ぶきっちょハンドメイド 改 セキララ造影CT

ほぼ毎週、主に大人の童話を書いています。それは私にとってストリップよりストリップ。そして造影剤の排出にも似ています。

楽園-Eの物語-浴場

2022-04-22 21:37:06 | 大人の童話
 砂漠を抜けた町で宿を取ると、四人は二手に別れた。
 オグとムンは近所のエクリュ村出身の者に、『神の子』の選定結果を知らせに。
 ルージュサンとセランはオバニの元に、ベイを頼みに。
 名残り惜しそうなベイを見たオバニが「お前と歩いたラクダは皆懐いちまう。いっそのこと、ラクダ飼いになったらどうだ?」と
笑った。

《夫婦で明日の朝見送りに来る》
 ルージュサン達が宿に帰るなり、浮かない顔でオグが言った。
《そうですか。色々お疲れでしょう。まずは浴場でさっぱりしませんか?》
 ルージュサンが提案した。
《賛成!行こう!》
 セランが扉を開けて、さっさと歩き出す。
《そうしよう》
 ムンも扉に向かう。
 後を追おうとしたオグが、靴の紐が弛んでいることに気付いた。
 前屈みになって紐を直すオグを、ルージュサンが待つ。
 ムンはすぐに、セランに追い付いた。
《浴場が分かるか?》
《いえ、この町は初めてです》
 ケロリと答えてセランは歩みを止めない。
 ムンが目をしばたたいた。
《なぜこっちだ?》
《美味しい気配がするからです》
《大丈夫か?》
《はい》
 平然と進むセランに、首を傾げながらムンが並んで歩く。
 オグとルージュサンもすぐに追い付いた。
《ルージュ、お風呂どっち?》
 母親に甘える三歳児のように、セランが聞く。
《この道は少し遠回りになりますが、夕食を取る店を選びながら、進むのに良いと思います》
 そう言ってルージュサンはムンとオグを見た。
《何を召し上がりそうたいですか?》
《ね?》
 セランがムンに言った。
《なるほど》
 ムンが納得した。

 砂と乾きに晒された体に、浴場の湯はどこまでも深く染み込むようだった。
 着ていた服はそのまま浴場で売り、新しく服を買う。
 数日滞在するなら洗濯も頼めるが、急ぐ時には便利な仕組みだ。
 この旅でも入浴の度、使っている。
 セランはその都度、服を洗うのが女性かどうかを確かめた。
「男に洗わせるくらいなら燃やします。それが勿体ないというなら、僕が食べます。ルージュの服ならきっと大丈夫。愛の力で滋養にしてみせますとも!」
 そう叫んで驚かれたり、気の毒そうな目で見られたりすることもしばしばだった。