執行草舟は、魂の律動がある文章を書く。肚にグサリと刺さる箴言を吐く。
脳に効くのではなく、脳幹に響くような文章を書く。
何と言っても、彼が提示するタテ(歴史、信念、愚直)とヨコ(世俗、名声、利口)の区別がいい。あまり政治的なことは書いていないが、「タテ」が保守で、「ヨコ」が革新・リベラルのはず。
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「欲」はヨコの誘惑。そう考えると、生涯不犯(=童貞)で終わった吉田松陰なんか、「死んでもヨコの誘惑に屈してたまるか」っていう「タテ気違い」の意地っ張りだったと言える。
執行草舟の「草」って号も、吉田松陰の「草」莽崛起から取っているし。34歳くらいで27歳の妻を亡くしてから、独身を貫いている執行草舟さんにも、吉田松陰の不犯の誓いと同じ、タテの神聖さ・厳粛さを感じる。
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The greatest genius is the most indebted person (偉大な天才は、最も古人のお陰を被った者) というエマソンの言も、思いっきり「タテ」の世界。親を愛するように、歴史を愛せ。文字通り万巻の書を読み先人から学びまくっている執行草舟ほど「タテ」の人はいない。
「立派な人はみな古風だった」という執行草舟さんの分析にも納得感がある。新しいものの中に古いものを見出したり、古いものの中から新しいものを生み出すものが、立派たりうる。
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人たるもの、大思想、信仰、信念、道に陶酔し没入せよ。未完で死ね。前のめりで死ね。現世の幸福なんか求めるな。そう執行草舟さんはけしかける。
過去を肯定し、歴史を愛し、親へ孝行せよ。そうやって運命へ同化する。それが、マルクス・アウレリウスやニーチェが説いた運命への愛(amor fati)だろう。
この「運命への愛(amor fati)」ってのは、ググるとニーチェで有名ですね。知らなかった。すべてが必然で、すべてが最善、という森信三の考えと同じ。宿命を受け止め、宿命を活かし、宿命に立つって考えと同じ。
だから「運命への愛」ってのは、「宿命への愛」でもいい。
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そんな執行草舟は、「地に足のついた」三島由紀夫のように思われる。「ますらおぶり」を発揮しているし、実業家として、現実の経済の中で、雇用を作ったりして結果を出しているから。
また、執行草舟は、「地に足のついた」太宰治ともいえそう。歌人としての執行草舟さんには「たをやめぶり」が垣間見える。歌人としての執行草舟はまだ未分析。彼の『友よ』を読んでからまたコメントします。