「古都逍遥 京都・奈良編」「花の詩」「日常のこと」や花や風景写真

 京都・奈良を中心に古刹・名刹や「花の詩」等の紹介。花や風景写真、オリジナルの詩、カラオケ歌唱など掲載しています。

「宗蓮寺」(そうれんじ)

2008年08月13日 10時18分23秒 | 古都逍遥「京都篇」
  「清滝川の岸に急な山が迫ってくる。やがて美しい杉林がながめられる。」

 こう描かれた川端康成の名作「古都」に登場する周山街道の北山杉の里・中川地区、人里離れた山間部のため、訪れる人も少ないこの地に佇む宗蓮寺。

 JR京都駅前から周山行きのRバスに乗り、約一時間で北山中川に着く。この辺りは清滝川沿いに北山杉が生い茂っており静けさに覆われた美しい景観のところ。里山の道筋を森林浴を楽しみながら10分ほど歩くと杉林に囲まれて宗蓮寺が人目を偲ぶかのようにひっそりと建っている宗蓮寺は、室町時代に創建された浄土宗の古刹で別称「貴船菊の寺」とも呼ばれている。

 10月ともなると境内には貴船菊が華やかに咲き競い、落ち着いた山内にその清楚な色香がよく似合う。また、ツワブキの花も閑けさに良く似合う。貴船菊は一般的には秋明菊と呼ばれているが、古都の奥座敷として名高い「貴船」地方に自生(群生)していたことから貴船菊と愛称されており、嵯峨菊とともに茶花として使われる。ただ残念なことに、自生地の貴船地域には根こそぎ持ち帰る観光客、ハイカーたちのせいで、めっきりその数が減り絶滅に追い込まれようとしている。そのような中、当寺で丁重に育てられていることは嬉しい限りだ。花好きの住職が山から一株一株集めて丹精込めて育てた秋明菊は愛好家の間では京都一との評判を受けている。
 特に薄紅色の原種は幻の花と言われ京都でも殆ど見られなくなっている。また、京都市内の西山にある桂昌院縁の「吉峯寺」内でも近年貴船菊が育てられており、桂昌院お手植えの枝垂桜とともに参拝客に愛されている。

 貴船菊のほかにも笹百合も育てられており、70㌢ほどのユリ科の多年草で、葉の形が笹に似ている。山の荒廃などの影響で年々減少してきた笹百合は当地でも貴重な花となり、境内で大切に育てられている。紅葉まえの小さな秋、そして山内一面紅に覆いつくされる紅葉の秋、周山街道をドライブの際には山口百恵が演じた「古都」の舞台となった北山杉資料館(北区小野下ノ町/075-406-2241)とともにぜひ立ち寄りたいスポットである。

 拝観は随時可能だが、開花時期のみ10時~16時(10月中旬頃まで)。拝観料は無料。

 所在地:京都市北区中川北山町214。
 交通:JR京都駅よりJRバス周山行、山城中川下車徒歩10分。バス乗車時間約55分(便数少なく時刻表に注意)。車だと高尾口から周山街道を美山方面へ15分ほど。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 大徳寺「総見院」(そうけん... | トップ | 「妙蓮寺」(みょうれんじ) »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

古都逍遥「京都篇」」カテゴリの最新記事