中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

企業のための<がん就労者>支援マニュアルが役立ちます

2015年02月27日 | 情報
国立がん研究センターがん対策情報センター がんサバイバーシップ支援研究部作成の
「企業のための<がん就労者>支援マニュアル」が、精神疾患り患者の就労にも役立ちます。
がんは、精神疾患と並んで難治性の疾病であり、また、医学上「治癒」という概念がないのも共通しています。
http://www.cancer-work.jp/tool/pdf/kigyoumukeManu_2013.pdf

○このマニュアルの見方
このマニュアルは、がん治療と就労の両立を目指す従業員を、職場の上司・同僚や人事、事業者の立場から
どうやって支えていくかということに関するヒントを記載しています。
がん診断を受けた従業員(このマニュアルではがん就労者と表記します)を支援することは、人材を活かすという点では素晴らしい活動です。
一方で、事業所内でできる限界を超えて支援すると、周囲の人の「支援疲れ」を起こしてしまい、好ましいとは言えません。
このマニュアルを手にした皆さんは、それぞれの立場で「できること」を探していただき、支援に取り組んでいただけたらと思います。
マニュアルは
第1章:職場の上司・同僚としてかかわる際の具体的なヒント
第2章:人事の立場から社内制度を整えるためのヒントやかかわり方、就業配慮の実際など
第3章:事業者としての役割として、方針の明確化や風土づくり、体制づくり
を各々記載しています。
もちろん、自分の役割のところだけ見ていただいても結構です。
自分の役割のところを最初のページから読むのもよいですが、必要なところからさっと読んでいただくことがお勧めです。
さらにほかの職種のところも読んでいただくことで、より知識が深まることと思います。
また、このマニュアルとともに産業医向けマニュアル、産業看護職向けマニュアルなども作成されています。
これらも必要に応じてご確認いただけたら幸甚です。

復職の難しさは、がんも精神疾患も同じです。
そして、「治療と仕事、職場で両立」は、精神疾患も、がんも、共通するキーワードです。
筆者は、職場復帰支援対策では、精神疾患が最も策定が難しいと考えていますので、
精神疾患者用の対策が出来れば、他の疾患への援用は容易であると言ってよいでしょう。
実際に、多くの企業の職場復帰支援対策は、全ての疾患を対象にしています。

(参考)治療と仕事、職場で両立 産業医が同席する企業も(抜粋)
2015/2/9 日本経済新聞

長い会社員人生、突然の病に倒れることもある。がんや脳血管の病気ですら多くが治るようになりつつあるが、
働きながら通院する難しさもつきまとう。職場で言い出せず体調を崩したり、人間関係や仕事内容に悩んだりした揚げ句、
離職する人も多い。誰にどう伝えるか、職場に必要な仕組みは何かを探った。
「仕事から外されるのだろうか? 何かが断たれる思いだった」。製薬会社で働く宮脇江利子さん(47)は数年前を振り返る。…

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職場復帰支援策の位置づけ

2015年02月26日 | 情報
質問をいただきました。第3段です。
職場復帰支援策を策定したのだが、就業規則なのか、人事マニュアルなのか、就労ガイドなのか、要するに社内規則のどこに、
職場復帰支援策を位置づければよいのか、という質問内容です。

結論から申し上げます。職場復帰支援策は、就業規則、乃至は就業規則の別規程として、定めてください。なぜか。
まず、基本的な事項から確認しましょう。
通常、就業規則では、まず、その適用範囲を明確に規定する必要があります。最近は従業員も多様化しています。
例えば、正社員が対象である、期間従業員が対象である、アルバイトが対象であるというように。
反対に、適用範囲を明確に規定しないと就業規則を規定できないという技術的な理由があるからです。
なお、適用範囲については、一部の従業員を対象にすることは差支えないことになっています(昭63.3.14基発150号)。
また、就業規則の別規定として定めることは、みなさんの事業所においても、
毎年のように変更・修正される賃金規則を別規定されているように、差支えないことになっています。

さて、正社員対象の職場復帰支援策であるならば、全ての正社員が対象になります。
その全ての正社員に平等に、かつ強制的に適用するには、就業規則に規定しなければなりません。
なお、全ての正社員に適用する場合は、「相対的必要記載事項」に該当することになりますので、
法的にも就業規則に記載しなければなりません(法89条10)。

それなのに、マニュアル、しおり、内規等では、全ての正社員に強制的に適用することはできません。
対象の従業員に、「そのような規則は知りません。就業規則に明記してありますか」と聞かれても、反論の余地がありません。
特に、内規は原則として従業員には周知しませんので、就業規則としての効力が発生しませんし、
一方で、内規を従業員に周知したのでは、内規としての意味がなくなります。
支援策を恣意的に運用されたいのであれば、はなしは別ですが、そうすればトラブルになることは目に見えています。
なんのために職場復帰支援策を規定するのか、その原点、理由を考えれば、結果は当然の帰結になります。

さらに、就業規則は、全ての従業員に周知させなければなりません。
第106条1項抄 「 使用者は、労働基準法及び労働基準法に基づく命令の要旨、就業規則、労働基準法に基づく労使協定
並びに労使委員会の決議を、常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること、
書面を交付することその他の厚生労働省令で定める方法によって、労働者に周知させなければならない。」

結論を繰り返します。職場復帰支援策は、就業規則、乃至は就業規則の別規程として、定めてください。
なお、職場復帰支援策は、「完璧に規定したと確信しても、いざ実際に運用してみると、意外と不都合が生じてしまいがちです。
そうすると規定を修正しなければなりませんので、就業規則の別規程に位置づけ、修正が容易にできるようにしておくのが、賢明な処置と考えます。
さらに付け加えると、支援策の対象者が従業員のほんの一部に限定されることも、別規程にする理由があります。

