狐の日記帳

倉敷美観地区内の陶芸店の店員が店内の生け花の写真をUpしたりしなかったりするブログ

『隠し剣孤影抄』/藤沢周平

2020年07月10日 16時58分19秒 | 小説・本に関する日記
 昨日の夜は、藤沢周平の『隠し剣孤影抄』を読み返していました。

 「邪剣竜尾返し」と「臆病剣松風」と「暗殺剣虎ノ眼」と「必死剣鳥刺し」と「隠し剣鬼ノ爪」と「女人剣さざ波」と「悲運剣芦刈り」と「宿命剣鬼走り」の8編の短編時代小説が収録されている短編集です。

 秘伝の技を身に着けた武芸者が周囲の状況に巻き込まれて隠し剣を使うまでを描いたお話で統一されています。
 格好良い剣豪が華麗に或いは豪快に悪をばったばったと切りまくる。そんなお話ではありません。
 登場人物達は人間臭くて懸命に生きて誰かに操られたり騙されたりします。虐げられていたり情けなかったり。
 武士であっても剣技の冴えは意味のない時代になっていて、全く違う力に主人公達は翻弄されます。
 秘伝の技を習得していたからこそ翻弄されているのかもしれません。

 私は、「必死剣鳥刺し」と「女人剣さざ波」が好きです。

 面白かったですよ。
 楽しめました。


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『夜行』/森見 登美彦

2020年07月07日 22時15分16秒 | 小説・本に関する日記
 昨日の夜は、森見登美彦の小説『夜行』を読み返していました。

 十年前。京都で学生時代を過ごしていた主人公は英会話教室の仲間六人で鞍馬の火祭を観に行った。
 鞍馬の火祭の最中、仲間の一人である長谷川さんは突然姿を消した。彼女はそのまま行方不明となった……。
 十年後。久しぶりに残りの五人は再び鞍馬の火祭を観に行くことにした。 
 ひとまず宿に入り、食事を取りながら近況を語り合う。
 主人公が偶然入った画廊で岸田道生という画家の「夜行」と題された一連の銅版画を見たという話から、それぞれが旅先で出会った不思議な経験を語りだし……。



 森見登美彦の『きつねのはなし』や『宵山万華鏡』の路線の怪異譚です。

 静かで端正で落ち着いた文章。
 不気味で寂しくて物悲しくて怖い。
 何が起こっているのか分からなくて不安になる。
 世界は私達の知らないことで満ちていてそして突然知らない世界に連れていかれてしまうこともある。
 そんなお話です。



 謎は謎のままごろんと投げ出されていて謎解きがない。
 それが不気味さを呼び……。
 そして最後に森見登美彦お得意のアクロバティックな展開がなされ、それでも謎は謎のまま不思議な余韻で終わるのです。

 ぐいぐいと加速して疾走するのではなく、静かに静かに不気味さを増しながら私達に迫るのです。


 妖しく怪しく寂しく怖く美しい夜のお話。
 面白いですよ。
 堪能いたしました。



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『海に降る』/朱野帰子

2020年07月06日 22時37分38秒 | 小説・本に関する日記
 昨日の夜は、朱野帰子の小説『海に降る』を読み返していました。

 JAMSTEC・海洋研究開発機構に勤務している天谷深雪は、有人潜水調査船「しんかい6500」のパイロットを目指している。
 しかし閉所恐怖症を発症して「しんかい6500」の乗れなくなってしまう。
 同じ時期、海洋研究開発機構の広報部に中途採用で新人が入ってきた。
 新人の高峰浩二は、深海生物学者の父親が18年前に見た未確認深海生物を見つける為に「しんかい6500」に乗ることを目的として海洋研究開発機構の中途採用に応募した、と言う……。
 しかし、広報部の人間が「しんかい6500」に乗って深海に潜ることができる可能性はほとんどない……。

