町を出ると、ムンとオグが先に、すぐ後にセランとルージュサンが続く形になった。
黙って歩くムンとオグの、どちらへともなくセランが問いかけた。
《どうして使者になったんですか?》
暫くの沈黙のあと、オグが口を開いた。
《十二年前、俺に息子が生まれた。俺は神の気が濃い一族の三男で、他にそれらしい子がいなかったから<神の子>だと皆思った。だが子供はどこをとっても凡庸だった。皆は、俺が親の勧めた相手じゃなく、町の学校の同窓生と結婚したせいだと俺とムンを責めた。ムンは俺の叔父さんで、町の学校に行きたいと言った時も、結婚の時も味方してくれたから、俺の我が儘の巻き添えになったんだ》
ムンの背中が硬くなる。
セランは質問を続けた。
《村ではあまり学校に行かないんですか?》
《俺が初めてだ。町に嫁いだ女が子連れで里帰りしたとき、話を聞いて、我が儘を言った。叔父さんが父を説き伏せて、叔母さんと一緒に真知に出してくれたんだ》
《学校を出て、役立ったことはないんですか?》
《作物の数を増やせた。水車の効率を上げられた。外の者と話すのにも役に立つ》
《やっぱり》
セランがにっこりと笑った。
《大いに役立ってるじゃないですか。ただの我が儘で終わってたりしてない。それにオグさんの子供の頃には、山道の整備が始まっていたはずです。交易のことを考えても、合理的な判断だった。なのに不確かな推測で、責められたんですね。それならオグさんが巻き添えにしたっていうのは勘違いです》
《勘違いだって?》
オグの口調が強くなる。
《それとも<皆のお陰で二人で旅が出来た>ですか?》
セランがけろりと言う。
《両方当たりにしておこう》
そう言ってムンが、小さく笑った。
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