ぶきっちょハンドメイド 改 セキララ造影CT

ほぼ毎週、主に大人の童話を書いています。それは私にとってストリップよりストリップ。そして造影剤の排出にも似ています。

楽園-Eの物語-衝突

2022-05-20 21:23:13 | 大人の童話
 木の靴底が土を蹴る音に、一行は振り向いた。
 目に飛び込んだのは、若い女がドレスを閃かせ、全力で走る姿だ。
 ルージュサンとセラン、ムンは道を開けたが、避け損ねたオグが女にぶつかり、派手に尻餅を着いた。
「すみませんっ」
 そう言って立ち上がろうとした女が、自分の裾を踏み、又膝を着く。
「捕まえてくれっ!」
 野太い男の声がした。
 反射的にオグが女の右手首を掴む。
 今度はごま塩頭の男だった。
 必死の形相で走ってくる。
「すまん。助かった」
 息を切らせながら言うと、女に左手を伸ばす。
 オグは急いで立ち上がり、女を背に庇った。
「それは家の娘だ。渡してくれ」
「止めてよっ。もう決めたの」
 睨み合う二人を、オグが見比べる。
「渡しても逃がしても、後味が悪い。話を聞かせて下さい」
「悪いがあんたには関係ない」
「いいから放して下さいっ」
 二人が同時に言う。
 オグがまず、女を見た。
「こんな風に逃げても、親を心から振り切るなんて出来ない。きっと後悔する」
 女はすがり付く様な目で、首を小さく横に振る。
「そうだ。とにかく家に戻ろう」
 再び伸ばされた男の手を、オグが阻む。
「帰せるわけないだろう!」
 オグの視線が、男の右手に注がれた。
 その手にはナイフが握られていた。





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