 宇宙飛行士よりも遥かに数が少ない深海のパイロットを主人公にした深海探査にまつわるお話です。
 TVドラマになっているようですね。TVドラマはまだ観ていません。



 世界には未知なるものが溢れている、と思わせるわくわくするようなお話です。
 そして、私達が使っている様々なものは多くの人が綿々と受け継いだ技術の賜物で、その技術やノウハウや知識や見識は易々と失われてしまう可能性がある、と教えてくれるお話です。
 夢を目指すこととその先にあるものについてのお話でもあります。

 停滞すれば様々なものが失われていきます。
 過去から延々と受け継いできた様々なものも停滞すれば簡単に途絶えてしまう可能性が高くなります。

 わくわくするお話でありました。
 そして私達には大きな大きな可能性がまだまだたくさんあることを教えてくれるかのようなお話でありましたよ。

 面白いですよ。
 お勧めです。



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『文豪たちの怪しい宴』/鯨統一郎

2020年07月04日 12時23分15秒 | 小説・本に関する日記
 昨日の夜は、鯨統一郎の小説『文豪たちの怪しい宴』を読んでいました。

 日本文学研究の重鎮である曽根原尚貴は、討論会からの帰り道にとあるバーに立ち寄った。
 そこで女性バーテンダーに夏目漱石の『こころ』に関する疑問点を尋ねられた。
 そして、途中からやってきた宮田という客が話に加わる。
 彼は、『こころ』を百合小説と断言し……。

 夏目漱石の『こころ』や、太宰治の『走れメロス』、宮澤賢治の『銀河鉄道の夜』、芥川龍之介の『藪の中』などの過去の名作の再解釈をお話し仕立てで行っている小説であります。



 ま、小説は如何様にも解釈すればよいのです。
 勿論、その解釈に整合性があるならば説得力が出ます。

 『藪の中』は、犯人を捜すとしたならば、確かにあの人物しかいないよね。
 『走れメロス』は、そのように解釈したならば……、イメージがガラッと変わってしまう……。ハッピーエンドではなく物悲しいお話になります。う~む。
 『こころ』を、ミステリと解釈するのか……。思いつかなかった……。
 『銀河鉄道の夜』は、宮沢賢治の父親に対する想いを考慮に入れて解釈し直すと……、というお話。ふむふむ。


 面白かったですよ。
 楽しめました。


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『桜庭一樹短編集』/桜庭一樹

2020年06月30日 19時02分18秒 | 小説・本に関する日記
 昨日の夜は、桜庭一樹の小説『桜庭一樹短編集』を読み返していました。
 短編小説集です。
 「このたびはとんだことで」、「青年のための推理クラブ」、「モコ&猫」、「五月雨」、「冬の牡丹」、「赤い犬花」の6編が収録されています。



 変な人を描くのが上手いです。
 微妙に変であったり大きく変であったり。でも居そう。

 「このたびはとんだことで」はドタバタ。だけどちょっと怖い。
 「青年のための推理クラブ」は『青年のための読書クラブ』のパイロット版。このタイプの『青年のための読書クラブ』も読んでみたい気がする。
 「モコ&猫」は変わった片思いのお話。よく書けるなぁ、こんなお話。
 「五月雨」は『GOSICK -ゴシック-』シリーズのラストあたりと『伏 贋作・里見八犬伝』を掛け合わせて現代に舞台を移したようなお話で滅びゆく者のお話。不思議な雰囲気。
 「冬の牡丹」は優等生が優等生のままでいたら劣等生になっていた女のお話。ど~したらいいのかな? 私達は。私達はヘタレではあるけどでも頑張っているんだけどな。しんみり。
 「赤い犬花」は小学生の男の子が主人公。都会に住む男の子が田舎で経験した夏休みの冒険のお話。死人を書くのが上手い。切ないです。

 バラエティに富んでいました。
 面白いですよ。
 お勧めであります。



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『鍵のない夢を見る』/辻村深月

2020年06月27日 16時56分20秒 | 小説・本に関する日記
 昨日の夜は、辻村深月の小説『鍵のない夢を見る』を読み返していました。
 「仁志野町の泥棒」と「石蕗南地区の放火」と「美弥谷団地の逃亡者」と「芹葉大学の夢と殺人」と「君本家の誘拐」の5編が収められている短編小説集です。

