も散見されます。

結論です。人事労務部門、健康管理部門のみなさんは、専門家の専門分野の知識・見解を峻別して、
事業所のメンタルヘルス対策に反映していただくよう希望します。
なかなか、難しい問題です。
さらに、深い事象に関心がある場合は、橋本社会保険労務士事務所にお尋ねください。
s-hashi@ya2.so-net.ne.jpまで。
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