今回の質問は、虚を突かれました。あまりにも自明の質問だったからです。
このような当たり前と思い込んでいるような事案に対して、疑問をぶつけられるのが最も難しいのです。
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明25日は休載です

2015年02月25日 | 情報
明25日は、出張のため休載します。
26日より再開です。よろしくお願いします。
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休職中の従業員が音信不通

2015年02月24日 | 情報
質問がありました。病気療養で休職中の従業員と、突然連絡が取れなくなりました。
どうしたらよいでしょうか。
また、休職期間の満了時期が迫っています。そのまま退職処理しても良いでしょうか。

これは、コンサルタント業務に該当しますが、問題が深刻ですので、
関与先の了解をいただいて、公開します。
結論、「そのまま退職処理して」は、いけません。

まず、実務処理の原則として、事案発生以後、5W1Hで記録を作成してください。
対応に迷った時の判断材料になりますし、再発防止の材料にもなります。
さらに、最終的に争いになっても、これが会社側の有力な抗弁材料になるからです。

さて、原則として休職中の従業員とは、定期的に連絡をとることが、大切です。
連絡方法、連絡頻度などは、事前に散り決めておいてください。
なぜなら、設問のようなことが、往々にして起こるからです。特に、単身者の場合は要注意です。
連絡は、月に1回が理想的でしょう。なぜなら、会社としては社会保険料の徴収が必要ですから、
このチャンスを利用して、休職者と接触する機会を確保しておくことが大切です。

従って、通常であれば、連絡が取れなくなったことが発覚するのは、多くて1か月ということになります。
これが、3ヶ月、半年といった長期間になると、ことが面倒になります。

本題です。「突然連絡が取れなくなりました。」と、簡単に処理してはいけません。徹底的に捜索してください。
まず、居宅に出向いてください。大概、在宅していることでしょう。会社との連絡が億劫になることがままあるからです。
もし、在宅していないようでしたら、家族、保護者、保証人等に連絡をとり、所在の確認をしてください。
当然に、全てにおいて記録を保存します。
それでも、行方が分からないのであれは、最悪を想定しなければなりません。
家族等の了承を取り付けて、家族と共に警察に捜索願を提出してください。
所在が確認することができれば、とにかく、やれやれです。大事にならず幸いでした。
さらに、主治医に事実関係を連絡し、今後の対処方法を確認します。
そして、休職者には、定期的に連絡を取り合うことを、改めて約束させます。
「改めて」とは、休職に入る際に、会社側は、休職者に対して、休職中の心得や待遇を記した、
休職マニュアルを交付することが必要という意味です。
このように、出来る限りの手を尽くして対応することが、問題を起こさないことに繋がります。
それは、争いになっても、会社側の安全配慮義務が履行されていることの証明になるからです。

さて、休職期間の満了時期が近づいたら、少なくとも3ヶ月前に休職者に対して、
休職期間の満了時期が近づいている」ことを、文書をもって案内します。
突然の退職処理は、問題になります。休職者に考慮する時間を提供することが必要です。
休職者が復職したいとの意思を示さなければ、そのまま、就業規則の規程に則って退職処理をしてください。
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傘下に小規模事業所がたくさんあります

2015年02月23日 | 情報
質問を頂きました。
1事業所の人数が10人未満の店舗が東日本地域に約100店舗あるチェーン店で、保健師・衛生管理者をしています。
担当者は、私一人です。どのようにして、全体の安全衛生活動を推進していけばよいでしょうか。
そのポイントを教えてください。

ファーストフード、ファミリーレストラン、ドラッグストア、調剤薬局等々、
1事業所当たりの従業員数が、50人未満の小規模事業所を傘下に持つ企業が多くなっています。
労働安全衛生法は、企業単位ではなく、事業所単位での法適用となっています。
50人未満の事業所では、衛生委員会、衛生管理者、産業医等の選任義務がありませんので、
企業の労働安全衛生活動については、対策がとても遅れている、または、放置されていると言ってもよいような状況に置かれています。
これはきわめて大きな問題と言ってもよいでしょう。
現在の労働安全衛生法のウイークポイントでしょう。
ただし、大きな問題だと言って、行政は何をしているのだと批判しても致し方がありません。

まず、企業の組織体制を構築することが先決です。
本社ですべての営業拠点を掌握できるのであれば、
従業員の労働安全衛生を司る部門を、本社の一部門として設置しましょう。
また、本社では手に余るようでしたら、本社と現場との中間に、複数の営業拠点を管轄する部門を設置します。

次に、本社でさえ、50人未満の事業所であっても、従業員が全事業所合計で100人を超えるような規模であれば、
本社に、衛生管理者を配置し、衛生委員会を発足させましょう。そして、できれば嘱託の産業医を契約しましょう。
労働安全衛生法には、50人超の事業所は、衛生管理者を配置し、衛生委員会を発足させ、産業医を委嘱しなければならないとされています。
しかし、一方で、安衛法には、50人未満の事業所に、「衛生管理者を配置してはいけない、衛生委員会を設置してはならない、
産業医を委嘱してはならない」と規程していません。
例え、一事業所が50人未満であっても。企業グループ総計で、100人、200人を超えるような規模の企業であれば、
しっかりとした労働安全衛生体制を構築することが大切です。
これが、経営責任でしょう。
なお、50人未満の事業所ですから、本社以外においては、試験のいらない衛生推進者であってもOKでしょう。

参考判例
大庄(日本海庄や)事件
京都地裁判決(H22.5.25、労働判例1011号35頁)、大阪高裁判決(H23.5.25、労働判例1033号24頁)、最高裁判決(H25.9.24)
これは、現場で起きた事案については、現場責任者は当然として、経営トップも共同して責任を問われるという裁判です。
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