 事件に巻き込まれる或いは事件を起こしてしまう女性の心理を細やかに描いた短編小説集。
 お話はとても練られていてひねりが効いています。
 とても読みごたえがあった短編小説集でありましたよ。

 面白かったですよ。
 お勧めです。


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『巴里マカロンの謎』/米澤穂信

2020年06月25日 23時01分29秒 | 小説・本に関する日記
 昨日の夜は、米澤穂信の小説『巴里マカロンの謎』を読んでいました。

 小鳩常悟朗は中学までは望んで知識をひけらかして様々な事件の探偵役をしていたがそんな自分が嫌になって小市民を目指している。
 小佐内ゆきは中学までは復讐の為ならどんな手段も取る過激な性格と行動力だったがそんな自分が嫌になって小市民を目指している。
 周囲は二人は付き合っていると思っているが、小鳩君と小山内さんは小市民を目指す為にお互いを利用する関係。
 でも二人の前に様々な謎と問題が現れて謎解きをしなくてはいけなくなってしまう。
 二人は小市民の星を掴み取ることが出来るのか? 

 高校生達の日常の謎を扱ったコミカルなミステリで、4編の短編集です。
 肩ひじ張らずに気軽に読めるミステリですね。
 軽やかでちょっぴり毒あり。
 面白かったです。

 ギガ・スケールの人間を目指すのは大変だけど、小市民になるのも大変かも。


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『氷平線』/桜木紫乃

2020年06月22日 18時25分27秒 | 小説・本に関する日記
 昨日の夜は、桜木紫乃の短編小説集『氷平線』を読み返していました。
 「雪虫」、「霧繭」、「夏の稜線」、「海に帰る」、「水の棺」、「氷平線」の六編が収められている短編小説集です。


 このタイプの小説は作者の見得や虚飾や嘘や無知を拾ってしまうことがあるのだけれども、作者がきちんとそれらを排すると骨太なお話となります。
 淡々としていて静謐でだからこそ迫ってくる愛の物語。
 しなやかで強くて優しくて赤裸々で真っ直ぐで残酷なお話です。


 面白かったですよ。
 楽しめました。


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『勝手にふるえてろ』/綿矢りさ

2020年06月19日 16時23分24秒 | 小説・本に関する日記
 昨日の夜は、綿矢りさの小説『勝手にふるえてろ』を読み返していました。

 主人公の江藤良香は都内で会社の経理課で働いている。
 中学生の頃の同級生に未だに片思いを続けていて恋愛経験は無し。
 つらい時は、中学生の時から会っていない同級生の顔を思い浮かべている。
 人間関係が苦手で会社の中で友人は少ない。

 そんな良香に熱烈にアタックをかけてくる男性が現れた。
 でも良香はその男性に全くときめかない……。

 妄想の中で理想の彼氏と化している中学生の頃の同級生。
 自分を熱烈に好いてくれているけれどもときめかない男性。

 妄想と現実に良香は悩み暴走して……。




 良香というキャラクターは意外に行動力があるので、ハラハラするのです。
 そして、肩を掴んで「あかん。あかんよ。それは」と言いたくなるような危なっかしいキャラクターなのです。
 恋愛小説というよりかは、「このキャラクターの生き様を御覧じろ」って感じの小説ですね。
 所々に毒が混じっていて心地良いです。

 面白かったですよ。
 楽しめました。


   
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『ガールズ空手 セブンティーン』/蓮見恭子

2020年06月17日 21時54分48秒 | 小説・本に関する日記
 昨日の夜は、蓮見恭子の小説 『ガールズ空手 セブンティーン』を読んでいました。

 此友学園の空手道部は高校の空手部では名門。
 主将の結城はインターハイで優勝している。

 ある日、空手道部の選抜出場を応援する校内のポスターが何者かによって破られた。
 結城は気にしなかったが、犯行を目撃した生徒は犯人は結城だと言う。
 犯行の時間にその場にいなかった結城は身に覚えがない。
 濡れ衣を着せられた彼女はあることに気が付く……。

 空手部に所属する高校生達を描いた連作短編青春ミステリです。





 仕掛けがあるのです。
 最初の章の仕掛けはミステリファンは反則とみなすかもしれません。でも物語全体に仕掛けがあるので最初の章で読むのを止めるのはもったいないです。
 仕掛けを成立させる為にあざといと思えるようなことをしている部分もあるのですが、上手くミスリードを誘っています。
 そして仕掛けだけが目玉のお話ではないのです。

 上手い負け方が出来れば後に引きずらずに他の道が模索できたりさらに闘志を燃やしたりすることができるのだけれども、悔いを残す負け方をすればそこで引っかかって停滞してしまう……ことが多いです。
 永遠に勝ち続けることなどできないのだから負け方こそが重要なのだけれども、負けたくて勝負するわけではないので上手い負け方をするのは難しいです。17歳というお年頃ならば、なおのこと難しいです。

 他人を陥れて沈めてその人の場所を奪い取るという勝ち方は最悪の勝ち方でレベルを下げてしまう近視眼的な勝ち方なので意味がありません。大人になってもそんな手を使っている人がいるけどね。駄目。

 面白かったですよ。
 楽しめました。
 
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『夢みる葦笛』/上田 早夕里

2020年06月14日 23時13分22秒 | 小説・本に関する日記
 昨日の夜は、上田 早夕里の短編小説集『夢みる葦笛』を読み返していました。
 10作品が収録されているSF短編小説集です。

 滅びゆくもの。消え去るもの。失われていくもの。分かれゆくもの。
 それらが共通したテーマですね。
 哀惜の念であったり、絶望感であったり、消え去ることにあくまでも抵抗する意思であったり、浪漫であったり、それぞれの作品で反応が違うのですが、消え去るものに対しての感情を描き出しています。
 暗く禍々しく妖しく儚く淡い世界観。


 面白かったですよ。
 楽しめました。



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『謎好き乙女と奪われた青春』/瀬川 コウ

2020年06月11日 23時34分58秒 | 小説・本に関する日記
 昨日の夜は、瀬川コウの小説『謎好き乙女と奪われた青春』を読み返していました。

 高校二年生の主人公である矢戸春一は、新学期早々から謎が大好きの新入生である早伊原樹里に付きまとわれることになる。
 早伊原さんは表の顔は優等生で元気溌剌で社交的。しかし……。
 矢戸君も性格に一癖あってクラスの中では友人が少ない。しかし彼は……。

 日常の謎を扱うミステリで青春小説でもあります。


 迂闊に正義をかざしてもそれが単なる独り善がりでしかないことはあるものです。
 人を理解するのは難しい。
 そんなお話であります。


 面白かったですよ。
 この小説はシリーズ化されているようですね。
 続きが出ているようなので続きを読んでみることにいたします。


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『人民は弱し 官吏は強し』/星 新一

2020年06月08日 12時38分06秒 | 小説・本に関する日記
 昨日の夜は、星 新一の小説『人民は弱し 官吏は強し』を読み返していました。
 星新一はショートショートで有名でありますね。
 この小説は、星製薬を築き星薬科大学の創設者である星一を息子である星新一が描いた小説です。

 明治末。
 12年間の米国留学から帰った星一は製薬会社を興す。
 日本で初めてモルヒネの精製に成功するなど事業は飛躍的に発展した。
 彼自身は、フェアな競争で後れを取ったら相手を追い抜く新しい道を開拓しその積み重ねで産業が発展する、と信じていた。
 賄賂をばら撒いたり料亭に役人を招待して接待することが大嫌いだった。
 儲けた金は全部株主への還元や薬の販売店の啓蒙や最新の工場設備の導入に使ってしまう。
 そして産業の発展になることは関係省庁に臆することなく直言する。
 しかし、星製薬は政争に巻き込まれてしまう……。
 星製薬の事業への執拗な妨害で、会社経営は次第に窮地に追い込まれて……。



 いつの世であっても変わらないものでありますね。
 政治案件で攻撃を受けた企業は、たとえ何もしていなくても悪評がついてまわります。
 メディアは無責任に悪者と決めつけて報道します。
 確認を取らず嘘や出鱈目やデマを使って悪者と決めつけた者を攻撃します。
 無実であってもメディア攻撃を受けたら悪評はそう簡単には払拭できません。
 無責任な噂をばら撒く輩はいつの世にも存在します。
 それでも決して屈せず挑戦を続ける姿には清々しさがあります。

 無機質っぽいショートショートとは違って、熱量の溢れるお話であります。
 面白いですよ。
 お勧めです。

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『破滅の王』/上田 早夕里

2020年06月06日 22時07分25秒 | 小説・本に関する日記
 昨日の夜は、上田早夕里の小説『破滅の王』を読み返していました。

 1943年6月。
 各国の領事館や銀行や娼館やアヘン窟が立ち並んでいた魔都・上海は様々な情報が入ってくる為、諜報戦では最前線となっていた。

 宮本敏明は上海自然科学研究所で細菌学科の研究員として働く科学者。
 上海自然科学研究所では中国人の科学者も働いていて自由闊達な気風を持ってたが、今は日中戦争の影響でその自由闊達な気風が失われつつあった。

 宮本はある日、日本総領事館から呼び出しを受け、総領事代理の菱科と南京で大使館附武官補佐官を務める灰塚少佐と面会する。
 そこで宮本は重要機密文書の精査を依頼される。
 その内容は、『キング』と暗号名で呼ばれる治療法皆無の新種の細菌兵器の詳細であり、しかも論文は、途中で始まり途中で終わる不完全なものだった。
 ある人物が『キング』を持ち出している。その人物は治療方法が存在しない『キング』を散布する可能性がある。
 さらには『キング』が敵国の手に渡り、前線で散布するかもしれない……。

 宮本は菱科と灰塚から治療薬の製造を依頼される。
 しかし、治療薬の製造は自らの手でその細菌兵器を完成させるということも意味していた……。



 戦時中の上海を舞台に細菌兵器を巡る科学者の苦闘を描いたエンターテイメント作品です。

 様々な思惑があり様々な考えがあり様々な立場があり様々な理想があり様々な信念があって多くの人が行動している世界で一筋縄ではいかない状況を打開しようとする人達を描いています。
 主人公の行動以外で説明や別のキャラクターの行動の説明が多かったのですが、でもでもぐいぐいと引き込まれてしまいました。

 面白かったですよ。
 楽しめました。
 お勧めであります。


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『セリヌンティウスの舟』/石持浅海

2020年06月01日 23時38分07秒 | 小説・本に関する日記
 昨日の夜は、石持浅海のミステリ『セリヌンティウスの舟』を読み返していました。

 ダイビングツアーで大時化の海で遭難して生還した六人はその後、深い信頼関係で結ばれた仲間となった。
 しかしダイビングの後の打ち上げの夜に、仲間の内の一人の女性が仲間達が寝ている部屋で服毒自殺をする。
 彼女の葬儀の夜、彼女の死を見つめ直す為に仲間達は彼女が死んだ部屋に集まる。
 彼女の死は自殺だったのか? 


 『九マイルは遠すぎる』タイプの推論をひたすら積み重ねるミステリです。『セリヌンティウスの舟』は長編ですけどね。
 このタイプのお話は大好きです。

 でも、死んだ米村美月の心情がわかんない。
 彼女が何をしたのか何を狙っていたのかは分かるけど、でも彼女の心情がわかんない。
 でもって真相を知った時の登場人物達の心情もあまり納得できない。
 いいのか? あれで? 
 優しいお話……なんだろうけど。

 それと、地の文で語られた主人公の言葉(口には出していない)のある一文が引っかかってしまいました。
 推論を進める為とはいえあれは……。

 それと、ラストの展開からさらにもう一回引っくり返して欲しかった気がする。

 でも、そう思うのは私が未熟者だからかもしれない。
 好みの問題かもしんない。 


 面白かったですよ。
 楽しめました。



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